
○「歩く」を含む「移動」本(2冊)
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『移動と階級』伊藤将人(2025)
・「自分の移動を自分で決めて、実行できますか?」
○この問いに対する俺の答えは、Yes。
・現在、アメリカやヨーロッパは、「どこでも族 Anywheres」と「どこかで族 Somewheres」の人々に分断されているという。
・どこでも族は、学歴が高く個人主義的でキャリアを重視し、どこかで族は学歴が低く地元や家族を大切にすると整理される。
・移動は、限られた強者が行う貴重な権利となっている。
・人類史の大きな境目は、定住にある。人類がなかなか定住に至らなかった原因の一つは、密集することで、疫病が蔓延するから。
・移動をめぐる不平等なジェンダー関係が顕在化。
・移動は「逃げるという自由」の土台である。
・移動経験によって、機会の認識能力が磨かれる。
・移動がアントレプレナーシップやイノベーションを高めるというよりも、移動が「高度人材」のアントレプレナーシップやイノベーションを高めるのである。
・「移動=成功」を他者に押し付けたがる人がいる。その理由が、ネットワーク資本から説明できる。
・移動資本とネットワーク資本によって、富める者はどんどん富み、格差が拡大していく。
・「たくさん移動したから成功した」という確信と論理を支える一種のイデオロギーが、能力主義(メリトクラシー)である。
●参考:メリトクラシー
・國分は言う「移動の自由は、支配と服従から逃れる可能性の根本なのである」
●参考:國分先生の本
・「移動不可能財」の存在
・すべての観光地は、その場所から移動させることができないし、その場所に存在することに大きな価値がある。
・現地に行かなければならない価値がある。
○これ!こそ、まさに「まるキャン」で実現させたいこと! ミニ起業家の聖地として、比企ら辺の丸太看板を、七福神にようにめぐり、商売繁盛祈願と事業案を「歩きながら考える」場とする。比企ら辺に来れば、良い事業案が浮かび、実践度が高まる「有難い場」になれたら。
・テレワークには、移動をめぐる格差や不平等を解消する大きな力もある。
・移動の自由は、あらゆる自由の拠り所。
・「移動力を発揮して成功」は、移動強者に限定的な特権的な思想、移動の成功も失敗も、自己責任ではない。
○このメッセージ、力強い。特権ならば、移動強者として何をすべきか、俺なりの考えを述べたセミナー。
●参考:ミニ起業家と海外出張
https://hiki-kigyo-college.com/2025/06/15/ido_250615/
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『モビリティーズ 移動の社会学』J.アーリ(2015)
○『移動と階級』でお勧めされていた本。
・旅行と観光は、世界最大の産業。6.5兆ドル、世界の雇用の8.7%、GDPの10.3%を占めている。
・これまでの社会科学は、概して「非動的 ア・モバイル」であった。
・マルクスは、反復作業を通して「部分労働の自動的機構」になることによって、労働者は「不具の畸形者」に転化されると考えた。
・歩くことは、間違いなく、最も重要な移動形態である。
・人々が、自分自身を歴代の人々も同じ道を辿っていると想像することができるのは、すでにある「小道」が繰り返し、踏みしめられるようになる時である。
・足跡を残さないのは、小道が既に舗装されてしまっているからに他ならない。
○これほんとそうだよな~。舗装は、車の通行のため。土の小道は、人間の歩行のため。
・「立ち止まりやすさ ポーザビリティ」
・歩行のアフォーダンスが、様々に満ち溢れていた所では、非常に高い温度でも、人々は外に出て歩こうとした。
●参考:アフォーダンス
・歩くことが、いかに自然と共に歩く者たちの英気を養うのかを示した「逍遥の理論」の発達。
・よい社会とは、歩くことがずっと広範に見られる社会であろう。
・歩くことは、移動システムの中で、最も「平等主義的」である。
・歩行システムが力を持つほど、その場所や社会における社会的不平等は小さなものとなるだろう。
○これいいな~。まるキャンで目指したい世界も「歩いている人が多い世界」なのかも。
・鉄道による運動の機械化は、速度の評価、とりわけ速い列車の方が、遅い列車よりも良いとする価値観をはじめてもたらした。
・自動車移動は、職場と家庭を引き離し、住宅地域と商業地域を引き裂いた。
・飛行空間が、グローバル秩序が招き入れている「場所」の典型をなしている。
○「船」による移動が出てこない。島国の日本はもちろん、ヨーロッパによる「新世界」の発見にも、船が果たした役割は大きいはずなのに。あえて?
・感情の交わり(コミュニティ感情)は、その成員(メンバー)が、物理的にごく近くに居住していなくても生まれるものである。
・飲み会や、事前準備のないミーティングは、純金のように、貴重なものになる。
・信頼関係は、ある程度バーチャルに維持できるものの、まずは対面での社交が信頼を確立するために求められる(Nandhakumar 1999, Boden 1994)
・あらゆる移動は、経済資源を必要としており、このことが社会的平等に対する最大の制約条件になっている。
・信頼と互酬性が、近しいコミュニティの中でしか生まれないという主張は妥当性に欠けている。
●参考:ネットワーク論
・会うことは、ネットワーク資本にとって不可欠である。
・特定のネットワークに身を置き続けるには、旅行し、出会い、会話しなければならない。
○なるほど!だから、学会や国際会議で、会うことが大事なんだろうな~。
・学術会議は、異国情緒がいっそう豊かな場所で開催されるようになっている。
・現代世界において「凝集」ないし「沸騰」が広く共通してみられるようになった場所の一つが大学のキャンパスである。
・バーチャルな大学を作ろうとする近年の試みは困難に直面しているが、それは現実のキャンパスが果たしている物理的、象徴的な役割のためである。
・建築物によってある場所が、どうしても見たい場所になる。
○「移動不可能財」の力だよな~。これを、まるキャンでも実現したい。しかも、ただの建築物(ハコ)が残るだけでなく、そこに関わるヒトがいる状態。
・死の場所は、ごく普通に訪客のための場所に変容し、そして、更新され続ける観光案内に登場する。
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