【木曜日25-19】研修評価本『ASTD Handbook of Measuring and Evaluating Training』

研修評価

【木曜日25-19】研修評価本『ASTD Handbook of Measuring and Evaluating Training』

○去年(24年)ATDに参加した際、買った本。今年(25年)行く前に読んでおく(1冊)

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『ASTD Handbook of Measuring and Evaluuating Training』P.Phillips(Ed.)(2010)ASTD Press

・測定と評価に関して、学習の専門家は、Love-hate relationship 愛憎を感じている。

・評価プロセス

I Evaluation Planning

・ADDIEでは、評価が研修後に行われるように示されている。
・評価計画を最初に行うと、良い成果が得られやすい。

・ギャップ分析モデル

・Powerful objectives drive powerful results.
・目標の6レベル(Phillips and Phillips 2008)

○Chapter2の著者 H.M.Annlis教授と、C.H.Gaudet教授は、母校USM(Univ.of Southern Mississippi)の教員だった!なんか嬉しい。

・計画なしに評価を実行するのは、旅程を考えずに旅に出るようなもの。
・データ分析の3つの手法
 1)統計分析 2)質的分析 3)金銭分析

・ステークホルダーに、2つ聞く。「どう成功を定義する?」「評価の目的は?」

II Data Collection

・正しい質問を、正しく行う。
・匿名性と正直な回答には関係がある(Phillips and Stawarski 2008)
・回答しない受講者は、研修によって良い変化があったとは考えにくい。

・レベル3 Application(仕事適用)を聞く質問の一例
 「今回の研修で学んだ知識、スキルを必要とするタスクは、私の全仕事時間のうち、%ある。」 0%~100% から選ぶ。

・レベル4 Results(成果)を聞く質問の一例
 「ほかの要因もある中で、研修による効果は、100%のうち、何%ぐらいか?」
 「上記推定に対する自信は、何%ぐらいか?」(全く自信がない 0%、確信的な自信がある 100%)

・レベル2 Learning(学習)を測定する2つのテストがある。
 1)Norm-referenced tests(NRTs)
 2)Criterion-referenced tests(CRTs)

・インタビューによって、研修価値を示す逸話 anecdotal を集めることができる。
・インタビューでは、発言者の言葉どおりに記録する。

・Focus groupは、経験豊富なファシリテーターによる小集団でのディスカッションである。
・総従業員数の10%の人数を、フォーカスグループとする。

・フォーカスグループの進め方
 1)グループインタビュー 2)Ishikawa(フィッシュボーン)3)Nominal group technque
・フィッシュボーンでは、問題の原因を、People、Machines、Materials、Methods、Ennvironmentに分けて考える。

・解決策が適切かどうかを、短期、長期、効果、時間の観点で評価する。

・Action planningは、何を誰がいつまでに何を使って行うかを計画するプロセスである。
・アクションプランのひな型

・The Success Case Methodは、正確で、簡単で、素早い、測定評価手法である。
・研修評価に関する現実
 1)研修は、受講者のうち、少数の成功者を生み出す
 2)研修単体では、意味がない

・平均値 mean,averageをとることで、月並みな結果が示される。
・SCMは「いつ研修が使われたのか?研修はどんな良い結果をもたらしたのか?」を尋ねる。

・80%以上の研修の失敗は、研修そのものではなく、文脈とパフォーマンスシステム要因が原因となっている。

・SCMでは、他の要因から研修効果を、isolate 分離しようとしない。

・SCMでは、まず、成功事例の量的分散を調べる。
・その上で、成功例に対して、深いインタビューを行う。

○これ分かりやすいな~。確かに、研修内容を使ってくれて、良い結果を出してくれているなら、それがポジティブROIと言える。ただ、その「良い結果」は、あくまで本人の主観なので、これが客観的に裏付けできるといいよな~。方法を考えよう。

・Performance Recordsは、ROI算出の最も信頼おけるデータになる。

III Data Analysis

・統計分析
 1)Descriptive Statistics 状況を説明している統計

 2)Inferential Statistics 意思決定(少数データを多数に適用)のための統計 

・数値でないデータが、定性データ。
・定量データは、評価結果をShow 示すもので、定性データは、Tell the story物語を話すもの。

・定性分析の4ステップ
○この読み込みで、AIが使えそう。

・定性分析で、主観を排除することはできない。

・研修効果を isolate 分離・単独化するためのテクニック

・実験群と統制群

・研修効果の分離・単独化は、完全に正確に、エラー無しに、行うことはできない。

・金銭価値に転換する際は、どの指標を使うかをはっきりさせる(例:新規会員の獲得数)

・費用は、直接、間接、すべてを入れる(なるべく多めに出す)

・BCRは、実際の結果を示す際に使われ、ROIはしばしば研修投資の予測にも使われる。
・Payback Periodは、BCRの反対である。
  BCR=Benefits/Costs PP=Costs/Benefits
・1年以内に、投資したお金が戻ってくるなら、十分投資効果がある。
・ROIを算出する研修は、全体の5~10%で十分である。

・Retrospective:Look back Prospective:Look forward

・ROI以外にも、将来の価値を推定する方法はある。
  回帰分析、システムモデリング、Utility Analysis

IV Measurement and Evaluation at Work

・Reporting Evaluation Results 
・聞き手はどれだけ興味をもっているのか。どれだけ情報を欲しがっているのか。

・CEO-Friendly data
・CEOは、ImpactとROIデータを欲しがっている。反応は最も重要度が低い。
・レベル3 Application データに、CEOは興味を持っている(61%が欲しがっている)
・ROIはなるべく保守的な数字とすることで、信頼性を得る。

・鍵となるグループによって示すデータ(レベル1~4)は変わってくる
・Chain of Evidence
・資格取得者の成果を、未取得者と比較

・測定と評価を実行する際のチェックリスト

・評価に関する重要な質問
 1)何を知りたいのか? 2)どう使っていくのか? 3)評価情報を使うのは誰か?
・評価で使えるツール
 1)SurveyMonkey 2)Metrics That Matter 3)Sensei/ROI 4)Learn.com

・mLearning モバイルを使った学習
・レベル1反応で聞くべき質問2つ
 1)研修は、仕事に関連していたか?
 2)研修で学んだことを、使おうと思っているか?

・Traditional Trainingと、Computer Simulation Trainingを比較
・シミュレーションでは、第1レベルでは「高い権威」でミーティングを進行、第5レベルでは「低い役職」でミーティングを進行するので、対人スキルが必要な状況になっている。
・伝統的な研修よりも、シミュレーション型研修のほうが、より個別の練習ができ、フィードバックが得られていた。さらに、シミュレーション型研修で学んだ内容のほうが、より転移していた。

V Voices

●R.O.Brinkerhoff

・ヴェトナム戦争時、5年、海軍に属していた。
・その後、社会活動プログラムの評価案件で、ワシントンDCに5年いた。

・「誰が、研修を最も活用してくれているのか?」

・シニアリーダーたちに説明する際は「グッドニュースとバッドニュースがある。グッドニュースとして、3年かけて、$40million 使ったマネジメント開発プログラムは効果があったことである。いくつかの例を出すと、北東事務所のリーダーは、研修内容を活用し、2年で$500millionの売上をあげている。バッドニュースとして、こういう成功事例は、全体の15%しかないことである。言い換えると、これまでかけてきた予算の85%は無駄になったということである。もし、研修内容を活用する人々を、2倍(30%)に増やせたら良いと思わないか?」

○この説明いいね~。2:6:2で考えても、1年目の成功例が約2割、2年目に4割、3年目に5割(中間6の半分)が、研修内容を活用し「良い結果が出た」という状態にもっていくのが現実的かも。

・鍵となる質問は「Are they using it? 使っているのか?」である。

●M.L.Broad

・1993年に引退。
・レベル3の測定こそ、職場がいかに変わったのかを見るもの。
・研修設計と評価は、統合されるべきもの

●J.Fitz-enz

・1980年に、Saratoga Instituteを創業。
・1969年のころ、測定は価値と言った言葉は、研修業界になかった。

・研修担当は、6か月ぐらい、ラインで仕事をした方が良い。
・そうすると、世界は研修で動いていないことが分かる。

・多くの研修担当は、測定が好きではない。
・彼らは、自分たちの仕事を測定、評価することに興味がない。

○この人の本『The ROI of Human Capital(2009)』読んでみよう。

●R.Kaufman

・Organizational Elements Model
・成果の3レベル(Product、Output、Outcome)
・2つの問い「どんな成果をもたらしてくれたのか?」「その成果はどのくらい価値があるのか?」

●D.L.Kirkpatrick

・博士論文では、ReactionとLearningの2つのレベルについて書いた。
・研修に送り出す上司に対して「受講生に次のように言って送り出してほしい。”あなたが研修から帰ってきたら、何を学んだかと、どうしたらその活用を私が手助けできるか、訊くからね”と」

・レベル3とレベル4の測定が重要になっている。
・マネジャーを、最初からからませることが鍵である。

●J.J.Phillips

・1970年、D.Kirkpatrickと、コンタクトを取り、話を聞いた。
・1972年、修論のテーマとして、ROIの算出を行った。
・CEOは、研修によって変化が起こるのを見るのは好きである。

・測定と評価を避ける最大の理由は、結果への恐怖である。
・研修予算の1%ぐらいしか、測定と評価には使われていない。これが3~4%に増えるだけでも大きい。

・ADDIEモデルを変えていく必要がある。評価が一番最後ではない。

●D.G.Robinson

・1970年代、研修担当をしていたころ、研修評価をする必要があり、手助けを求めたら、将来の夫になるJ.Robinsonと出会った。

・研修担当は、ビジネスパーソンのように考える必要がある。ビジネスニーズがあり、こういう手段で解決する、そのためのコストはこのくらいで、このくらいのリターンが得られると。

●W.J.Rothwell

・研修ニーズアセスメントと、研修評価は、手を携えて行っていくもの。
・研修担当は、その仕事に長くつく専門家と、社内異動で短期間だけ関わる人という2グループに分かれる。

・「役員へのボーナスが、事業成果にどうつながるのか」という問いかけはなされない。
・研修に対しては、事業成果への影響を求めるが、役員ボーナスには求めない。ダブルスタンダードがある。

・研修を、足りない知識スキルを与えて、標準に持っていく活動と見るのは古い。
・研修を、R&D機能ととらえ、人々が集まることによって新しい知識を創造する場としていく。

○この人の本『What CEOs Expect from Corporate Training』を読んでみよう。

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投稿者:関根雅泰

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