「仕事の経済学」小池和男著

お薦めの本

「仕事の経済学」小池和男著 第3版 2006年

●本の特色
・「技能を重視」「基本資料の検証」「他国との比較」

●知的熟練の形成
・技能の核心は「知的熟練」であり、知的熟練とは
 「問題と変化をこなす腕」である。
・知的熟練を形成する方式は「OJT」である。
 OJTとは、実務経験を重ね技能を修得することをいう。
・知的熟練の形成には、関連の深い仕事群のなかで
 幅広いキャリアを要する。つまり、長期の仕事経験が必要。
・「専門のなかで幅広いキャリア」これこそが知的熟練形成の根幹。
・職場でのOJTこそ技能形成の主役。
・仕事を学ぶ学校、教習所はない。職場にはいって習うほかない。
・外部人材は、不確実な問題処理には不利。
・高い技能こそ雇用の質を決める。
 高い技能の形成には、長期の実務経験が必要。
・真の人材形成は、職場での深い実務経験。
●OJT
・OJTを仕事と区別するために「フォーマルな(形ある)OJT」を設定する。
 フォーマルなOJTには「指導員の指名」「訓練成果のチェック項目」がある。
・OJTは「長期のキャリア(長期に経験していく仕事群)」である。
・「幅広いOJT」= 職場内のおもな持ち場を経験するよう移動する
   序列方式、ローテーション方式
・「深いOJT」= 職場で起こる問題や変化もこなす
   問題に関する報告書の作成、職場会議での討議、他職種の支援
・幅広いOJTは、大企業でおおいに普及している
・OJTのコストは、ふなれによる能率低下。
 やさしい仕事からより高度な仕事へ経験させていくことで、
 上記コストを低減させる。
・OJTは、1対1の個別具体的な訓練がしやすい。
 OJTは、暗黙知である技能の持ち主について仕事の仕方を見習うことができる。
・OJTは、教え手と習い手が職場でともに働くことこそ最重要の道。
・OJTを効率的に行うと「企業内」になりやすい。
 企業内で関連の深い仕事群を、やらしい仕事から難しい仕事への移動していく。
 それが技能を高める。
●OffJT
・OJTに熱心な職場は、OffJTにも熱心。
○これは原ひろみ氏の「日本企業の能力開発」
(日本労働研究雑誌 June2007)でも同じような調査結果がでていた。
・OffJTのもっとも重要な役割は、問題処理の技能を高めることにある。
 OffJTによって、理論を勉強し、経験を整理分析できる。
・OJTをさらに効果的なものにするために、理論的なOffJTが欠かせない。
・起こり得る問題をほぼすべて知り、その有効な対策も見当がついている
 ようなOffJTコースを設定することは難しい。
●通念に対して
・大企業男性労働者でも、転職者は多い。
・若者はおおいに企業間を移動している。
・中高年が雇用を独占し、若者に貧乏くじを押しつけているという見解。
 これは他国を知らない鎖国的認識。欧米の若者の失業率は日本より高い。
・日本は終身雇用で高年者を保護しすぎるといわれるが、
 50歳代半ばで勤続が急激に下がることからも、むしろ高年者には冷たい。
 日本は高年者には厳しい国。
・機械産業における仕事能力は、60歳以上でもさがらない。
 劣るのは30歳未満。
●日本と諸外国の差異
・日本の大卒の多くは、下積みの仕事も経験する。
・日本の管理職の選抜は、遅い。入社当初は「リーグ戦」
 入社15年ほどから「トーナメント」が開始されると見られる。
・ブルーカーラーとホワイトカラーの差が、日本は先進国中
 もっとも小さい国の一つである。
・日本では研究開発における政府の役割が他国より小さい。
・アメリカは日本にくらべ若い層に解雇をしわ寄せし、
 日本は50歳代以降の高年者層に非自発的離職率が目立つ。
・日本は中小企業が多い。
・日本は中長期のOJTをもっとも多くの人に展開してきた。
 これが日本の競争力の源泉である。
・日本の技能形成は、企業内OJT中心。
・日系企業の効率は、英米企業よりあきらかに高い。
・現代日本の職場でもっとも良質な部分、時間をかけ企業内で経験を積む
 技能形成方式、は相当に普遍性がある。これは仕事方式として他国に展開可能。
・OJTを海外の技術協力にのせる。その方策の開発が肝要。
○これは魅力的!日本の「企業内OJT」のやり方を海外に展開する。
・日本の仕事方式のもっとも良質な要素は「知的熟練」と「長期の競争」である。
 グローバル化のもとでは、仕事の方式が益々重要になる。
・ただ、日本の仕事方式は、リーダーを迅速に育てる仕組みが弱い。
 (これは二律背反と考えることができる)
・平等度の高い社会が、日本の職場の効率に寄与。
 一握りの金持ちのために働くのであれば、誰も職場効率の向上に熱意はもたない。
●人事
・採用管理の要点は、採用すべき人の「質にかかわる情報の把握」である。
・日本のサラリーは、中長期の成果や業績をそれなりに良く反映してきた。
・成果主義は、関連する分野での幅広い経験による技能向上を無視する。
・真に重要な雇用対策は、フリーターから正社員への昇格の途を広げること。
●その他
・資料批判は、現代益々重要になる。パソコンに入ってしまえば、すべての
 数字はおなじように信頼できるように映る。かくて情報は氾濫し、自分に
 都合のよい数字を容易に見つけることができる。
○これは、自分自身気をつけないと。
(・引用 ○関根の独り言)

投稿者:関根雅泰

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