【木曜日23-03】「廃業」文献(1)

木曜日

【木曜日23-03】「廃業」文献(1)

○小規模企業、自営業者の「廃業」等に関する文献。(論文12本)

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原田(2005)小規模企業の退出

・企業の退出(Exit)は、ミクロ経済学および産業組織論の文脈において研究されてきた。
・そこでの考え方は、市場からの退出は、起業の利益がある水準以下に低下した場合に生じるというものである。(例:Jovanovic,1982)

・労働経済学分野に属する「自営業 self-employment」研究とも関心が重なる。
・労働力調査の「自営業主」は、個人経営の事業を営んでいる者と定義され、会社の役員は含まれず、内職従事者が含まれる。

・小規模企業共済。退職金積み立て制度。
○うちも奥さんと一緒に積み立ててる。

・小規模企業においては「倒産」という事象自体がもともと起こりにくい。
・倒産は一般的には、次のいずれかに該当する場合である:
 1)銀行取引停止処分を受ける 2)裁判所に会社更生法の適用を申請する 3)商法による会社整理の適用を申請する 4)民事再生法の手続き開始を申請する 5)破産を申請する 6)特別清算の開始を申請する 7)債権者との協議に基づき私的整理を行う 
○俺の理解だと「借金ありが倒産」「借金なしが廃業」

・2003年11月の調査結果を分析。
・経営者が男性で、年齢が若く、借り入れがあり、売り上げが減少傾向にある場合、経済的退出が生じている。
・非経済的退出のケースが、約6割。

・7割は、金融機関からの借り入れなしで事業を行っていた。
・経営者の自由意志で企業の存続、退出を決定したい場合は、極力金融機関からの借り入れは避けるべきである。

・日本の企業の9割近くは、小規模企業、2/3は、個人企業である。

・どのような幕引きをするか。
・起業のリスク(および労力)とリターンが、人生全体のレベルの総合的な単位で、どの程度見合い得るのか。
・次の世代の「健全な」潜在的企業家層の形成にも大きな役割を果たすと考えられる。

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深沼・井上(2006)小企業経営者の引退と廃業-取引ネットワーク引き継ぎの有効性

・2000年度から2002年度に、小規模企業共済制度の共済金を、受け取った元経営者に、アンケートを実施。

・経営者の引退イコール廃業となる確率が極めて高い。
・経営者自身がコア人材であり、その人が引退することで、事業の価値そのものが失われるケースが多い。

図 従業員規模と廃業割合

・小企業にはなじまないM&A

・廃業する小企業が多い割には、その影響はそれほど大きくないようにも感じられる。
・引退する経営者の多くが、販売先、受注先、仕入先、外注委託先、販売委託先など、外部の企業や消費者との取引ネットワークを、同業者や従業員に意識的に引き継がせている。

図 取引ネットワーク

・小企業の持つ経営資源の中から、取引ネットワークのみを分離することで、引継ぎ側の金銭の負担は大幅に軽減されている。

図 引き継がれやすい取引ネットワーク

・後継者問題やM&Aによる「事業全体」の譲渡に比べて、「事業の一部分」の譲渡ともいえる「取引ネットワークの引き継ぎ」は、これまであまり注目されていなかった。

○ここもっと調べてみよう!俺も会社を終わらせる時は、おそらくこの「取引ネットワークの引き継ぎ」をしていくと思う! 小規模企業、個人事業主にとって「事業承継」や「M&A」よりよっぽど現実的な「事業の終わらせ方」だと思う。

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井上(2008)小企業における事業承継の現状と課題

・2007年8月に調査を実施。

・経営者の年齢が50歳以上の小企業を、3つに分類:
 1)承継決定企業 38.6% 2)承継未定企業 33.3% 3)廃業予定企業 24.6%

○俺も「廃業予定」と答えるだろうな。

・廃業予定企業では「個人が」69.1%を占めており「法人」は、30.9%にすぎない。

図 従業員規模

・廃業予定企業は、規模が小さく、業績も良くない企業が多い。

・承継決定企業と承継未定企業の大きな違いは、「男の子供の数」ということである。

・事業者として得られる収入は、雇用者の収入を下回っている。
・製造業における事業者対雇用者収入比率(自営業者の年収/雇用者の年収)は、1975年の1.5から、2005年は、0.6となっている。

・廃業理由「当初から自分の代でやめようと考えていた」が、最も高く、37.9%。

図 廃業理由

・元気なうちは働き続けようと考えている。

図 廃業する時期

・小企業に限定すると、承継未定企業に対する支援策は、今の所活発に行われているとはいえないだろう。

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津島(2016)中小企業の事業継承と廃業-廃業リスクを回避するために

・欧米の先進的な研究では、中小企業の経営者が退出する方向を、6つに分類:
 1)新規上場(IPO) 2)買収(Acquisition) 3)従業員への売却(Employee buyout) 4)親族承継(Family succession) 5)自主的売却(Independent sale) 6)清算(Liquidation)

・自主的売却は、アメリカで一般的な企業の売買である。クリーニング、印刷、酒類などあらゆる業種で売買を、ビジネスブローカーが取り扱っている。

○この6つだと「取引ネットワークの引き継ぎ」は入ってないのかな? 自主的売却で、全部の事業譲渡ではなく、一部を譲渡するとか? それでなければ、清算(=廃業?)に入っちゃうのかな。

・退出ルートが、多様に発達している背景には、欧米の経営者に「収穫 Harvest」という概念が定着しているからだと言われている。

・成長した後の清算は、必ずしも失敗とはならない。清算は、全てが失敗をした廃業を意味するものではない(DeTienne & Cardan,2012)。
・出口戦略によって、多くの企業が成功して廃業できるのである。

○DeTienne&Cardan(2012)は、読んでみよう!

・日本の企業の退出としては、主要なものが「休廃業・解散」であり、これらが「倒産」の倍以上の水準で推移している。

・低い生産性の企業は、早く廃業に追い込む必要があるという主張もある。
・企業を廃業させても、経営者を破産させずに再起させようとする取り組みが模索されている。

・廃業数は、景気変動の影響をあまり受けないが、特に地方圏より、大都市圏において多い。

・全廃業に占める「自発的廃業」の割合は、約4割であり、日本でも、廃業はすなわち倒産という退出の失敗を意味してはいない。

・中小企業白書(2014)では、事業承継を「親族継承」「内部昇格」「外部招聘」「買収」に分類。

・日本では「収穫概念」をもった経営者が少ないので、出口戦略を立てる経営者も少ない。

・起業家教育は必要だが、これまでの所、日本の起業家教育が後継者不在企業を減らすことに貢献できていないのが実情である。

・主要業務の一部を委任して経験を積ませることが優先されないと、廃業等は防止できず、事業承継が増えない。

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村上(2017)中小企業の事業承継の実態と課題

・経営者の4割以上が、65歳以上に達している。

・廃業予定企業は、「個人企業」の割合が、68.4%と高い。
・廃業予定企業は、「専門・技術サービス業」の割合が、16.5%と、他と比べて高い。

・自分自身が創業者として始めた企業であれば、廃業するという決断も下しやすい。

図 廃業予定企業 従業員規模

図 売上

○廃業に向けて、徐々に売上を減らしていくこともできる。銀行からの借入は完済しておく。

・廃業予定時期の平均年齢は、71.1歳である。

・廃業予定企業は、緩やかに市場から退出することもあり、社会的には大きな問題は生じないと考えられる。

・男の子供の多寡が、事業承継の決定状況を左右している。
・事業承継に対する支援策を必要とするのは、決定企業よりも、むしろ未定企業である。

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石川(2018)大廃業時代の到来と政策的対応ー第三者承継を中心に据えた政策展開における課題

・政府は、2011年以降、親族による事業承継の推進から、従業員を含めた第三者承継を視野に入れた事業承継活動へと明確に舵を切った。

・廃業した事業者のうち、40%超が、経常黒字や資産超過状態であったため、廃業の原因を、経営実態の悪化を第一と考えることはできない。

・廃業予定企業は、個人企業の割合が高く、1~4人の従業員規模が、83.3%を占めている。業種構成比では、「専門・技術サービス業」の割合が高い。(日本政策金融公庫総合研究所2016)

・廃業前に、金の問題は片づけておきたいという意識。
・経営者が廃業を視野に入れているために、レームダックになる現象。

・超小規模M&A。伝統工芸品などの産業における個人事業主を対象。
・業種により承継のしやすさ、しにくさというのが存在するだろう。
・ノウハウや技術というのは、承継させるために時間がかかる。

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内田・郭(2019)廃業者の属性と現況ー起業継続者・非継続者の比較から

・起業が失敗した際の状況を明らかにする研究はほとんど行われていない。
・廃業後の起業家の状況を詳しく扱った研究は、本稿が初めてである。

・2017年に行ったインターネット調査。対象は、自営業と自由業(フリーランス)
・起業継続者は、1052人で72.6%。廃業者は、397人で27.4%であった。

・調査結果から:
 ー既婚者ほど起業しにくい
 ー子供がいるほど起業しやすい
 ー廃業者あるいは起業継続者は、非起業者よりも、扶養児童を持つ比率が高い。
 ー廃業後に、別の形で起業を行うことは少ない。会社員として雇用されることが多い。
 ー50代以上では、廃業後に、再び起業にチャレンジすることが多い。

・起業者(特に起業継続者)は、特定地域に集中しやすい(例:東京)
・起業の容易さには地域差がある。

・廃業した場合も、雇用の受け皿が存在している。

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宮下(2019)小規模企業における事業主の妻への労働報酬

・全体社会において、小規模企業が安価で仕事を引き受けさせられる仕組みには、事業主家族に対する労働報酬の不認定という問題が埋め込まれている。

・小規模企業が、女性をいかに安価に柔軟に利用し、安価で仕事を提供できてしまう過程。
・全体社会が、小規模企業を通じて、安価な労働力を調達する道筋。

・所得税法第56条の規定では、事業主の家族の労働に対する対価を経費として認めないのである。
・これが、事業主が、事業所得から、労働報酬を家族労働者に分与する動機を失わせてきた。

・法人企業の場合、家族の給与や退職金は経費(損金)として認められる。経営者は、有給で働く家族を厚生年金に加入させる義務がある。
・個人事業の場合、親族への給与も退職金も経費として認められない。国民年金に加入。

・現在の税制度は、事業主家族の報酬を、下方に導いている。
・家族内の権力関係は放置される。

・個人事業のもとでの家族従業は、短期的にも長期的にも、家族や社会から評価されない、無視された労働である。

○著者の怒りが伝わってくる論文。

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石川(2019)小規模事業者における事業承継をめぐる課題と取り組み

・倒産件数の3倍以上になる休廃業・解散件数が発生している。

・大企業では、事業承継は問題とならず、事業承継という言葉も使用されることはほとんどない。
・大企業では、経営者交代は、数年に一度必ず起こる人事異動の一環のためでもある。

・経営者の技術(腕)や経験が、顧客獲得の源泉になっており、引退によって顧客が離れる可能性がある。
・最大の人的資源は、経営者。

・我が国では、起業促進政策に傾倒しすぎていた面もあるかもしれない。
・承継時を中心として、その前後の工程にまで考えを巡らせる必要がある。

・各地域に存在している、見えない「承継文化」とでもいえるような地域状況も考慮する必要あり。
・地域での人的交流により、次第に後継者候補には後継意識が芽生え、承継することが自然な流れになっていくことも多かった。

○ときがわ町の40~50代経営者(2代目、3代目)を見てると、そういう感じを受けるよな~。

・我が国企業の約半分は、個人事業主である。1996年に約350万人存在した個人事業主は、2016年には、約200万人にまで減少した。

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長山(2020)巨大都市東京の小規模事業者-フリーランスの存立基盤に関する一考察

・極論(アトキンソン2019)暴論(富山2020)
・いずれの論者も、日本企業は小さくて数が多い「過小過多」の状況で、過当競争と市場縮小のもと、低生産性問題を抱えているという認識に立つ。

・近年は、ローリスクな「小さな起業」の評価が上がっている。

・なぜかフリーランス(自営業主を含む)といえば、生産性の議論をわきに置いて「多様性のある新しい働き方」の象徴として注目を集める。
・Self-employment自己雇用

・地域密着型フリーランスとして、世田谷区の事例を取り上げる。

・ジェイコブズ(1961)は、異業種中小企業などの密集による「都市の多様性」に注目した。

・小零細企業の特質は生業性にあり、その存立条件は、自家労働力の商品化による「強さと弱さ」「非合理性の中の合理性」にある。(三井1981)

・自営業主のうち「雇無業主」は、いわゆる「自己雇用 Self-employment」と同義といえる。
・自営業主の数が減少し続けている日本(OECD加盟国)は特異である。

・自営業主とは、失業者と雇用者の中間といえる。

・広義のフリーランスは、1,087万人(2019)存在。
・フリーエージェントは「フリーランス」「臨時社員」「ミニ起業家」といった雇用主と被雇用者に線引きできない人々、雇用主でもあり被雇用者でもある人々をさす。

・フリーランスの分類:
 1)事業者からの業務委託で働く者(デザイナー、SE、ライター等)
 2)消費者からの作業依頼で働く者(個人と契約する家庭教師、家事代行など)
 3)事業者向けに委託以外の自由な形態で働く者(カメラマン、ジャーナリストなど)
 4)消費者向けに委託以外で働く者(Eコマース、ハンドメイドなど)

・世田谷区の起業家実態調査(2019)を実施し、地域密着型のコミュニティビジネスの存在感が大きく、女性起業家とフリーランスがその担い手となっている点を確認できた。
・インフォーマルな起業学習の輪が広がる。
・コワーキングスペースなど「サードプレイス」の調査が、実態を把握する手掛かりになるかもしれない。

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三井・長山(2020)日本の中小企業研究・学会の国際化の道を拓く「第三世代」学術的リーダーの使命感

・1980年代半ば、世界中で、中小企業(Small and Medium-sized Enterprise)に関心が高まっていた。
・それとつながっていたのが、日本的経営Japanes Managementへの関心。

・イギリスで見た創業支援政策は、失業者を職につけるという雇用面での意味が大きかった。

・中小企業の研究は、よい意味での「雑学」。現実にある実態そのもの。

・1963年の中小企業基本法制定時、「二重構造論」があり、「過小過多」の改善が叫ばれていた。

・ヨーロッパの小企業憲章には、Think Small First。Listening to Small Businessという言葉がある。
・2010年に、日本版の中小企業憲章が閣議決定された。
・2014年に、小規模企業振興基本法が制定。

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岡本(2021)非経済的要因に基づく小規模企業の廃業

・経営者には3つの選択肢がある:
 1)親族あるいは従業員への「事業承継」
 2)事業の譲渡・売却・統合(M&A)
 3)廃業

・廃業理由:
 1)経済的要因(利益水準の低さ、労総生産性の低さ)
 2)非経済的要因
   ー後継者の確保ができないケース
   ー経営者が「自分の代限りで、事業をやめよう」と考えているケース

・「創業経営者」

・創業経営者の企業のほうが、業績が良い。

・「中小企業の事業承継に関するアンケート調査2009」から抽出したデータを分析。

・業績に優れた企業の場合、自分の代限りでの廃業を経営者が望む傾向がある。
・創業経営者には、自分の代で廃業したいと考える傾向が自然に備わっているとみてよいだろう。

・創業経営者については、諸要因をコントロールしても、自分の代での廃業を選択する傾向があることが分かった。
・自ら創業した事業に求められる技術、技能、感性、個性、人脈などを他者に引き継がせることは難しいと考えているのかもしれない。

○この研究は救われる。廃業というと、経営実力がないから(経済的理由で)廃業すると見られがち。でも実は、業績もよい創業経営者だからこそ、自分と同じような経営実力を持つとは限らない他者に、引き継ぐ難しさを自覚し、身を引いていると考えることもできる。俺もその道を目指したいな~。

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投稿者:関根雅泰

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