日本の若者と雇用 ~OECD若年雇用者レビュー:日本

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日本の若者と雇用 ~OECD若年雇用者レビュー:日本 
 OECD編著 濱口桂一郎監訳 中島ゆり訳

○OECD諸国と比較しての日本の若年労働市場の特徴

(・引用/要約 ○関根の独り言)
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●はじめに
・1990年代初頭までは、学校を離れた者は安定した雇用にすぐに移行し、
 失業の少なさと離職の少なさが日本の若年労働市場の特徴であった。
・終身雇用慣行が一般的な状況で、企業は学校を卒業した新入社員を長期雇用
 するという見通しの下に雇い、新規採用者に集中的な職場内訓練(OJT)を
 提供した。
・この状況は、1990年代の「失われた」10年に急速に変化した。
・2002年からの長期的な経済回復によって若年労働市場に対して若干の緩和が
 生じ、若者の全般的な就職の見通しが改善してきた。
・最初のベビーブーマーが2007年頃に退職し始め、企業は代わりに若い労働者に
 対する受容を増やした。
・労働市場の二重構造(正規、非正規)は拡大
・日本において終身雇用と企業内訓練の重要性が低下したことで、既存の教育
 訓練制度の弱さが顕となった。
・近年ある程度改善しているものの、日本の若年労働市場は深刻な困難を経験した。
 これは他の一部のOECD諸国に見られたものと似ていた。
・ますます複雑になる経営環境によって企業側は長期雇用と企業内訓練から手を
 引くようになった。これは企業ですぐに使えるスキルを若者の身につけさせる
 よう、学校と大学に対して更なる努力を求める引き金をひいた。
・初期教育と職業の結びつきをより密接にすることと、激変する労働市場の要求
 に見合う適切なスキルを若者に身につけさせること(が重要)
●1章 これからの課題
・日本は世界で最も高齢人口の割合が高い国の一つである。労働年齢人口における
 若者(15~24歳)の割合は、1970年代からOECD諸国のなかで最低のレベルと
 なっている。
・全体的な労働年齢人口が縮小していく中で、労働市場に参入する若年労働者の
 数は今後10年減り続けると予想される。
・日本ではNEET率は若い男性よりも女性で高く、高学歴層よりも低学歴層で高い。
・伝統的に日本の若年労働市場は学校を離れた者が卒業後すぐに安定した仕事を
 える割合が高く、離職率が少ないことで知られていた。
・しかしこの状況は1990年代初頭からの不景気に変化した。多くの企業は人材戦略
 を変え、パートタイムや臨時雇用の数を増やす代わりに、新卒者の採用を減らした
・日本では低学歴の若者が非正規雇用で働く可能性が高い。そして雇用格差は、
 若い女性で更に大きい。
・バブルがはじけた1990年代半ばにはフリーターの数は著しく増加した。
・入職時の地位はその後の地位を決める決定的な要因である。
 日本の多くの若者の長期的な雇用上の地位が卒業時に決定される
 最初の労働市場の条件、つまり若者が教育を終えて最初に労働市場に入った時
 の条件が日本ではその後の雇用経験にかなり長く影響することを明らかにした
●2章 教育と訓練
・2006年のPISA調査によると、日本においては生徒の成績に対する社会経済的
 格差の影響が弱い。
・日本においては、後期中等教育(高校)への進学は自動的なものではなく、
 生徒は競争試験に合格する必要がある。これはOECD諸国の中でも極めて特殊な
 選抜システムである
・日本では多くの若者の将来の生活は15歳までに決定すると言われている
・日本の教育制度は年齢にかなり依存しており、すべての若者が同じペースで
 移行することが期待されている。
・PISA調査において女子の成績が相対的に悪かったことが示しているように、
 日本では教育における男女格差が15歳時に既に大きい。
・労働力が高齢化し縮小する中で日本が女性の就業を増加させ人的資源を最大限
 に開発する必要があるなら、大学教育の男女格差を減らすことが重要である
・日本の国公立大学の学費は、OECD諸国のなかで最も高額の国のうちの一つである
・GDPに対する割合としての高等教育への公的支出がOECD諸国の中で最も低いという
 事実
・日本の学生、生徒は在学中に職業経験を行う機会が限られる傾向にある
・OECD諸国における在学中の職業経験に関する多くの文献が、週に適度な時間
 働くことは学校の成績を下げず、若者の将来の労働市場での成果の助けとなる
 ことを明らかにしている。
・日本政府は近年、若者対象の職業訓練が受けられる可能性を高めるため重要な
 施策を導入した。
 2003年の若者自立、挑戦プランに基づき、2004年に日本版デュアルシステムを
 立ち上げた。
 デュアルシステムは、企業が訓練生に十分な場を提供できるかどうかに大きく
 左右されるだろう。
 2008年4月、政府は若者に実際的な職業訓練を提供すると言うより野心的な
 施策を導入した。ジョブカード制度である。
●3章 若年雇用への需要側の障壁に対する取組
・日本政府は2007年の改正雇用対策法によって、募集における年齢制限の禁止を
 導入した。
・日本の若い母親は多くのOECD諸国の母親よりも仕事を続ける上で未だ大きな
 障壁に直面している。
・2004年の規制緩和によって、派遣労働者の数は2000年2月の30万人から、
 2007年には130万人まで増加した。
・フレキシュリティアプローチは、日本にとっていくつもの役立つ指針を含んでいる
 (参照 デンマークの事例 9章)
   https://www.learn-well.com/blog/2009/12/post_311.html
・(フレキシュリティアプローチは)労働者への適切な雇用保障を維持する一方で
 適度に厳格な雇用保護規制は良く設計された失業給付制度、相互義務アプローチ
 の下での求職者の強いアクティベーション(就業促進)、効果的な積極的労働
 市場プログラムへの投資を組み合わせることで、ダイナミックな労働市場を
 作り上げる助けとなる
・日本において、所得の不平等は拡大している。可処分所得に対するジニ係数は、
 1985年から2000年の間に、13%も上昇した。
●4章 積極的労働市場政策と給付
・現在の政策アプローチには深刻な欠陥があるように見える
・日本で未だ広く支持される見方は、若者労働市場の問題が基本的に若者個人の
 意欲(自立心、決意、労働倫理など)の欠如に起因するというものである
・雇用保険への十分な加入期間のない多くの日本の若者は生計を維持するために
 親に依存しているようである
●あとがき
・若者に対するネガティブなイメージが、彼らをサポートする政策に支出を増大
 させることへの抵抗につながることは必至である
・ネオリベラルな市場主義的観点からのセキュリティのない規制緩和は、スキル
 のない若者や不利な立場にある女性を更に貧困のスパイラルに陥落させてしまう
 恐れがある。
 フレキシュリティは現実的なアプローチとして真剣に検討され、丁寧な説明を
 伴って実施させる必要がある。
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投稿者:関根雅泰

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