コーチング&リーダーシップ開発研究会①

東大大学院

2016年1月21日(木)10時~17時@東大 本郷キャンパス
中原先生たちと、主に「Coaching」にまつわる文献34本を読みます。
https://www.learn-well.com/blog/2015/11/post_451.html
今回は、第1回目、10本の文献を共有します。
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(・要約 -研究会で出た意見)
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Toward a Conceptual Understanding and Definition of Executive Coaching
R. Kilburg (1996)
・エグゼクティブコーチングを定義するために、先行研究をレビュー。
・アスリートのパフォーマンス向上や、子供の問題行動を変化させる手法として
 のコーチング研究は存在する。
・マネジャーまたはリーダーをコーチとして扱う文献が、1980年代~1990年代に
 かけて増えた。
・Kilburg(1995)の17要素モデル
・Weinberger(1995)のエグゼクティブコーチング介入の5要素
・エグゼクティブコーチングの主要なゴール7つ
・コーチング手法と技術27個のリスト
・否定的な結果につながりかねない要素
・コーチングは、忙しいマネジャーを強制的に内省させる機会となる。
・エグゼクティブコーチングの定義:
 クライアントとコンサルタントとの間にある支援的関係(詳細略)
-研究は、エグゼクティブコーチングに関するものがほとんど。
-ミドル(部長)に対するコーチングを実施している企業もある
 組織変革の一手段として。
-ミドルと経営陣だと、コーチングへのスポンサーの期待も違う。
-個人の能力開発、組織のパワーアップ、どちらに焦点をあてるか。
 個人の能力開発だと、リーダーシップ開発につながりやすい。
 組織のパワーアップだと、ODと呼ばれる。
 
-経営学は、人を信じていない。人よりも、仕組みに投資する傾向がある。
 Human potential movementとは、対立する考え方。
-「声がでかい副社長」にコーチングし、個人の行動を変えるのも大事だが
 「他が発言しない」という組織への働きかけもあり。
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Assessing the Influence of Managerial Coaching on Employee Outcomes
S. Kim (2014)
・マネジャーによる部下へのコーチングの効果について、234名の韓国人
 従業員に対して質問紙調査を実施。
・マネジャーによるコーチングが、従業員の役割明確化、職務満足に直接
 効果をもたらし、職務パフォーマンス等に対して間接効果を示した。
 Fig.1
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・マネジャーによるコーチングの効果を実証する研究となった。
・パス-ゴール リーダーシップ理論と、組織支援理論の2つを援用。
・「コーチとしてのマネジャー」は、実務家向け文献では数多く謳われてきたが
 実証研究はほとんどなかった。
-Executive coaching 外部コンサルが行う
 Developmental coaching 上司が部下に対して行う
-コーチング的な振る舞いを上司が行うことが、どんな影響をもたらすのか
-韓国というヒエラルキーが強い社会という影響もあるかも。
 上意下達な韓国。背中を見て盗めという日本。
-Role clarity だと「Job description」の明確化と、
 マネジャーによる「役割期待」という二つが入るのでは。
-専門家モデルからの脱却(プロのコーチによるものから)
 素人のマネジャーによるdevelopmental coachingのほうが効果が高い
 と考える。
-developmental coaching は、部下指導とほぼ同じ。
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Evaluating leadership coaching: a review and integrated framework
K.Ely et al. (2010)
・リーダーシップコーチングの評価について、49の文献をレビュー。
 クライアントの行動変化の自己評価が最も多い評価方法であった。
・リーダーシップコーチングには、他のリーダーシップ開発とは違う独特の
 特徴がある。それは、1対1の関係の中で、それぞれのクライアントの
 ニーズに合わせた介入がなされているという点である。
 よりカスタマイズされた個人的なものであると言える。
・Summative 総括的評価として、カークパトリックの4分類が使える。
 Evaluative 形成的評価では、クライアント、コーチ、関係性、
 プロセスの観点を見る。
・49の文献をレビューした結果、クライアントの行動変化を、コーチング後に、
 自己評価させる評価方法が最も多かった。
・今後は、自己評価以外の他者評価、多層的観点から成果を評価、
 遠位の成果も評価すべきである。
-カークパトリックモデルを、コーチングの評価に使うのは違和感ある。
-某社では、形成的評価のみ。形骸化しないよう、コーチングの質を高める
 改善のため。効果の明示ではなく。
-コーチングはやっている過程がブラックボックス。
 機密性があるので、安心感があるので、行動変容に結びつきやすい。
-コーチングには、密室性(何がなされているか分からない)と、
 対人性(人によって質が変わる)がある。
-企業では「成功しました」「効果がありました」といわざるを得ない
-測っても測っても上手くいかない。例:データが上ぶれする。
 人の評価は不安定。
コーチングの「密室性」と「対人性」
http://www.nakahara-lab.net/blog/2016/01/post_2547.html
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A Quasi-experimental Study on Management Coaching Effectiveness
W. Evers et al. (2006)
・政府における60名のマネジャーを2グループに分けて準実験を実施。
 1グループはコーチングプログラムを実施。もう一グループは何もせず。
 コーチングプログラム前(T1)と、4ヶ月後(T2)を比較。
 コーチンググループは2つの変数において顕著に高い結果が出た。
-コーチとクライアントは対等。メンターはプロティジェに対する先生。
-2000年半ばごろから「バランスよく」という考え方がリーダーシップに
 出てきたように思う。仕事だけではなく、人間的に。
 リーダーがバーンアウトしないよう。
-アメリカは、OB、心理学、量的
 ヨーロッパは、ポストモダン、質的
 アメリカは、pragmatism 道具的。役に立つから良いと考える。
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The performance effects of coaching:
a multilevel analysis using hierarchical linear modeling
R. Agarwal et al. (2009)
・経営マネジャーのコーチングが、中間マネジャーのパフォーマンスに影響し、
 中間マネジャーのコーチングが、営業担当者のパフォーマンスに影響していた。
・コーチングは、職務満足と業績の関係には影響していなかった。
Fig3
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-コーチングとメンタリングの違いは?
-エグゼクティブとミドルは、日常の接点が少ないから
 モデリングもできないのでは
-本来は、上がコーチングすれば、ミドルも下にコーチングしてくれるのでは
  というH4を期待したが、出なかった。
-ミドルがちゃんとコーチングしているかを、上にコーチングしてくれ
  という形にすれば変わったのでは。
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Coaching at the Heart of Managerial Effectiveness:
A Cross-cultural study of managerial behaviors
R. Hamlin et al. (2006)
・Ellinger(1997)、Beattie(2002)、Hamlin(2004)を比較。
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Coaching SME managers: business development or personal therapy?
A mixed methods study
D. Gray et al. (2011)
・中小企業におけるコーチングの影響を調査。
 コーチングは、個人の特質(自己認知の管理、自己感情の管理)には
 影響していたが、ビジネス的な特質には影響していなかった。
 厳しい競争環境にある中小企業といえども、コーチングはビジネス能力と
 いうより、個人的、セラピー的な介入であった。
・回答者の多くが、コーチングは、教室でのマネジメント開発
 プログラムよりも効果的で、便利はオプションとしてみていた。
・また、メンタリングも重要という結果がでた。
 メンターは組織の中のことをよく分かっている。
・治療資格のあるコーチのほうが、資格の無いコーチよりも好まれていた。
-コーチングにおいては、自ら受けたいと思うクライアント、あるいは
 指名で受けさせるスポンサーの意図が重要。
-ビジネス開発とパーソナルセラピーの二つは、コーチングについて回る。
 コーチングのルーツは、マズローの人間の可能性ムーブメントに遡れる。
 人は内に成長する芽を持つと考える。セラピー的。
 1960年代、目標達成の手段として、コーチングが扱われるようになった。
 ここから、コーチングの矛盾が始まるのでは。
-コーチングは、学術的には怪しく見られているかも。
 例えば、AOMでは、コーチングという言葉は使わず、
 developmental network や mentoring relationship等で表現されている。
 マズローも、アドラーも心理学的には異端。
-実際に経営者としてコーチングを受けている人の感想としては、
 「タスク管理」「質問による内省」
 「吐き出しによる精神衛生維持」があるかも
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Implementation Intentions and Effective Goal Pursuit
P.Gollwitzer & V.Brandstatter (1997)
・3つの実験を実施
・目標意図 Goal intentions:私はXを達成する
 実行意図 Implementation intentions:
  私はZの状況になったら、目標達成のためのYを実行する
・実行意図は、障害を克服するための効果的な自己制御となる
・実行意図を設けると、目標の達成度が高まる。
 実行意図は、目標達成のための行動開始を促進する。
-この状況になったらやる、と決めると、適切なタイミングで
 実施する可能性が高まる。
-イメージ化させる手法は、コーチングでは良く使われる。
-アルコール依存症の患者へ「酒屋さんのネオンを見たら、
 逆に歩け」という指導する。
-コーチングのスモールステップとはちょっと違うかも。
 より無意識の反応への対処かも。
-転移研究の逆戻り予防策も、アル中の研究から始まっている。
 「こういうことが起こりえるよ」と伝える。
-「分かっているのにやってしまう」ので、他のキューを示す。
 「これが見えたら(何も考えずに)これをやれ」
-習慣化している行動、無意識の行動をとめるのに役立つ。
-「あえてやってください」「部下にがんがん叱責してください」
 「その時に、部下がどんな反応をしているか観察して、後で教えて下さい」
 そういう風にメタに見れる人とそうでない人もいる。
-「部下が来たら、5秒間だけ黙って、話を聞いて」
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The Relative Effectiveness of External, Peer, and Self-Coaches
C.Sue-Chan & G.Latham (2004)
・研究1では、外部コーチのほうが、同僚コーチより、高い効果を示した。
 研究2では、外部コーチと自己コーチが、同僚コーチより、高い効果を示した。
-ピアフィードバックは効果があるという研究があったが、今回は
 ピアコーチングは効果がないという研究であった。
 ピアフィードバックではないと、独り立ちがなかなかできないかも。
-何故外部コーチのほうが効果が高かったのか。
 その考察はなされていないが「権威」がカギではないかと述べている。
-クライアントが初心者ほど、authority に頼るのかも。
-創造性が必要なものほど、ピアフィードバックのほうが合うのかも。
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Phases of the Mentor Relationship
K. Kram (1983)
・関根の担当文献 
レジュメを見る
○なんとこの論文は、クラムの本『メンタリング』(2003)で和訳されていた!
  途中で気づいて、ショックでもあり、ラッキーでもあり。
  研究会メンバーには悪いけど、ま、たまにはいいでしょ。少し楽しても。
 「メンタリング 会社の中の発達支援関係」
  https://www.learn-well.com/blog/2009/02/post_217.html
-ストレスの置き方が違うのかも。
 コーチング:目標達成、
 メンタリング:メンタルケア
 カウンセリング:治療
-分離、移行、再結合
-きっちり別れることが大事。
 初期段階からいずれの別れを予告しておく。
-Supporting と Fading
 コーチングは、Supporting が中心かも。
 メンタリングやカウンセリングでは、Fadingも見ている。
-Completion コーチングの関係においても区切りが必要。
 親離れと巣立ち。
「支えるためのコーチング」、そして「別れのコーチング」!?
http://www.nakahara-lab.net/blog/2016/01/post_2546.html

●その他、メンタリング関係のブログ記事
 「新人育成のためのメンター制度構築のポイント」セミナーを実施!
  https://www.learn-well.com/blog/2015/07/post_240.html
 AOM2015 メンタリング関連のセッション
  https://www.learn-well.com/blog/2015/08/aom_5_mentoring_training_development.html
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1回目、終了! 第2回は、2月8日(月)です。

投稿者:関根雅泰

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