【木曜日23-04】「廃業」文献(2)

木曜日

【木曜日23-04】「廃業」文献(2)

○小規模企業、自営業者の「廃業」に関する文献等。(論文11本)

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深沼・井上(2006)再生型創業の実態ー廃止部門・廃業企業の従業員による創業

・再生型創業は、より小さな企業から数多く誕生している。
・開業率が低い業種(卸売業、製造業、建設業)で、再生型創業の割合が高くなる。

・経営資源の引き継ぎがない再生型創業のパフォーマンスは、引き継ぎがある再生型創業や、通常型創業と比べて、かなり劣っている。
・経営資源の引き継ぎがあったほうが、経営のパフォーマンスが良い。
・岡村(2005)は、販売先からの支援の数や多様性は、パフォーマンスにプラスに作用することを示している。

○この文献、読んでた。『日本の新規開業企業』第5章。

・何らかの引き継ぎがある場合は、ない場合に比べて、2倍以上採算が黒字になりやすい。

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DeTienne,D.R.(2010) Entrepreneurial exit as a critical component of the entrepreneurial process: Theoretical development.

・Entrepreneurial exit 起業家的退出
・Exit strategy 出口戦略

・Founder of privately held firms 民間企業の創業者
・Publicly traded firms 株式公開企業

・起業家の退出については、あまり知られていない。
・研究者もこの現象について、少しのことしかわかってない(King,2002)

・Cardon et al.(2005)は、起業家プロセスを、Parenting育児に例えている。
・本稿もこの例えを使いたい。
・育児の段階(懐妊、幼児、思春期、成熟期)によって、退出の理由や選択肢も変わってくる。

○Cardon et al.(2005)も読んでみよう。

・Small business founders小企業の創業社長 と、Entrepreneurial founders起業家的創業者は違う。
・半分の起業家的創業者は、退出戦略を頭に入れたうえで、創業すると言われている(Inc.Magazine Online 2005)

・退出の原因は、3つの力である。
 1)Alternative forces ほかの選択肢
 2)Calculative forces 打算・計算
 3)Normative forces 規範 家族や友人からの期待

・退出の選択肢
 1)Failure 失敗 2)Voluntary disbanding 自発的解散

・Lifestyle ventures ライフスタイル起業家とGrowth ventures成長・拡大型ベンチャーでは、違う。

・起業家的退出は、起業家プロセスの重要な一部である。

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DeTienne,D.R.& Cardon,M.S.(2012) Impact of founder experience on exit intensions.

・これまで、起業家が事業をやめるときは、業績が悪いからだと言われてきた(Wennberg et al.2009)
・そのやめ方も、親族承継か、IPOしか取り上げられてこなかった。

・ファミリー企業は、2代目、3代目まで継続する企業が少ない(Lee et al.2003)

・しかし、entrpreneurial exits 起業家の退出には、複数の選択肢がある。
・我々は、6つの退出の道 exit path を検証したい。
 1)IPO 2)Acquisition 買収 3)family succession 家族承継 4)employee buyout 従業員による買取 5)independent sale 独自の売り出し 6)liquidation 清算

・Threshold theory
・Theory of planned behavior

・4つの仮説
 1)起業家としての経験 2)年齢 3)学歴 4)業界経験 が、退出の道 選択にどう影響するか。

・35名の創業者にインタビュー
・質問紙調査 128名から回答を得た。

・Harvesting/Existing strategies

・1)起業家経験は、IPOに正の効果を示した。買収にも一部の効果。
 2)年齢は、清算に正の効果。
 3)学歴は、IPOと買収に正の効果
 4)業界経験は、従業員による買取に正の効果

・これらの効果は、小企業(従業員5名未満)のほうにより顕著にみられた。

・5年後に追跡調査を行った。
・128名の起業家の内、69名(55%)が事業を継続、33名(26%)が退出、24名(19%)が消えた。
・退出した33名の内、6名(18%)がIPO、14名(42%)が買収、10名(30%)が清算、2名(6%)が独自の売り出し、1名(3%)が、従業員による買取であった。

・70%は、自分が選択した通りの退出の道を選んでいた。

・退出の道の選び方は、起業家の過去の経験によって違っていた。

・年齢は、家族継承と清算に、強く関係していた。これらの選択肢は、リスクが低いものとみられるからであろう。
・起業家経験のある人ほど、清算という選択肢を選ばなかった。清算を拒否するのかもしれない。
・教育は、起業家にとって多大な影響を及ぼす。
・退出の仕方は、教えることができる。事業計画の書き方を教えるように。

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井上(2017)中小企業における経営資源の引き継ぎの実態

・事業を整理して廃業する際に受けられる支援策は少ない。
・数少ない廃業を支援する制度の一つに、小規模企業共済がある。

○俺も、奥さんと一緒に積み立ててる。https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/ 

 あと、法人としては、中小企業倒産防止共済(経営セーフティー共済)も。https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/ 

・経営者が引退すると廃業してしまうケースが多い。

・深沼・井上(2006)を参照すると、円滑な廃業を支援する方策としては、取引ネットワークをはじめとする経営資源の他社への引き継ぎをサポートすることが考えられる。

・必ずしも事業主体の継続・承継にはこだわらず、個々の経営資源の引き継ぎを支援することも重要な政策課題となるだろう。
・引き継ぎ=他社に経営資源を活用してもらうこと

・譲り渡す側と、譲り受ける側、双方へのアンケートを実施。
・規模の大きい企業ほど、譲り渡した割合が高い。経営資源の引き継ぎも、規模の小さい企業では行われにくいようである。

・譲り渡し企業のほうが、業歴が長く、業況が良い。

・B2Bの事業では、販売先、受注先を引き継ぎやすい。

・譲り渡した相手は「同業種」が最も多い。

・男性と女性で、譲り渡しが行われる確率に違いはない。
・以前は事業を承継させたいと考えていた経営者は、経営資源を譲り渡す確率が高い。

・製造業と教育、学習支援業は、卸売業と比べて、譲り渡しが行われにくい。

・譲り渡してよかったこと

・譲り受けてよかったこと

・経営資源の譲り渡しのほうが抵抗感は小さいようである。
・経営資源の譲り渡しは、事業全体を譲る場合より、取り組みやすいと言えるだろう。

・廃業した企業の約3割が、経営資源を譲り渡している。
・既存企業の1割強にあたる約43万社が、経営資源を譲り受けている。

・経営資源の引き継ぎを支援することは、政策的に意味のある取り組みだと言えるだろう。
・廃業によって失われる経営資源が少なくなり、引き継いだ企業の成長が今以上に期待できるからである。

・廃業に際して、部分的に経営資源を譲り渡すことであれば、より多くの経営者に受け入れられる余地があると思われる。

○これいいな~。「経営資源の一部 譲り渡し」 まさに、比企起業大学でも大事にしている「分度を稼いで、余剰を推譲」の精神にもつながる。俺もこれを目指そう。自社の廃業時に、譲り渡せる相手と、譲り渡せる経営資源を持っておこう。

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井上(2018)経営資源の譲り渡しを支援して廃業時の課題を解決する

・廃業によって失われるはずだった経営資源が、他社によって再活用されることは、地域経済にとってもかつよく維持や活性化の観点から意義がある。

・2017年1月にアンケートを実施。

・譲り渡しの満足度は、対価の有無とはあまり関係はない。
・約75%が何らかの点で良かったことがあったと回答。

・経営資源の譲り渡しは、円滑な廃業を行う上で有用。

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藤野・天達(2017)なぜファミリービジネスを継がないのか?~学生の事業承継意識を通じた大学の役割の探求

・潜在承継学生の実態を把握する質問紙調査を実施。
・潜在承継学生が、110名(23.7%)承継候補学生は、25名(5.4%)
・潜在承継学生の約8割が「事業を継がない」と答えている。

・商店の衰退には、3つの敵が関係する(石井1996) 1)外の敵 2)内の敵 3)内内の敵(家族制度)
・家族という安く、意のままになる人的資源が、家業を支えてきた(笹川2007)
・「家商分離」は、商人が普通のサラリーマンのような暮らしをしたいと思ったことに始まった(石井1996)

・父親が知られた存在。経済団体での関係性の煩わしさ。それが承継をためらう最大の理由。
・複数の閉鎖的ネットワークに埋め込まれている。

・世代間を架橋する仲介者としての大学。

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早崎・杉澤(2018)長寿企業の後継者の視点による先代経営者の経営姿勢・生き方の承継プロセス

・長寿企業(100年以上)で、10年以内に、事業承継した後継者を対象に、M-GTAで分析。
・どの先代も、教え込んだり、理論を説明したりはしていなかった。

・家族内の規範を文化的資本ととらえ、規範も継承すべき経営者能力とした(野間口2012)
・文化的資本として、「繁盛している心象風景」も承継に貢献していた。

・距離を置き、手取り足取りの指導ではなかった。徹底した自己学習・自己鍛錬による暗黙知の習得をするよう仕向けられていた。

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佐竹(2019)中小企業及び小規模事業者の事業承継における課題と対応~承継者難への対応と持続可能な地域づくり

・血族親族のみからの事業承継者の確保が困難となり、廃業につながる事例が全国で多くみられる。

・社外への承継では、「事業の一部」の承継の割合がやや高い。

・倒産企業経営者と成功企業経営者のパーソナリティについては、対照性があるとし、主体的・先天的な特定のパーソナリティ特性の存在を、ある程度認めざるを得ないという結果を示している(戸田1984)

○この戸田(1984)「企業倒産の予防戦略」 読んでみよう!

・日本的経営を承継していくうえで、事業承継には「系譜性」が最優先される要素であるとの解釈が可能。
・ヒトを最重要視する経営としての日本的経営

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安田(2020)経営者は本当に事業承継を望んでいるのかー創業経営者と承継経営者の意識の違いの調査分析

○この問い、秀逸!

・廃業者の廃業動機は、経済的行き詰まり等ではない。
・「当初から自分の代限りでやめようと考えていた」というのは、はったりや強がりで片づけられるものではない。
・廃業予定企業では、金融機関からの借入の有無が、23.2%と低い。

・既成概念である「廃業=事業不振」という考え方は再考の余地がある。

○ほんとそうだよな~。「廃業」ってやっぱり表立って言いづらい。何かいい言葉があるといいな~。「引き継ぎ」「事業の一部承継」?

・当初から自主廃業型の経営者にとって、事業承継施策は必要ではないのかもしれない。

・2019年3月~4月に、Web調査を実施。

・より高次の教育を受けている者は、高い幸福感を示した。
・望んで、就労の機会が得られることによる幸福感は、女性の場合、男性に比べて大きいのかもしれない。

・経営者はおしなべて、給与所得者に比べ、幸福感が強い。
・事業の選択の自由、裁量権の広さや仕事が完遂した時の達成感、高揚感等が、負荷を凌ぐものがあるということであろう。

・経営者は、仕事、金銭、生活等の面で、給与所得者に比べて肯定感が高かった。
・自分で事業を始めた者の「継がせたい」感は、給与所得者の場合と違いがなかった。

・子供は同じようにさせても、自分と同じような状況になるとは限らない。
・自分の能力であれば可能だったが、子供では同じようにふるまうことは無理であろうと考えている。

・経営者は、自身の仕事に対する肯定感が強いが、承継経営者と違い、創業経営者は、自身の事業を子孫に継がせたいと思っているわけではない。

・事業承継については、これが何をもたらすのか、それが注目される割には、研究が進んでいな分野である。

○この先生、なんかいいな~。ほかの文献も読んでみよう。編著されていた「日本の新規開業企業」は読んでた。

http://ris.toyo.ac.jp/profile/ja.613b5b89418c5cadc887417154fff654.html?mode=pc

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井上・高木(2020)経営者の事情を理由とする廃業の実態と必要な支援策

・廃業は、退出の一形態。
・公的年金の取得は、非農業の自営業においては、引退を促進させる。(65歳)

・無理に承継しないほうが、経営者個人にとっても、取引先にとっても幸せなケースもある。

・2019年10月に「廃業調査」を実施。

・経営者が引退を意識するようになる年齢が、45歳前後と考えられる。
・46歳を境に「廃業予定企業」の割合が、「時期尚早起業」の割合を上回る。

○俺も51歳。今まさに今後の「廃業=事業の一部承継・引き継ぎ」を意識し始めている。きっかけの一つは、「八起会」の竹花先生の言葉「倒産はさせない。ソフトランディングとしての廃業。」

●参考:竹花先生の講義 https://yaokikai.com/takehana.html

・「経営者の事情」が最も大きな廃業の理由。
・廃業を決めたときの年齢の平均は、57.6歳。
・廃業時の年齢平均は、58.5歳。
・廃業を決めて、1年未満で廃業している。

・「専門・技術サービス、学術研究」が、15.4%と最も多い。

・年商は、廃業前の1年間が、平均1,332万円。
・最も多かった時期の平均3.780万円の半分以下。

・「後継者を探すことなく事業をやめた」が、93.4%と大半。
・技術、技能、感性、個性、人脈は、経営者個人に備わったものであり、他者にそのまま引き継がせるのは困難。

・廃業を決めた後は、徐々に事業を小さくして、ソフトランディングを図っている。
・事業規模を縮小する方法の一つに、経営資源の引き継ぎがある。他社や開業予定者に譲り渡すこと。

・元経営者の大半は、資産を残して廃業できている。
・廃業に対する自己評価は、総じて良好である。9割超が、円滑に廃業できたと回答。

・今の時代は、債務を残すことなく事業を終えられれば、それでまずまずということなのかもしれない。
・元経営者は、おおむね廃業後の生活に満足している。ただ、生きがいは、経営していた時より低下している。

・事業規模が小さいことは、経営者個人に依存した事業モデルから脱却しなかったということである。
・規模が小さいからこそ、あるいは規模を小さくすることで、関係者に迷惑をかけることなく、廃業できるといえる。

・社会全体として、廃業に対する理解を深め、ネガティブな見方をなくしていくことが何より重要。

○ほんとそうだよな~。比企起業大学のモットーである「小さく始めて、大きくせずに、長く続ける」に、「小さく始めて、大きくせずに、長く続けて、次に引き継ぐ(=廃業・事業の一部承継)」をプラスしても良いかも。

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加藤(2021)小規模事業者に対する事業承継支援の必要性

・中小企業の2025年問題。大廃業時代の到来。

・2011年度から各都道府県に設置された「事業引き継ぎ支援センター」
https://shoukei.smrj.go.jp/  埼玉県 https://www.3192shoukei.jp/

・廃業とは、事業を閉めること。
・債務超過の場合、廃業はできない。

・黒字のまま、廃業を選択する中小企業の数が、高水準で推移。

・資本金1億円以下の企業の96.7%が同族会社(ファミリービジネス)

・羽衣文具(チョーク)2015年に廃業。
https://business.nikkei.com/article/NBD/20141222/275473/#:~:text=%E5%89%B5%E6%A5%AD82%E5%B9%B4%E3%81%AE%E8%80%81%E8%88%97,%E5%90%8C%E6%A5%AD%E8%80%85%E3%81%B8%E8%AD%B2%E6%B8%A1%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82

・岡野工業(痛くない注射針)2020年に廃業。
https://lovely-lovely.net/business/inheritance-tax/

・2025年問題の顕在化を防ぐには「関係性」と「企業価値の見える化」が重要であると考える。

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投稿者:関根雅泰

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