○資本主義本を読んだので、その流れで貨幣の本を読む（2冊）
＝＝＝
『貨幣システムの世界史』黒田明神（2003、2020）
・今日のように、預金口座間の振り替えで、購買や支払いが行われる「預金貨幣」が重きをなす以前においては、貨幣といえば、人の手から手へと渡される「手交貨幣」であった。
・物理的に移動する、ことに拡散するということと、通貨間の多元的評価、非対称性との間に関係がある。
・手交貨幣は、必ずしも還流しない。
・一国一通貨制度は、ありうるべき唯一の安定した存在形態なのでは、決してない。
○へ～。そう思い込んでた。
・なぜ、貨幣は受け取られるのか？（例：外国の古銭「マリア・テレジア銀貨」なのに）
・回路としての貨幣
・飢饉に際して恐れるべきは、食料そのものの絶対的不足は当然のことながら、むしろ通貨の不足による、流通の渋滞なのである。
○確かに、震災やコロナ禍では、流通が滞った。あれは通貨の不足ではなかったにしても。
・17世紀から18世紀まで、世界の銀は、中国とインドへひきつけられていた。
○この辺の話は、『1491』『1492』で読んだかも。
参考：
・1920年代はじめの山東省済南では、通貨不足の状況の中で、市内のみで通用する紙製通貨を、金融機関のみならず、様々な商店が発行していた。
○面白い！閉ざされた地域の中で使えるお金を自ら発行してたってことかな。
・伝統中国は、財・サービスの流通に権力や団体によって閉鎖性が与えられることが少なく、きわめて開放的な市場であった。
・小農たちの経営の自由度と、農村市場の発達とは、ほぼ正の相関関係にある。
○この辺は『資本主義が人類最高の発明である』の主張に近い。
参考：『資本主義が人類最高の発明である』
・「財の交換」と「時の交換」
・「時の交換」では、空間が問題となる。
・現地通貨と地域間決済通貨の連結
・2つの異なる回転運動を連結させたもの。
・通貨そのものに依存しない、地域信用の発達こそが、単一通貨の下支えとなることを示唆。
・貨幣は流れるべきものであるがゆえに、逆に流れすぎないようにも設計された存在だということ。
・水平方向の可動性を過剰に持つと、必ずそれを制御しようとする垂直方向の力が現れるということである。
○これ面白いな～。流れすぎないよう、制御する力。この前読んだ千葉雅也先生の話にも通ずる？
参考：『動きすぎてはいけない』
逆に流れる方でいえば、この本かな。
参考：『流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則』
『流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則』のレビュー エイドリアン・ベジャン (関根雅泰さん) – ブクログ
『流れといのち──万物の進化を支配するコンストラクタル法則』
『流れといのち──万物の進化を支配するコンストラクタル法則』のレビュー エイドリアン・ベジャン (関根雅泰さん) – ブクログ
・通貨は必ずしも循環せず、滞留する傾向がある。
○特に「手交貨幣」なら、そうなってもおかしくない。重さもあるわけだし。ただ、数値だけのやり取りになる「預金貨幣」や「NFT」みたいなものは、どうなるんだろう？
・貨幣そのものは、国家無しで成り立つ。
＝＝＝
『歴史のなかの貨幣』黒田明神（2025）
○FBで知り合いがお薦めしていた本。
・額面が小さいほど硬貨が流通の回路にとどまりにくい。
・1177年に、京都は大火に見舞われ、多くの寺院が焼失した。
・「回収するシステム」が、紙幣の受領性維持にとって肝要。
○紙幣がだぶつかないよう、回収しないと、価値あるものとして、受け取ってもらえないということ？
・15世紀前半、日本列島が銅生産の一大拠点として現れた。
・1572年、はじめて「ビタ」で表示された米価が現れる。ビタ100文＝米17合
○「ビタ1文まけない」みたいな言い方は、ここから来たのかな？
・日本製模造古銭の輸出（朱印船貿易）による利益よりも、参勤交代制度の確立を、幕府は優先した。
・「物価」とは、ある市場でのある時点における、物の買いやすさあるいは売りやすさの指標である。
・物価が上がるのは、貨幣供給が増えていたからだ、あるいは物価が上がらないのは、貨幣供給が足りないからだ、というのは逆の因果。
○日銀がお金を擦りすぎたから、物価が上がったということではない。他の要因のほうが、庶民にとっての「買いづらさ＝物価高」につながっているということかな。
・通貨には、見ず知らずの者どうしの匿名での交換を媒介する効能がある。
○これをあえて逆に「お金に名前をつけた」のが、まるキャンでの「ＮＦＴ（応援チケット）」かも。
参考：『お金に名前をつける』
https://hiki-kigyo-college.com/2024/03/08/hiki-kigyo-college-nft
・権力の介在なしに、貨幣は自生しうる。
＝＝＝
コメントフォーム