「第5回アジア太平洋評価学会大会」に参加してきました。

研修評価研究所

「第5回アジア太平洋評価学会大会」に参加してきました。

研修評価研究所 所長の関根です。

2025年11月12日(水)~13日(木)「第5回アジア太平洋評価学会大会」@神保町の学術総合センターに参加してきました。#APEAconf2025 #EvalVisionAsia(参加費は、US$200)

神保町駅から歩いて、学術総合センターへ。

受付を済ませたら、バッグをもらいました。

中には、水筒が入っていました。ありがたいことです。

コーヒーをもらいに行ったら、大盛況でした。

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11時~12時30分

Keynote Panel: Supporting and Hindering Factors for the Use of Evaluation

6人のプレゼンターが、各地域の状況について話をします。

進行は、石田洋子先生です。

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●ヨーロッパ

・R.Stockmann

・ヨーロッパの16か国

・Institutionalization と Use of evaluationは、相関している。
・北米が1位。

・Professionalization は、まだ進んでいない。

・東ヨーロッパの国々も、評価をするようになった。

・Good Governance およびDemocracy と Use は、相関していて、最も高いのがヨーロッパ

・政治的意思決定に評価を使っている。


●北アメリカ

・R.Lahey

・カナダ、USA、メキシコが、北アメリカに含まれる

・訓練された経験豊富な評価者が多い
・政府からアカウンタビリティを期待されている
・45年以上、パブリックセクターでの評価の歴史がある
・国立の統計機関が存在する

・シニアのチャンピオンが、良い位置にいてくれている。
・評価結果を、政策やマネジメントに使うことに、支援的な環境がある。

・その反面、評価は良い政治にとって「Nice to have」で「Need to have」になってない。
・評価者が、クライアントのニーズに合ってない。鍵となる課題に答えていなかったり、学術的過ぎたり。

・「Value in evaluation」を、評価者でない人に理解してもらう必要がある。
・MとEの区別をつける Monitoring and Evaluation
・RBM:Results-Based Management

・評価者が「信頼できる助言者」という位置づけになれるよう。


●南アメリカ

・B.Bucheli

・ラテンアメリカとカリブ海諸国の状況

・Institutionalization of evaluation とは

・南アメリカでの動き:
  1996年~2000年 パイロット
  2005年~2010年 形式化
  2010年~    Institutionalization

・チリのみが、議会内に評価の部署を持っている。
・評価結果を使うインセンティブが少ない。
・コントロールの文化がある。
・市民には、透明性とアカウンタビリティを求める権利があることを教育すべき。


●アジア太平洋

・B.Astbury

・オセアニア、東アジア、東南アジア、南アジア

・評価で修士が取れる国もある(例:オーストラリア)

・道は険しい


●南アジア

・A.Kalugampitiya

・南アジアの状況

・社会システムが弱い
・大学で評価のコースがあるのは、スリランカのみ。

・評価をどうマネジメントしていくか。

・アフガニスタン、ブータン、モルジブは、省かれている。


●アフリカ

・J.Watera

・アフリカの国々の状況

・強い評価の文化を作る必要がある。

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●質疑応答

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12時30分~13時30分 

Lunch Break and Poster Presentations

ランチ会場。ハラールとベジタリアン向けの食事もありました。

この行列に並ぶのは勇気がいるので、神保町の中華料理店へ。

神田すずらん通りで、魅力的な古本屋さんを発見。

入って、棚を見たら、そこに、今ちょうど興味をもってる「大乗仏教」の本を発見!

しかも、禅でも有名な鈴木大拙の本!

こういう出会いがあるから、本屋めぐりは、たまりませんね。

●参考:今、興味を持ってる仏教思考

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無料配布されていた外務省の冊子。

・評価の視点

 1)Developmental viewpoints 開発に資する内容であったか?
  (1)Relevancce of policies 関連性
  (2)Effectiveness of results 結果の有効性
  (3)Appropriateness of process 適切さ

 2)Diplomatic viewpoints 日本の外交に資する内容であったか?
  (1)Diplomatic importance 重要性
  (2)Diplomatic impact 影響

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/100927803.pdf

○これも参考になるな~。

 企業研修の評価なら、例えば、

 1)経営に資する研修であったか?
  (1)戦略との関連性 (Why:何故その研修を行ったのか?戦略とつながっているのか?)
  (2)研修活用度と得られた結果(What:研修を行った結果、何が起こったのか?どんな変化や成果が?)
  (3)人的資本の蓄積度合い(Who:研修を行ったことで、どんな人材がプールされているのか?)

 2)従業員の幸福?Well-being?につながる研修であったか?
  (1)本人の成長実感?
  (2)入社時からの変化?
  (3)

・・・みたいな感じかな~。研修評価だと、前者の方が強調されるけど、後者も必要な気がする。ただ、どういう風に評価したらよいのかまだ見えない。その場限りの「研修満足度」は、やっぱり違うと思う。

すぐには効かないけど、じわじわ効いてくる「形式陶冶」的な研修は、後者に入りそう。もうちょっと考えてみよう。

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15時30分~17時

Session5: Working Group Results: Stakeholder Strategies for Strengthening the Institutionalization of Evaluation

○評価の制度化を強めるために、ステークホルダーにどう働きかけていくかの戦略(午後のグループディスカッションをまとめたもの)

●Parliament 議会

・K.Harim
・スリランカ議会の議員さん?

・Global Southで評価を進めていく際には、フレームワークを、Localizeする必要がある。

・「成功への道は、常に工事中だ」

・議会は、国民の代表が集まっている。

・国家予算は、Evidenceに基づいているわけではない。
・進歩は金融用語のみで説明される。

・80ページの評価レポートは、議員達に読まれない。2ページにまとめる。


●Ministries 省庁

・K.Nishino
○上記「ODAレポート2025」で2つの評価プロジェクトに関わっていた先生

・評価は、Inspections監査としてではなく、Innovation変革の源に使ってほしい。

・評価の使用者にも訓練が必要。
・日本の国民は、評価についてほとんど知らない。アクセスもしない。

・評価のTimingタイミングとUsefulness使いやすさが鍵。


●Academia 学術

・S.Singh
・インドでのM&E教育の代表、社会科学の教授

・評価をきちんと教えられる教員はいるか?


●VOPEs、EvalYouth 若手

・A.E.Lareza
・EvalYouth Global Networkの代表

・VOPEs:Voluntary Organization for Professional Evaluation
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjoes/23/1/23_31/_pdf/-char/en
・EvalYouth https://evalyouth.org/

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○「評価が、きちんとなされてない」「評価したとしても、その結果が活かされてない」というのが、多くの国での悩みなのかも。

「評価が、評価されてない」というのが、今回集まった人たちの憤りとしてあるのかも。

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18時、恵比寿へ。

23時、ホテル着。

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25年11月13日(木)朝6時起床。

7時半、泊まったアパホテルの裏にあった肉そばの「豊はる」へ。

お勧めの肉玉に、とろろをトッピング。

美味しく頂きました。

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10時、チェックアウト後、駅のコインロッカーに荷物を預けてから、会場へ。

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11時~12時30分

Beyond Algorithms:Reimaging Evaluation in the Age of AI

評価にAIを活用するセッション。

立ち見も出るほど、満員御礼。

○隣に座った女性(バキヤさん)は、スリランカ出身で、国連勤務だそう。南アジアで、28のプロジェクトの評価をされている。初めて日本に来て楽しいとのこと。AIは、ChatGPT、Gemini、NotebookLMを使っているそう。私の仕事を聞かれたので、企業の研修で、オンボーディングを支援しているという話をしたら伝わった。


●銀行等での事例

・AIは、評価のAlly 味方になる。

・2種類のAI:Descriptive、Generative

・自分が知らない言語でも、AIを使えば、コーディングができる。

・AIを使う際には、倫理観、リスク管理、透明性が、より必要になる。

・2人が、同じデータ、同じプロンプトで、AIを使っても、全く同じ結果になることはない。少し違う結果がでる。


●ジョージア大学

・Monitoring なのか、Evaluationなのか?

・Policy design 

・フレームワークが、間違った基準を作ってしまった


●インド

・データ爆発から、知的な評価システムへ。

・Ethical use of AI

・若者は、AI活用の触媒になりうる。彼らはデジタルネイティブ。
・繰り返し仕事は、AIに任せる。人間は、Oversightする。

・AIとデータ利用に関する法律
・法律と実践

・グローバスサウスでは、AIのレディネスが、平等ではない。


●GISを使った評価

・横田としゆき先生

・GIS(Geographic Information System 地理情報システム)を、評価に活用 
・前後を比較、現在をモニター、多彩な思考

・Nighttime light 夜の光の量で、経済的発展を見る

・このデータは公開されている


●地理空間技術を使った評価

・Geospatial 
・すべての介入は、空間と場所で行われている

・環境評価で、地理空間データを使っている。

・地理空間データだけでは限界がある。何故?が分からない。他の手法(定性調査等)と組み合わせる。

・評価を動的な学習プロセスとする。
・ある状況で上手くいった評価が、他の状況で上手くいくとは限らない。

・英語が第二言語であっても、AIを使えば、英語でのレポートは書ける。


●AIを評価プロセスに活用

・イギリスで独立評価者として活用

・CGIAR

・素人向けのAIの本がない

https://iaes.cgiar.org/evaluation/publications/considerations-and-practical-applications-using-artificial-intelligence-ai

・AIは、うそをつく


●質疑応答

・Transparancy 透明性:いかにAIが結果をだしたのか、そこがブラックボックスになっていないか。

・Ehtics 倫理観:AIにデータを入れるということは、守秘義務を破ることにならないか。

・AIは、どんどん進歩していく。評価者は、AIを上手く活用するファシリテーターを目指すべきでは。

・GISデータだけでなく、人々の声を定性データとして活用。

・クライアント側も、我々からの提案を、AIに分析させている。

・AIについて見えてくるには、もう少し時間が必要。まだ始まったばかり。

○一問一答ではなく、3人に質問させて、各パネリストが、自分で選んで回答していくのは、いいな~。

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15時30分~17時

Sharing Experiences of Evidence-Based Practice(EBP)in Japan

○佐々木亮先生がいらっしゃったので、名刺交換をして頂いた。あとで声をかけて頂き「関根さん、あのメールいいですね。どんな活動をしているか伝わってきます」と、近況報告メルマガへの嬉しいコメント。佐々木先生、ありがとうございます!

参考:佐々木先生のワークショップ

●田辺先生(進行役)

・インパクト評価は殆ど実践されていなかった。
・2015年に、日本政府が、EBPに注目するようになった。

●佐々木亮先生

○紙の資料を配って下さった。

・Scriven(1993)が、評価を定義
・Evaluation=Factual Identification+Value Determination

・Scrivenは、佐々木先生にとってのメンター。

・Experimental Design(RCT)

・RCTのルーツ
 1)心理学と教育(1880年代~1920年代)
    ペリスとジャストロウの実験、ソーンダイクの実験

 2)統計学(1925年~1950年代)
    フィッシャーの実験

・Cambellは巨人。「Experimenting Society」(1960年代)を提唱。

・EBP:Evidence Based Practice
  1972年~ Medicineに実験
  1979年~ Public Programに Rossiの本が、最も売れている。

・2003年、経済学で、RCTが使われるようになり、2019年にノーベル賞を受賞。

・日本でのRCTの歴史
・1953年、Kitagawa&Mitomeの本
 北川教授が、フィッシャーと、お茶を飲んでいる写真
 「The Lady Tasting Tea」 紅茶にミルクを入れる実験 

・2000年、日本評価学会の設立

・ODAの評価で、RCTが使われている。

・RCTが、一般に知られるようになった。「統計学が最強の学問である」「学力の経済学」という本のお陰。
・漫画になったことで、若い人にも、RCTが知られるようになるだろう。

・EBPMから、Evidence-Based Democracyに向かうべき。
・フェイクニュースやSNSの影響がある中で。

参考:RCT


●JICA(日本のODAエージェンシー)

https://www.jica.go.jp/english/

・EBPを支援するツール

・2001年~2024年の間に、89のインパクト評価を実施

・2021年から、Evidenceが必須となった。Proveするために。

・JICA Evidence HUB & JGA Evidence Collection

参加者からの質問

・Evidenceの定義は?

・Evidence Pyramid(メタ分析、RCT)に基づくデータ。


●小林ようへい先生

・EBPM:Evidence-Based Policy Making

・日本政府が、EBPMプロモーションシステムを作成。

・APR:Administrative Project Reviewに、EBPMが入れ込まれた。
・各省庁は、APRに記入することを求められた。

・EBPMは、上手くいってない。公務員の異動の仕組みに問題があるのでは。

・神戸は、EBPMが上手くいっている。In-houseで分析できる人材がいる。AIも活用。


●森としろう先生

・教育でのEBP
・博士論文

・EBPは、教員にとって効果があるのか?

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17時、終了!

2日間、とても勉強になりました。準備下さった先生方、スタッフの方々、ありがとうございました。

投稿者:関根雅泰

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