【木曜日22-12】「転移」文献 Transfer on Trial

参考文献

【木曜日22-12】「転移」文献 Transfer on Trial

○転移のルーツを辿る旅(5)

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『Transfer on Trial:Intelligence, Cognition, and Instruction』Edited by Detterman,D.K.&Stenberg,R.J.(1993)Ablex Publishing Corporation.

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Ch.1

The Case for the Prosecution: Transfer as an Epiphenomenon.  Detterman,D.K.(1993)

・Hegel(1832/1982)は「人々と政府は、歴史から何も学ばない」と言った。
・つまり、一つの状況で学んだことは、他の所には転移しないということだ。

・Transfer転移とは、新しい状況で行動が繰り返される度合いのことである。

・最初に学んだ状況に、新しい状況が似ているほど、転移が起こりやすく、これは、Near Transfer近転移と呼ばれる。

・Far transfer遠転移が、Deep structure深い構造で起こることが、最も難しい。

・転移は、心理学において最も積極的に研究されてきた現象である。

・Thorndike(1901)の実験により、転移は状況が非常に似ているときにしか起こらないことが明らかになった。

・Baldwin & Ford(1988)のレビューには、近転移の研究が多い。
・Singley & Anderson(1989)のレビューでは、疑問符がつく研究以外に、general transfer 汎用的転移の証拠は示されていない。

・Judd(1908)は、転移を立証したと言われるが、実験内容を見ると、実験群に対し、戦略を使うよう指示しており、これは転移とは言えない。

・Reed, Ernst,& Banerji(1974)の実験でも、転移は示されなかった。
・Reed,Dempster,& Ettinger(1985)でも、転移の量はわずかであった。
・そのための実験も、転移を生み出すのは難しかった(例:Reed,1987)

・転移が示されたという実験におけるTrickトリックは、実験群にヒントや助言を与えることであった。

・これらの研究を総括すると、Thorndikeの主張である「転移は稀」をひっくり返すものはないと言える。

・Thorndike(1924)では、形式陶冶を批判している。

・形式陶冶という教育哲学を支持するエビデンスは存在しないと言ってよい。

・転移を保守的に見ることは、学習者を、Overgenrelization過剰一般化から守ることにもつながる。

・人に何かを知ってもらいたいなら、そのことを教えるしかない。
・彼らに違うことを教えながら、本当に知ってほしいことに彼らが気づくことを期待してはいけない。

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Ch.2

Mechanism of Transfer. Sternberg & Frensch(1993)

・A社での成功が、B社での成功を約束しない
・1つの場所での学習が、別の場所への転移につながらないことは多々ある。

・転移の4つのメカニズム
 1)Encoding specificity 符号化 2)Organization 組織化 3)Discrimination 区別 4)Set 課題や状況の視方

・Ferguson(1956)は、Intelligence知性を、転移の一環として定義した。

・学校においては、転移に向けてのmental set 気持ちの在り方を確立すべきである。
・現代の教育は、学んだ内容の使用を促すものになっていない。

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Ch.3

A Schema-based Theory of Transfer. Reed(1993)

・学習課題と転移問題の間の関係について説明された時に、初めて転移が起きている。

・Thorndykeは、Schemaを、知識の塊と考えた。

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Ch.5

Transfer of Situated Learning. Greeno, Moore, & Smith (1993)

・学習は、基本的に状況の中にある。

・知識は、状況の中にあるものや人との相互作用能力と言える。学習とはその能力の向上であり、状況活動への参加をより良くするものである。

・転移は、社会的なものである(例:Lave 1988)

・図5.1

・Affordance アフォーダンス 特定の活動を支援する状況

・Brown & Kane(1988)の実験では、内省した子供たちの方がしなかった子供たちより、良い結果を出した。
 新しい状況が、別の状況と似ていると気づいた時に、Positive transfer 正の転移が起こった。

・Duncker(1935/1945)の実験は、典型的な「Negative transfer 負の転移」の例である。
  ろうそく、画びょう、ハコ https://en.wikipedia.org/wiki/Karl_Duncker

・Wertheimer(1945/1959)の平行四辺形の実験

・Sayeki,Y. Ueno.N. & Nagasaka,T.(1991)Mediation as a generative model for obtaining an area. の実験。「Paper-cut」「Shapy」「Framer」
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/095947529190005S
・Shapyが、高い点数をあげた。

・図5.17

・転移が起こるためには、学習者は、汎用的なSymbolic schema象徴的スキーマを獲得する必要がある。
・学習した象徴的スキーマを、転移状況にあてはめるプロセスが必要になる。

・4つのepistemological frameworks 認識論の枠組み
 1)Empiricist 経験主義
 2)Retionalist 合理主義
 3)Sociohistorical 社会歴史的
 4)Ecological psychology 環境心理学的

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%8D%E8%AD%98%E8%AB%96

・経験主義者のThorndyke & Woodworth(1921)は、転移を「同一要素説」と考えた。
・Piaget、Duncker(1935/1945)Wertheimer(1945/1959)は、合理主義者。

・経験主義者も合理主義者も、転移は、Cognitive structure認知構成物に依存すると考えるのが共通している。

・社会歴史的な認識論者には、Lave(1988)Leont’ev(1981)Vygotsky(1962)がいる。
・彼らは、転移は、状況内の構造に依存していると考える。

・環境理論家であるGibson(1966、1979/1986)は、physical environment 物理的環境に着目する。

・本稿での我々の視点は、社会歴史的、環境的な志向と重なっている。

参考:

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Ch.7

Cognitive and Behavioral Analyses of Teaching and Transfer: Are They Different? Butterfield, Slocum, & Nelson (1993)

・Thorndyke & Woodworth(1901a,b,c)は、転移と学習は切り離せないことを示唆した。
・しかし、その後の多くの研究者たちは、転移と学習を切り離してみている(例:Osgood,1949)

・認知主義と行動主義の研究者は、共同研究ができる。

・行動主義者のモデルでは、組織の中身はカラである。
 認知主義者は、その箱に、mental design メンタルデザインを入れたがる。

・行動主義者は、Instruction 教授というハコの外の活動に目を向ける。
 認知主義者は、教授の結果起こるメンタル面に着目する。

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Ch.8

A Naturalistic Study of Transfer: Adaptive Expertise in Technical Domains. Dibble & Glaser (1993)

・Adaptive Expertise(Hatano & Inagaki,1984)

https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/25206/1/6_P27-36.pdf

・我々は、転移は学習から切り離せるとするGick & Holyoak(1987)を支持する。

・図8.1 

・前職(Job1)と、転移が必要な現職(Job2)の関係。

・パフォーマンスを向上させた学習者は、より多くの質問をし、多くの自己説明を行い、更に追加質問をした。
 パフォーマンスが弱かった人たちは、質問も少なく、自己説明も少なく、非生産的な活動をしていた。

・良いパフォーマンスを出した人達は、学習の最中に、自分の認識プロセスを、monitor モニタリングしていた。

・パフォーマンスが良くなかった人達は、新しい問題を、Oversimplified 過剰に単純化し、既存の構造を、Overgeneralized 過剰に一般化していた。新しい環境での彼らの活動は、まるでNovice-like 初心者のようであった。

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投稿者:関根雅泰

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