【木曜日23-30】能力主義本

木曜日

○読書会議で、Kwさんにお薦め頂いた本が、きっかけで読んだ本。(教養本2冊)

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『実力も運のうち 能力主義は正義か?』M.サンデル(2021)

・裏口、通用口、どちらの大学入学も、お金が能力(メリット)に勝るのを認めている。

・2016年のD.トランプの当選は、一般市民には無力感を味わわせるだけのグローバリゼーションに対する怒りの評決。

・民主党のテクノクラート的リベラリズム(自由主義)は、ブルーカラーや中流階級の有権者よりも、知的職業階級とそりが合うものであった。

・最大の社会的流動性を備えている国々は、最大の平等性を実現している国々である場合が多い。

・公正な能力主義(社会的地位は努力と才能の反映であるとするもの)は、勝者にこうっそのかす。彼らの成功は、彼ら自身の手柄であり、彼らの美徳の尺度だと考えるように、そして彼らより運に恵まれてない人々を見下すようにと。

・能力主義的なおごりは、成功へと至る途中で助けとなってくれた幸運を忘れてしまうのだ。
・運命の偶然性を実感することは、一定の謙虚さをもたらす。

・60年前、M.ヤングが、メリトクラシー(能力主義)が引き起こすおごりと怒りを予想した(1958年)
・ヤングは、能力主義の暗部(ダークサイド)を垣間見てもいた。

・ソ連の解体とベルリンの壁の崩壊のせいで、西側諸国の多くが、リベラルな民主主義と自由市場資本主義という自分たちのモデルの正しさが、歴史によって立証されたと想定するようになった。

・私の成功が、私の手柄だとすれば、彼らの失敗は、彼らの落ち度に違いない。
・能力主義は、共感性をむしばむ。

・能力主義エリートに対するポピュリストの嫌悪が、トランプの当選と、イギリスのEU離脱に一役かった。

・学歴偏重主義は、容認されている最後の偏見。

・優れた統治のために必要なのは、実践知と市民的美徳、つまり共通善について熟考し、それを効率よく推進する能力である。

・テクノクラ―ト的な政治と、新自由主義の類似性。
・技術家主義(テクノクラシー)と能力主義(メリトクラシー)の結びつき。

・正義にかなう社会をめぐって競合する2つの説:
 1)自由主義リベラリズム 2)福祉国家(平等主義)リベラリズム

・成功者は独力で成功を収めたわけではなく、それを可能にしてくれたコミュニティに恩義がある。

・不平等が、能力の名の下に、擁護されている。

・敗者は、自分が低い地位にいるのは、まさにそれだけの能力しかないからだと悟る。それは、どんな人にとってもつらい経験だ。

・親業文化。過干渉な子育て(ヘリコプター・ペアレンティング)
・ひそかに蔓延する「完璧主義」という病。
・達成の要求に応えられるか否かが、能力と自尊心の物差しになる。

・名門大学が、市民教育の任務を十分に果たしていないことを認めるべきだ。

・失業の痛みは、共通善に貢献する機会を奪われること。「見えない人間」になるということ。
・我々が人間として最も充実するのは共通善に貢献し、その貢献によって同胞である市民から評価される時。
・人間が根本的に必要とするのは、生活を共にする人々から必要とされることである。
・働く人が「自分はこの国をつくるのに手を貸した」と言えるような職。

○この辺が、地域ならできるかも。もっと考えてみよう。

・2016年(トランプの当選、ブレグジットの実現)は、グローバリゼーション・プロジェクトの失敗を告げた年。

・軸足をGDPの最大化から、労働の尊厳と社会的一体性につながる労働市場の創出に移す。

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●解説:本田由紀教授

・民主党よりとされてきたサンデルが、オバマのメリトクラシーへの肯定的姿勢ついて、厳しく批判している。

・Meritocracyは、海外では「功績主義」という意味で用いられている。日本では「能力主義」と読み替えられて通用してしまっている。
・「能力」は人間の中にあって「功績」を生み出す原因。

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●参考:

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『メリトクラシー The Rise of the Meritocracy』 M.ヤング(2021)

・文官制度改革まで、社会の大部分は、縁故関係に支配されていた。

・この島国(イギリス)は、計りがたい恩恵を享けてきたのであった。侵略されることも、戦争に敗れたことも、政治上の革命に揺さぶられたことも一度もない。要するに、この国は衝撃を受けて、新たに再出発したことがないのだ。

・(20世紀の)戦争もまたメリットのための大掛かりな促成栽培温室であった。
・戦争は発明を、さらに重要なことは、人的資源をいっそう効果的に用いる刺戟となった。

・最高の研究の達成は、服従にある。

・英国で何か新しいことをはじめる一番良いやり方は、新しいことではないように見せかけること。

・政治家は、不可能なことを望むのが常であるが、教育には速効というものはない。

・有史以来、老人はもっとも持久力のある支配階級であった。
・民主政治のもとにおいてさえ、老人による、青年支配の、老人のための政治を意味した。

・教育が産業界への入口を決定し、入口は、彼の到着店を決定したのであった。

・非常事態というのは、青年に与えられた機会である。

・私がこの小論を書いたのは、むしろ知識人仲間をいましめるためなのである。
・現代英国の下層階級とは誰なのか?

・メリトクラシーの興隆に附随する緊張状態:家族と地域社会の間、それぞれの教育機構の間、若い人たちと老人との間、没落階級とその他のプロレタリアートとの間の緊張状態

・今日の傑出した人たちは、上の階級に属するだけの値打ちがある。
・21世紀の価値体系においては最高の座を占めるのが、知能と教育。
・エリート階級の重大性に胸を打たれるあまり、自分たちが支配する人たちに同情心をなくす。

・自分が本当に劣等であるという理由で、自分の地位が低いのだということを認めなくてはならない。
・人間の歴史において初めて劣等者が、手の届く所に、自尊心のとりでを持てなくなった。

・蛙にはなれないことを知った多くの年取ったオタマジャクシはどうなるのか。

・親たちの経験してきた挫折が大きければ大きいほど、子供に対する願望は大きい。

・プロテスタンティズムの役割は、取得本能をかりたてることにあった。

・イギリス人の特性は、古き器に新しい酒をつぐところにある。
・進展をよしとするが、革命はよしとしない。

・エリートは世襲になろうとしている。世襲の原理とメリットの原理が一緒になろうとしている。

・2034年5月

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●訳者あとがき

・M.ヤングが、メリトクラシーの造語者と考えてよいだろう。

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●解説:執行草舟氏

・一人の人間の「人生観」に、革命をもたらす書物がこの世にはある。
・未来の平等社会と能力社会が成功するか失敗するかの処方箋が、本書には満載されている。
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・1958年に出版。1982年に日本語訳。その後絶版。
・著述家、実業家の執行草舟氏が、復刊を牽引。

●執行草舟氏
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9F%B7%E8%A1%8C%E8%8D%89%E8%88%9F

○執行草舟氏の著書『生くる』が、積読になってた。今度読んでみよう。
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投稿者:関根雅泰

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