【木曜日41】「研修転移」論文(2008、2010)

木曜日

【木曜日41】「研修転移」論文(2008、2010)

○「研修転移」に関する論文2本です。

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Cheng & Hampson (2008) Transfer of Training: A review and new insights.

・Kirkpatrickの4レベルに、Phillips(1996)やHamblin(1974)が、他のレベルを追加した「4プラス1モデル」が、幅広く使われている状況ではない。

・Blanchard et al.(2000)は、組織は最初の2つのレベルの測定の方がやりやすく、仮にレベル4、レベル5を測定した結果、研修が費用に見合っていなかったという結果が出たら困るため、そこまでの評価をしないと述べている。

・研修の効果は、究極的には、学んだ結果が、職場で使われたのかということである(Salas & Cannon-Bowers 2001)。

・Situated learning 状況論では、学習をアイデンティティの形成と見る。
・Off-the-job-training 仕事を離れた研修で獲得された学習結果が、職場に転移することの役割は小さいとみる(Tennant 1999)(状況論では、職場の実践コミュニティでの学習が重要と考えるため)

・しかし、Generic skills 汎用的なスキルは、複数の職場に適用可能と考えられる。

・本論文では、これまでの先行研究を、3つの時期に分けて概観する。

・1960年代~1980年代後半に、研修転移の定義がなされた。
・1990年代初頭から後半に、いくつかの変数が注目されるようになった

・図1

・自己効力感は、転移行動を予測する(Ford et al.1998,Tannenbaum et al.1991)

・2000年から現在は「学習を通じて仕事をより良くするモチベーション MTIWL」への着目や「学習転移システムインベントリー LTSI」が開発されたりしている。

・しかし、転移研究においては、一貫しない、予期しない結果もあらわれている。 例)Locus of cotrolに関しては矛盾する結果が出ている。
・おそらく構成概念の弱さも関係しているのであろう。

・本論文では、心理学の頑健な理論「Theory of Planned Behavior」(Ajzen 1991,2001)を援用したい。

・受講者自身が、転移するかどうかを選ぶ。個人の意図が重要。

・最近の”Workplace learning”職場学習アプローチが批判するような、脱文脈化した知識の転移は、意味がないことではない。
・汎用的スキルの転移については、見るべき価値のあるものだ。

・受講者が転移するかどうかを決める。受講者の意図に着目すべきだ。その際には「計画的行動理論」が参考になる。

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参考:土井由利子(2009)日本における行動科学研究-理論から実践へ

https://www.niph.go.jp/journal/data/58-1/200958010002.pdf

・アズゼン(Ajzen I)が提唱した計画的行動理論Theory of Planned Behavior(TPB)は,人が何か行動をしようとするとき,その目的とする行動を行う前には,行動しようとする“意思”が働き,その意思は,その行動に対する本人の“態度”と“主観的な規範”と“行動コントロール感”によって互いに影響を受けるというものである.この3 者がポジティブに働くと行動しようという“意思”が高まり目的とする行動が起こりやすくなる

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Chiaburu, Sawyer, & Thoroughgood (2010) Transferring More than Learned in Training: Employees’ and Managers’ (over)generalization of skills.

・研修転移の自己評価、他者評価が信頼できるものであるかを検討する為、2つの調査を行った。

・仮説1:受講者が、社会的望ましさから、研修転移を過剰評価する可能性がある。
・仮説2:上司も、受講者に親密さを感じていると、研修転移を過剰評価する可能性がある。

・仮説3:受講者の性格特性(Big5)で、α要素(協調性、真面目さ、精神的安定性)は、過剰評価をする可能性がある。

*Big5 
  Openness 開放性
  Conscientiousness 真面目さ・誠実性・良心性・勤勉性
  Extraversion 外向性
  Agreeableness 協調性
  Emotional Stability 精神的安定性・情緒安定性 Neuroticism 神経症的傾向

・仮説4:部下のスキルが良く見えている状況である程、上司による過剰評価は減る可能性がある。

・研修に関連する項目と関連しない項目で、研修転移の度合いを測った所、過剰評価の傾向が見られた。仮説1~4は支持される結果となった。

・2つ目の研究では「真面目さ」に焦点を当て、何がその効果を調整するのかを見た。

・仮説1:不安定さが、真面目さの過剰評価を更に高める。
 仮説2:完璧主義が、真面目さの過剰評価を更に高める。

・仮説1,2共に支持された。

・2つの調査の結果から、受講者も上司も、研修転移の度合いを、過剰評価する傾向が明らかになった。
・研修とは関係ない項目すらも、学び、実践していると回答しているのた。
・特に「真面目さ」を持つ受講生ほど、その傾向が強く、しかも「不安定さ」と「完璧主義」がそれを助長していた。

・研究者は、研修転移の評価には、バイアスがかかっている(過剰評価を含む)ことを前提に入れた方が良い。
・研修転移を測定する際には「研修とは関係ない項目(研修で学んでいないこと)」も入れておくとよい。それによって、過剰評価されているかどうかが分かる。

・より透明性のある仕事、観察可能なスキルの場合、過剰評価の傾向は少なかった。

○「真面目な人」で、完璧主義で、自分に自信が無い人ほど、「研修を実践してますか?」と訊かれたら「実践してます!あれもこれも!」と過剰評価するってことかな。

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参考:林(2002)発達的観点からのビッグ・ファイブ研究の展望

https://core.ac.uk/download/pdf/197282924.pdf

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投稿者:関根雅泰

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