08年7月31日(木)13時~16時30分
 東京ビッグサイトで開催された「eラーニングワールド2008」で
 「企業人材育成論」という有料講演を聴講してきました。
 
 私の理解の範囲で、印象に残った点をお伝えします。
 (・講演内容 ○関根の独り言)
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 1.13時~14時30分
  「成果につながる企業内人材育成のあり方は?」
    東京大学 大学総合教育研究センター 准教授 中原淳氏
 ・McCallの調査結果 
  「現場での学び」=70% 「研修での学び」=30%
  研修での学びをいかに効果的に行うか。
  現場での学びをいかに支援するか。
  両者を結びつけ、いかにシナジーを生み出すかが大事。
 ・「らせん型HRDモデル」
  1)研修(知識獲得型)
  2)職場での経験学習
  3)研修(内省型)
  4)職場外での学習
  らせん型に規模を大きくしながら展開。
 ○弊社の研修は、「参加型セミナー」を標榜しているから、
  参加者自身が自分の経験を振り返る「内省型」と
  講師からの情報提供および参加者同士の情報共有による「知識獲得型」
  の2つの利点を併せ持っているかも。
 ・学びを「研修室」と「現場」を合わせたトータルなものとしてとらえる。
    現場        → 研修        → 現場
   (レディネスの確保) (知識獲得/知識統合) (知識転移)
   (備える)        (理解・気づく)       (試す)
 ・Brinkerhoff(2006)による調査
  業績向上/ビジネスインパクトにつながる研修の成功要因
  1)研修前 40%(成功に寄与する割合)
   -目的明瞭な状況で現場マネージャーが研修に送り出す
   -適切な人を研修に送る
  2)研修中 20%
   -よくデザインされた教材
   -研修講師の授業のうまさ
  3)研修後 40%
   -マネージャーがトライアウトする場を与える
   -同僚のサポートが得られる
  
 ・「研修中」部分は、教育担当者がコントロールしやすい。
 ○現場マネージャーにいかに研修に絡んでもらうか。ここがやはり課題だ。
 ○教育担当者が現場に多くの人脈をもっていて、
  気楽にマネージャー達と話し合えれば、楽になるだろうな。
 ・職場での学びは、2つある:
  1)経験による学習 2)インフォーマルな知識共有
 ・Kolb(1984)の「経験学習モデル」
   Active Experimentation(業務)→Concrete Experiences(経験)
  →Reflective Observation(振り返り)→Abstract Conceptualization(概念化)→
 ・仕事が忙しくなると「業務→経験」に追われるようになり、
  「ふり返り→概念化」ができなくなる。
 ・「成長/学習」=f(「経験の質」×「経験から学ぶ力」)
  ストレッチ経験や適切なフィードバックを与えるのは、現場のマネージャーや先輩。
  柔軟性やチャレンジ精神は個人のキャラなので、なかなか変わらない。
  現場での経験学習のカギを握るのは、マネージャー。
 ・「ふり返り」と「持論化(概念化)」を一人の努力で行うことは難しい。
  他者とのコミュニケーションが必要。
 ○「学び上手な個人」であれば、質の高い経験を与えられない
  マネージャー、先輩の下にいても、成長/学習できるのでは。
 ○「経験から学ぶ力」を高めるために、研修室でできることは?
  -内省する機会(When)を与える(現場を離れて、自分の活動を振り返る)
  -内省のやり方(How)を教える(PDCAのCheckの仕方を理解させる)
 ○配属後、数ヶ月で行われる「新人フォローアップ研修」の意義は、
  ここにあるのでは。
  「経験から学ぶ力」をつけさせるための研修。
 ○他者(同期、先輩)とのコミュニケーションができる場
  「フォロー研修」を通して、ふり返りと持論化を支援する。
 ・会社によって「人のつながりの強さ」は違う。
  相談したいときに相談できる他者がいる会社と
  そうでない会社がある。
 ・若手一人に対して、多様な背景、経験をもつメンターを複数人アサインする。
  人を育てるというのは、一対一ではなく、ネットワークで行う。
 ○このあと「最近、こんな話を聞きました」というスライドで、
  いきなり私の名前が出てきました。
  「え!」っとびっくりしてみると、下記ブログから引用された
  スライドが2枚でてきました。
   http://www.nakahara-lab.net/blog/2008/07/post_1289.html
   https://www.learn-well.com/blog/2008/06/post_96.html
  
 ・関根さんの意見は面白い。Higginsの発達的ネットワークの発想。
 ○こうやって引用してもらえるのは、とっても嬉しいですね!
  中原先生ありがとうございました!
 ○08年3~7月の間、600名近い参加者と「OJT研修」で
  触れてきた中で、彼ら指導員が「周囲を巻き込んで」
  新人を指導育成している様々な事例が見つかりました。
  そのうちのいくつかを下記ブログでご紹介しています。
 ( OJT担当が周囲を巻き込んで新人を指導育成している事例
   https://www.learn-well.com/blog/2008/07/ojt_3.html )
 ・内省型研修は「気づきセミナー」のようなもの。
  他者との語り合いを通して、自分の経験を振り返り、
  何らかの気づきを得るもの。
  経験を棚卸できるものが有効。
 ・「ICTは、企業人材育成にどんな価値を提供できるか?」
  「ICTにできることは何か?」
 ○企業人材育成という観点で、ICTにできること。
  私自身は、2つ考えました。
  今回の中原先生の講演の中で出てきた言葉を使えば、
  「経験から学ぶ力」を高めるための「内省機会」の提供。
  「インフォーマルな知識共有」の場としての「情報共有」
  
  ICTを活用するとすれば、
  1)内省機会の提供としての「メールマガジン」
   メルマガ「魔法の質問」の松田ミヒロさんのように、
   毎日とはいかないまでも、自身を振り返る内省機会として
  
   メルマガが届く。
   メルマガの強さは、受信ボックスに強制的に送られてくること。
  2)インフォーマルな知識共有の場としての「MLやSNS」
   情報共有の場として、メーリングリストやSNSは使いやすいと思う。
   ただ、情報が飛び交うような働きかけは必要になるが。
   また、東京ガスの成功事例(日経産業新聞8月4日)のように、
   社内事例をデータベース化し検索しやすいようにしておくことは大事。
   
   
 ・eラーニングの世界と人材開発の世界で使われている言葉が違う。
  eラーニングも今後さらに経営企画、人事教育部門などと
  一緒に仕事を進める必要がある。
 (↑このあたりについては、中原先生ご自身のブログをどうぞ)
  http://www.nakahara-lab.net/blog/2008/08/eict.html
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 2.14時50分~16時20分
  「一人一人の能力を伸ばし活かす~タレントマネジメントの視点」
    ウィルソン・ラーニング ワールドワイド(株)
      執行役員 児島研介氏
 ・Clickpadのキーパッドを使い、参加者意見を集める。
 ・「タレントマネジメントの基本的考え方」
  タレント=人財になり得る、あるいは既になった人財で、もともと
       一定のEmploy-abilityを持っている人。
  マネジメント=上記のタレントを見出し惹きつける段階から活かし、
         維持するまでの一連の活動
 ・入社後の早期離職
  3年で35%。実は、半年内15%という現状。
 ・リテンション指向の採用プロセスが主題となる。
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 今回も色々な気づきがありました。
 どうもありがとうございました!
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