【木曜日24-17】人材育成本

木曜日

【木曜日24-17】人材育成本

増田昌幸さん(比企大23秋)の博論本(1冊)

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『ゼネラリストの人材育成・能力開発』増田昌幸(2024)

・管理職として、異動先の職務にも精通しておらず、さらにメンバーの個性も把握できていないところで、短期間で成果を上げるのは簡単ではない。

・メンバーシップ型雇用におけるゼネラリスト養成の課題を探求する為に執筆。

・ゼネラリストとは、特定の専門分野を持たずに雇用され、定期異動(ジョブ・ローテーション)により、複数の部門を異動しながら、幅広い職務を経験する人材である。

・ゼネラリストという言葉は、民間企業に勤める大卒の事務系ホワイトカラーにも頻繁に使われている。

・中村(1989)も、大企業の事務系ホワイトカラーの異動範囲は思われているよりもかなり狭く、技能形成上の関連が明白に見られることを見出し、小池(1991)の主張を裏付けている。

●参考:小池先生の本

・大学職員の特徴は、専門性を考慮しないランダムで頻繁な異動にある。

・大学職員と類似したゼネラリスト養成を行う地方公務員に関する研究が参考になる。

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・人材育成、能力開発研究の歴史をさかのぼっていくと、「日本の経営」研究に行きつく(Abegglen,1958,バーナード,1968他)

●参考:『日本の経営』 J.アベグレン(1958・2004) 

・Deming(1982)は、実際に組織で生じている問題の原因の多くは、個人に帰するものではなく、組織のシステムに問題があるために生じていることを指摘している。

・本書が依拠するのは、経営学の人的資源管理論である。

●参考:HRD 人的資源開発本

・猪木(2002)は、大卒ホワイトカラーの仕事内容の特性を「判断業務」であるとした。

●参考:ホワイトカラー関連本

・職場学習風土が能力向上を促進しているという研究もある(関根2012、伊勢坊2012)。
○ここで引用頂いているのは、嬉しい。

・いかなるメカニズムや要因によって「人材が育つのか」あるいは「育たないのか」ということが明らかになっていないのである。

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・大学職員の呼称は「ノン・アカデミック(教員ではない者)」とされ、大学職員の仕事は「見えない(インビジブル)」であり続けていることが課題となっていた。

○これ、きついよな~。「~でない者」というアイデンティティ。教員が主、職員が従。でも、サーバントリーダーシップを、見えにくい形で発揮しているとも言える?

・呼称にこだわるのは、呼称が大学職員のアイデンティティーや役割を定義する上で、組織における認知とリスペクトに関係する重要な要素であるためである。

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・本書で使用する定量的データが収集されたのは2010年である。
・SSJデータアーカイブの個票データの二次分析を行った。

●参考:SSJデータを使った研究

・女性ほど定型的な職務に就く確率が高い。
・管理職に上がることによって、定型的な職務に就く確率が下がる。

・男性ほど非定型的な職務に就く確率が高かった。
・職位は、初級管理職以上になると、非定型的な職務に就く確率が上がった。

・定型的な職務の割合の高さが、定期異動(ジョブ・ローテーション)を可能にしている。職務が定型的でなければ、業務のマニュアル化は困難になる。

・「能力や適性が生かされている」と感じていないのは、大学院修了者と管理職であった。
・「やりがいがある」にマイナスの効果があったのは、大学院修了者であった。

・自らが主体的にキャリアを決定できない定期異動では「やりがい」を維持するのは困難になるだろう。
○ほんとそうだろうな~。役場の異動とかを傍で見てても、そう感じる。実際、異動をきっかけに、公務員を辞める人達も見て来てるし。

・「課題分析・解決」や「新規事業企画・開発」は、個人の能力の向上と発揮が期待できる非定型的な職務であり、こうした職務に従事することが、満足度の向上につながっている。
○公務員を辞めて、ご自分で事業経営をされている方を見ても、まさにここに満足度を感じていそうに見える。

・職務特性が満足度(やりがいがある)に影響を与え、その満足度が知識習得・能力向上意欲に影響を与えていることが明らかになり、人材育成・能力開発の形成要因には、階層構造があることが分かった。

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・民間企業では、大学職員のように分野を頻繁に変えるような異動は行われていない。

・海外では、大学職員が、高度化、専門化することで、人材育成、能力開発の課題を乗り越えている。

・定型的な職務であっても「学生や教員への対応」については、満足度が高かった。

・異動が定年まで繰り返されるゼネラリスト養成を見なおす必要がある。
・40歳代以降は、本人の適性や意欲を見極めて、一定の職務範囲内に留めるなどの施策。
・幅広い経験を積んだ後には、適性や意欲によって専門領域が定まってくる。

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○増田さんご自身の経験を、学術の世界に、きちんと位置付けていらっしゃる。俺の場合は、自分の経験に対する想いが強すぎて、学術の世界のどこに、位置づくのかを見つけるまでに、苦労した。先行研究を幅広く、かつ深くやっていかないと、なかなかできないことなんだろうな~。

○大学職員個人が、今ある環境の中で、できること、すべきことには何があるのか? 大学という組織、制度は、おそらくすぐには変わらないだろう。非定型的職務を求めるなら、民間に行く? 教員(研究者)に近づくために、大学院に行く? 知り合いの大学職員の方は、趣味や地域活動に力をいれていた。

○20代~30代半ばまでは「幅広い経験(それでもある程度絞られている)」をさせ、個人の適正や意欲を見ていく。「~畑」と呼ばれる経験なのかも。

●参考:佐藤厚(2016)『組織のなかで人を育てる』 

○ミニ起業で考えると「顧客づくり(営業)」「商品づくり(開発)」「現金のこし(経理)」だし、三枝先生だと「創って(開発)作って(製造)売る(営業)」だろう。

民間企業であれば、零細企業、小規模企業であっても最低、この4つ(開発・製造・営業・経理)の畑がある。更に、従業員数が多くなれば、「総務」そして「人事」という畑ができて、更に「企画」「広報」といった畑が出てくるのかも。

○色々考えるきっかけを頂きました。増田さん、ありがとうございます!

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投稿者:関根雅泰

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