【木曜日25-38】歩く本(8)

木曜日

【木曜日25-38】歩く本(8)

○ダンテの『神曲』や「地獄」にまつわる本(2冊+4冊)

===

『やさしいダンテ「神曲」』 阿刀田高(2008)

○この本を先に読んでから、ダンテ『神曲』を読むべきだった~と後悔するぐらい良い本。

・ベアトリーチェは、銀行家の息子と結婚し、24歳で夭折する。
・(ダンテと結婚した)ジェンマ・ドナーティは純朴な女性で、生涯を通して逆境のダンテを愛した。5人の子を産み育てる。

・言葉とは民族なのだ、民族とは言葉なのだ。
・ダンテは、ラテン語を離れて、明晰で美しいイタリア語を使って作品を書いた。

・多神教のギリシャ・ローマ神話と、一神教のキリスト教は、本来的には折り合う可能性が乏しい。
・ルネッサンス運動は、略言すれば、ギリシャ文明を見直そう、であった。

・マホメットとアリー(シーア派の語源:アリーの一派)が、不和騒擾をもたらした人々が落ちる地獄の第八層に置かれて罰を受けている。
・『神曲』は、イスラム社会にとって長く禁断の書であった。

・日本神話なら、だれが(地獄に落とされる)悪人かなあ。
・ダンテの善悪のものさしは厳しく、逆に測りやすいところもあったろう。

・ダンテはイタリア人なのだ。栄光の国ローマの礎を築いた英雄としてのカエサルがいて、それを裏切り殺した(ブルトゥスとカシウスの)罪は重い(地獄の王ルチフェルから、ユダと共に重い刑罰を受けるほど)

・りっぱな人物でも、いきなり天国に入れるわけではない。たいていは煉獄を通って、天国へ向かう。
・地獄ではひたすら苦しむ。煉獄では、苦しみが浄化のプロセスとして喜ばしいのである。

・暴力に屈するのは、部分的にせよ、暴力に加担すること。
○これは、納得いかない人も多いかも。屈したくなくても、屈せざるを得ない状況もあるのでは。

・「お前(ダンテ)の言葉は、しばらくは拒否されるかもしれないが、やがて人々に理解されて染み込み、末永く残って命の糧となる」
○これこそダンテの願いだったんだろうな~。

・キリスト教に巡り合う機会の無かった者は(キリストより先に生まれた人も含めて)死後はどう裁かれるのだろうか。その善良な生涯はどう評価されるのだろうか。
○ほんとそうだよな~。

・キリスト教を信じているから、キリスト教は正しい。
・信ずるか、信じないか。そこに要約されるのでは。
○キリスト教を信じている人、信じていない人。お互いに、相手に「信じさせよう」とせずに、関係を築けるか。「そういう考え方もあるよね~」と、一種冷めた目で相手と付き合えるか。こちらはできても、キリスト教側の人は「信じてもらわないと、相手が地獄に落ちる。相手のためにも、信じさせないと」と思っているなら、きつい、

・「愛によって1冊の本にまとめられ」
○ここ、作家の阿刀田高さんなら、どうコメントするのか期待してたけど、特になかった。この場合の本とは、おそらく旧約聖書、新約聖書のことだろうから?

・現世と比定できるもう一つの世界を考案するケースも多い。宗教はこれに傾く。
・仏教も死後の世界、神道も黄泉国。

・あの世ってこうなっているのか。一つのパターンを(神曲を通じて)知ったことは疑いない。

●解説:佐藤優

・近代を理解するための必読書の一つ。
・ダンテは、徹底的に個人に執着している。

・シュライエルマッハーは、神は心の中にいると、神の場を天から心の中に移動したのである。
・「神曲」に描かれているのは、ダンテの心の中にある地獄、煉獄、天国の姿なのである。
○どこかにあるのではと探し歩いたが、結局、自分の中にあったという話。最近似たような本を読んだ気が・・・。

===

『ドレの神曲』 原作:ダンテ 訳・構成 谷口江里也 挿画:ギュスターヴ・ドレ(2009)

・辺獄(リンボ)ここから地獄の淵をとりまく第一の圏(たに)だ。

・キリスト教とギリシャ神話、そして現実とを自らの作品の中に融合する手際は、ダンテならではのもの。

・マホメットがやられる様。
・最も重い罪は、異端の教えをもって主の民を、分裂対立へと導いた者たちだ。
○これは、イスラム教の人には見せられないだろうな~。

・「お前の心を照らす光が来るまでは、強いて 分かろう とはしないことだ。」

・人間を支える最も基本的な力 1)希望をもつこと 2)信じること 3)愛すること

・「君たちはいつでも、どうして?とすぐに理由を求めようとする。訳が分かったら、それでどうだというのだ。」
○と言われても、やっぱり理由、訳を求めたい。納得したいから。

・ダンテは、個人的な力とともに、他者の力、関係性の力というものを、非常に重要視している。

・「全ての形が仮のものにすぎないことを」

●新装版「ドレの神曲」によせて 谷口江里也

・「私」を構成しているものの大半は、過去の賜物。

・「神曲」は、ヨーロッパの社会的状況と価値観に風穴を開けた。
・ギリシャ、ローマ的な自由で理知的な思考方法、女神礼賛に象徴される、女性美や人間美を高く評価する意志と美意識によって、ルネサンスを喚起した。

・ドレは、版画により、古典文学の世界を、庶民により近いものにした。
○今年(2025年)の大河ドラマの主役 蔦屋重三郎にも通じる。

===

○日本で「地獄」について描かれた絵本や紙芝居

『地獄』

『じごくのそうべえ』

『じごくのラーメンや』

『くものいと』

○やっぱり「地獄」が多い。「天国」は、刺激が少ないから?

===

投稿者:関根雅泰

コメントフォーム

ページトップに戻る