【木曜日24-19】マルクス解説本(2)

木曜日

○資本主義だからこそ、日本に住んでいるからこそ、今の時代だからこそ、事業ができている・・・かといって・・・と、色々考えさせられる本。(2冊)

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『いかに世界を変革するか』E.ホブズホーム(2017)水田洋(監訳)

・本書は、マルクスの思想の発展と死後の影響の研究である。

・マルクスは、再び、まさに21世紀のための思想家となっている。

・現代への関わりを決して失わないのは、資本主義は人間の経済生活の限られた一時期の様式だというマルクスの資本主義像と、絶えず拡大し集中し恐慌を生み、自己変容していく資本主義の運動様式についての彼の分析である。

・19世紀において理想社会とは主として共産主義的な社会を意味していた。

・共産主義の歴史は、フランス革命の左翼から始まる。

○なぜ、共産主義は、あんなに恐れられたのか? 資本家、支配階級の既得権益が失われるから? ソ連のような国になるから?

・クラウゼヴィッツによれば、戦争は「別の手段による政治の継続」である。

・マルクスの路線に従って社会主義を実現しようとしたすべての現実の試みが、これまでのところ、独立の国家装置を強化することになった。

・泥酔、悪徳、犯罪、浪費の増加は、社会現象であり、資本主義の創造物なのであって、個人の弱さやだらしなさによって説明されるべきではない。

○「自己責任」じゃないってことだよな~。

・「共産党宣言」は、単独でもっとも影響力があった政治的文書である。

・「愚昧」は「視野の狭さ」を意味し、Idiotの語源であるイディオテスの「自分の私的なことだけに関わり、より広い社会のことには関わらない人」のことである。

・資本主義は、人類史の中の一時的な段階であり、別の種類の社会によって取って代わられるべきものである。

・資本主義は家族の破壊をもたらす。

・ブルジョワジーは、プロレタリアートを、「特に自分の墓掘り人」としてはつくり出さなかった。

・J.シュンペーターは、すぐれて知的なマルクス批判家の一人であった。

・マルクスが最大のインパクトを与えたのは、歴史家としてであった。

・マルクスは、ダーウィンやフロイトと同様に、その名前と思想が、何らかの形で近代世界の一般文化の一部となった稀有な思想家の一人である。

・哲学者の間では、マルクス主義の存在感は否定できない。
・社会科学についていえば、経済学はマルクスに対して一貫して冷淡なままである。

・マルクス主義は、歴史学を社会科学に統合した。

・日本は、好戦的な反共勢力であり、ドイツ、イタリアと同盟を結んだ。
・ベンガル出身のスバス・ボースのように、日本人の庇護のもとでインド解放軍を実際に組織することもあった。

・反ファシズム知識人が、いっそう容易にマルクス主義の周囲へ引き付けられるようになった。

・A.グラムシは、最も独創的なマルクス主義思想家である。
・実践が彼の理論を活気づけ豊にしたのであり、実践が彼の理論の目的だった。

・マルクスの理念「肝腎なのは、世界を変革することである」は、大半のヨーロッパの労働運動と社会主義運動を鼓舞する学説となった。

・「躓いた神」は、共産主義に幻滅、失望した欧米各国の知識人たちによる論集の書名。

・「赤軍派」「赤い旅団」は、レーニンのやり方よりも、むしろロシア・ナロードニキのテロリズムの方向性と合致していた。

・ソ連とソヴェート・モデルの失墜は、共産主義者だけでなく、社会主義者にも大きな爪痕を残した。

・資本主義は、自身の死の警告(死を想え memento mori)を失ってしまった。

・マルクス主義が嫌われた点は、レーニンがマルクスに押し付けた厳格な集権的党組織であった。
・マルクスは、テロルと強制収容所の触発者としてのイメージが固定し、共産主義者は、テロルとKGBの本質的な擁護者としてのイメージが固定した。

○この辺りが、若い頃にマルクスと接してきてない理由の一つなのかも。

・資本主義は、社会革命の脅威ではなく、それ自身の無制約のグローバルな影響によって、自らの将来が問われていることを突き付けられており、またその世界に対して、マルクスは自由市場の合理的選択と自己調整メカニズムの信者よりも、ずっと明敏な案内人であることが証明されたのである。

○新自由主義で壊れかけている社会や地球環境を見ているからこそ、今、マルクスにヒントを得ようとしているんだろうな~。

・資本主義は、答えではなく、問いであることを、再発見したのである。

・リベラリズムは、21世紀の問題への解決策を提供しえない。

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『共産党宣言からパンデミックへ 歴史の終わりの弁証法』 森田成也(2021)

・新型コロナウイルスのパンデミックは、あらゆる点で、現代資本主義の脆弱性を示した。
・地球温暖化とそれに伴う大災害もまた、資本主義成立後の200年間につくり出され累積されてきた矛盾の発現でもある。

・資本主義は果たして人類と共存可能なのかという疑問が多くの人々の脳裏に浮かび始めている。
・若手の研究者である斎藤幸平氏が執筆した「人新世の資本論」が大ベストセラーになったのも、そうした危機感が背景にあると言ってもいいだろう。

・「共産党宣言」が、資本主義と人類との共存可能性を否定した主な理由は、
 1)資本主義が周期的にもたらす恐慌 と
 2)資本主義が構造的にもたらす富と貧困の格差だった。

・「共産党宣言」は、聖書に次いで最もたくさん翻訳され版を重ねた文献となった。

・「共産党宣言」をはじめとする古典の魅力というのは、それを読むたびごとに新しい発見があること。

・マルクスとエンゲルスの思想を貫いている根本思想の一つは「社会主義か野蛮か」というものである。

・「過剰生産という疫病が。社会は突如として、一時的に野蛮状態へと逆戻りする」

・資本主義というのは、その中から必然的に「野蛮」をつくりだすシステムである。

・新自由主義の40年間は、社会の公的福祉とセーフティーネットをずたずたにし、ひたすら縮小させていった。

・近代的な大都市、膨大な数の人々が特定の場所に集中して住むようになったという環境が、近代的疫病が蔓延する一つの条件になっている。

○コロナ禍(2020~2022)の時は、過密ではない「過疎」である田舎が注目されたこともあったけど、今はまた逆戻りしている感じかな。喉元過ぎれば熱さを忘れる、なんだろうな~。

・二重の搾取。資本家は生産過程で搾取するだけでなく、労働者の生活過程においても、劣悪な住居をあてがい、そこでの家賃収奪を通じても、労働者を搾取する。

・ローザ・ルクセンブルクが「資本蓄積論」で確立した重要な理論的ポイントは、資本主義が2つの異なった蓄積に基づいているという議論を展開したこと。
・この議論は、のちにD.ハーヴェイによって「拡大再生産にもとづく蓄積」と「略奪にもとづく蓄積」という「二つの蓄積様式論」として整理され、精緻化された。

●参考:D.ハーヴェイ教授の本

・搾取と略奪のシステムに代わる「もう一つの世界」とは具体的にどのようなものなのかについて語るのを、我々マルクス主義者があまりに禁欲しすぎたために、若い人々は資本主義に代わる別の社会「もう一つの世界」をいっこうに想像できなくなっている。

○「もう一つの世界」 どういうものがあるだろう。考え続けたいし、そこに向けて少しでも近づきたい。

・「共産党宣言」は、とくに国家集権的なものではない。

・民主主義の劣化を、端的に示しているのが、政治の「家産制化」。現代政治の基本特徴は、「ポピュリズム」ではなく、政治の「家産制化」である。
・家産制化 partimonialism は、マックス・ウェーバーの支配の三類型(合法的、伝統的、カリスマ的)の中の「伝統的」に含まれるシステムの一つで、国家の法や財産などが、君主・支配者の私的なルールや財産であるかのように取り扱われる人格的な支配のシステムの事。

○これ、まさに、日本の政治状況だよな~。だから、有権者がしらける。

・まさに、安倍首相は、家産制国家の君主である。
・世襲議員は、家産政治の典型。

・現代家産政治は、何よりも新自由主義の産物。
・新自由主義の40年間は、官僚の政治的中立性を徹底的に破壊した。

○「忖度」が生まれちゃったしな~。

・1993年に、非自民党政権が実現し、日本新党の細川が首相になったが、その政権がやったのは、新自由主義をもっと速やかに実行するための小選挙区制導入による政治改革だった。

・資本主義というのは、その内的な自己システム化傾向を促しつつ、そのシステム破壊的傾向を一定抑制することではじめて、長期に存続可能な社会システムになることができる。

○ここが、意見が分かれるところなんだろうな~。
 1)既存の資本主義を活かしつつ という考えと
 2)資本主義そのものをなくす という考え方。

 考えやすいのは、1)だけど・・・。師匠なら、第三の道を模索するのかも。

・トロツキーが、20世紀初頭に直面し解決しようとした問題は古臭くなったどころか、むしろ人類全体の課題になっている。

・封建社会とは、一種の完全レント(地代)社会。
・あらゆるものに、どんどん私的所有権が設定されていき、あらゆるものがレントの源泉になっていく。

○レントを取れれば儲かる。だから、ストックビジネス等で、それを目指す。ただ、そうすると、短期的に事業者側には良いけど、長期的には社会の格差を助長する。レントを取る層と、レントを取られる層と。

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投稿者:関根雅泰

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