【木曜日26】中途採用本_210705

木曜日

【木曜日26】中途採用本_210705

○中途採用者に関する本です。

===

『中途採用人材を活かすマネジメント』尾形真実哉(2021)

・中途採用者こそ、充実した教育やサポートが求められる。

・中途採用者特有の意識:被害妄想、遠慮意識、根拠のない自信
・戸惑い感と、溶け込めなさ感

・既存社員の「お手並み拝見意識」

・中途採用者は、同僚や他部署の社員との信頼関係が未構築な状態で高い成果を求められる。
・中途採用者が成果を出すためには、既存社員との信頼関係が重要であるが、信頼関係を構築するには、成果が重要になるという「因果のねじれ現象」が生じている。これが、中途採用者の組織再適応の難しい所である。

・Know who 誰がどういう知識をもっていて、どこにアクセスしたらよいのか。
・Know whoに行くまでのハードルが、中途にはあるのでは。

・中途採用者には、時間的猶予は与えられていない。短時間に多くの適応課題を克服しなければならない。

・「Know who」は「誰がどのような知識やスキル、影響力をもっているかを知っていること」である。

・3社142名の中途採用者に質問紙調査を行い、重回帰分析を行った結果、「組織内人的ネットワーク」が、中途採用者の組織再適応に重要な役割を果たしていた。

・中途採用者の組織内人的ネットワークの構築に有意義なコミュニケーションは、職場内の活発な対面コミュニケーションのみであり、非対面のオンラインコミュニケーションは、有意な影響を及ぼさなかった。

・ネットワークを構築するために有意義なものとして、研修がある。
・中途採用者だけの研修(同質性):強連結
 他部署の既存社員と接することできる研修(多様性):弱連結

・組織内人的ネットワークの構築、広範化によるドミノ効果:そこを促進することで、他の課題解決につながる。

・図表3-4

・新人だけでなく、中途採用者にも、適応エージェントを割り当てることは重要である。そして、その適応エージェントは、仕事や会社のことを良く知り、ある程度の影響力をもつ役職者を割り当てることが有益である。

・中途採用者への過剰なサポートは、それがストレスや負担となってしまう「サポート・パラドックス」が存在していると考えられる。中途採用者には、前職での知識や経験を尊重しつつ、自律性などを与えながら、適度な教育を施すほうが「貢献実感」には有意義になるのかもしれない。

・日本企業416社に対して、中途採用者に対するオンボーディング施策について調査した。その結果、日本企業の中途採用者に対する組織的なサポートは希薄であることが分かった。
・分析の結果、オンボーディングに力を入れている企業の方が、力を入れていない企業に比べて、中途採用者の「定着率」と「パフォーマンス」の双方において、スコアが高く、有意な差が生じていた。

・最も多くの成果に影響を及ぼした施策は「メンターや相談役などの支援制度」と「上司など受入側に対する教育」であった。この2つがオンボーディングBIG2である。

・中途採用者に対する教育制度やサポート体制がしっかりと整備されている企業であれば、そうではない企業に比べ、より多くの中途採用者が集うことになる。

・中途採用者を受け入れる側いは、どのような課題があるのかについては、まだまだ理解が乏しい。

・中途採用者を上手く活用できていない組織は、中途採用者を「即戦力」と捉える傾向がある。それにより、中途採用者に対する教育制度やサポートが乏しくなり、中途採用者の組織再適応を阻害しているのである。

・中途には、3段階のプロセスを要することになる。

・図表7-8

・アンラーニングは重要だが、中途採用者の多少とがった部分も上手く生かすことが重要であり、それを受け入れる組織の寛容さ(中途文化)も重要である。

○ある採用畑の方が「最高の採用は、即戦力。育成の必要のない人を採ること」と言っていたけど、この本の知見を参考にするなら、それは無いな。

ある程度の手間暇(例:組織内人的ネットワーク構築の支援)をかけないと、戦力にはなれない。

それを「育成」と呼ばずに「支援・手助け」と呼んだ方が、中途の方には、適切なのかも。

「育成の必要はないが、ちょい手助けは必要」みたいな感じかな~。

===

『転職学』中原淳・小林祐児(2021)

・転職を「マッチング思考」から「ラーニング思考」へ。

・大人にとって「座学」は「学び」ではない。時代や環境の変化を敏感に察知し、それらに適応して「自らを変えていく」こと。

・従業員数500~2000人くらいの中規模企業が「重い職場」になっている。

・キャリアナラティブワーク:過去、現在、未来をつなぐストーリーをつくる
 1)これまで何をしてきたか? 
 2)今なぜ転職を考えたのか?
 3)転職することに何を求めているか?
 4)1)と2)はどのような関係か?
 5)2)と3)はどのような関係か?
 6)全体はどのようなストーリになっているか?
 7)他の人に話してみての感想、意見

・日本人は学びの場が「職場に偏っていた」

・熟達がかえって変化への適応を妨げてしまう。

・必要な知識、スキルを企業の中だけに求める時代は終わりを告げている。

・学ばない人のマインドセット:仕事は運しだい、ほどほどキャリア、地頭重視

・学び直し意識の向上に寄与する環境:組織内の環境(継続学習支援)組織外の環境(交流範囲の広さ、自社について話す機会)

・独立開業の魅力:組織に縛られない働き方をしたい、より裁量のある働き方がしたい、やりたいことを追求したい
 独立開業の不満:両親や家族との間に不和がある、安定して顧客を得ることが難しい、自分の仕事が周囲から求められなくなった
 独立開業のポジティブサプライズ:顧客や取引先から高い評価や良い評判を得ている、労働時間が短い、自分が成長している実感がある

・職場を「アタリ/ハズレ」で考えるのは「マッチング思考」

・セルフオンボーディング(能動的に船に乗り込む)

・4つの支援と成果の関係

・組織外の他者との接触頻度が高い転職者ほど、仕事への慣れが早く、転職先の会社を「うちの会社」と呼び始める時期も早い。

・現在の転職者に不足しているのは「クローズドオンボーディング」ではなく「オープンオンボーディング」
・転職後こそ「外」に出よう

・転職して新たな職場で活躍している人は、ソーシャルスキル(関係開始スキル、関係維持スキル、主張スキル)が高い

・30歳前後の第1次モヤモヤ期と、40歳前後の第2次モヤモヤ期

・新卒一括採用やOJTは、引き続き多くの企業で行われているが、それに「職場をまたいで学ぶ」こと、つまり「出会いと適応」という課題が加わったのが、新たな学びの在り方。
・大人として生きていけるのは「ラーニング思考」によって、つねに変化に同期し続けている人。

・道に迷ったときは「あなたは何をやってきた人なのか、あなたは何ができるのか、あなたはこれから何がしたいのか」という「ゴーギャンの問いかけ」を思い出してみてほしい。

===

『仕事のアンラーニング』松尾睦(2021)

・経験から学んだことが、固定化、固着化してしまう:コンピテンシートラップ(有能さの罠)

・アンラーニング=信念、ルーティンの変化

・個人アンラーニング=個人が、自身の知識やスキルを意図的に棄却しながら、新しい知識、スキルを取り入れるプロセス
・ノウハウの入れ替え(アップデート)

・アンラーニングをしないと、成長が止まってしまう。だから、アンラーニングが重要。

・アンラーニングのきっかけは「状況の変化」71.3%、「他者の行動」18.9%、「研修・書籍等」9.8%。
・これらの結果は「人材の成長の7割は仕事経験、2割は他者からの指導、1割は研修によって決まる」という「70:20:10の法則」とほぼ一致している。

・アンラーニングの全体プロセス

・アンラーニングは、何らかの外部刺激によって喚起される。
・仕事を学びほぐすチャンスを見逃さない。

・アンラーニングをしている人ほど、生き生きと働いている。

・自己変革スキル:計画的かつ戦略的に自分を変えるスキルを持つことが「捨てる学習」「入れ替える学習」としてのアンラーニングにつながる。
・自分の力だけで、アンラーニングを実践することには限界がある。そこで必要なことは、外部からの支援を求める「資源の活用」と、様々な成長機会をとらえる「意図的行動」。

・上司自身の挑戦する姿勢が、部下の学習志向を促し、職場の変革へとつながっていく。
・「背中を見て学ぶ」「背中で教える」という方法が有効であることを示す分析結果となった。

・(上司以外にも、社外等に越境することで)「革新的な他者」と出会い、学びあうことで、成長マインドを醸成することができる。

・アンラーニングのプロセスモデル

・特にアンラーニングを後押しするのは「上司の探索行動」と「昇進」
・アンラーニングの原動力としての「学習志向」(業績志向ではなく)
・まず大事なことは「アンラーニング」を意識すること。この言葉を知っている人と知らない人では、学習面で大きな違いが出る。

○アンラーニングしようとする時は、きっと「痛い」はず。その痛みを軽減させるための知恵も必要になるかも。

===

『まなびほぐしのデザイン』苅宿・佐伯・赤木(2012)

・鶴見俊輔が、戦前、ニューヨークで、ヘレン・ケラーに会った時「まなびほぐす」という言葉を聞いた。このまなびほぐすとは「アンラーン(Unlearn)」のこと。

・ワークショップとは「異との出会い」
・「まなびほぐし=アンラーン」を目指すワークショップ

・ワークショップとは「他者理解と合意形成」その中核は「協働性」である。
・ワークショップの流れ:位置づく、見立てる、味わう

・双原因性感覚こそが、協働性を支えていく感覚であり、ワークショップなどの協働的な活動で培うことができる感覚。

・火事は起こす前に消す。見る事に尽きる。
・ファシリテーターの役割は、人間関係を解きほぐし、結び直すことではないか。

・「逆転時間」の難しさが、子供達のトライアル&エラーを活発にした。
・全員が一から十までわかる必要はなく、全部わかっている人がいて、半分までわかっている人がいて、少ししか分かってない人がいて、その人たちが交じりあって一つのグループでの活動をするからこそ、教えあいや工夫が生まれる。

・ミュージアムとは「ムーセイオン=知の神様を祀った場」

・ワークショップの出来事をとらえるには、出来事が変化する「結節点」を発見することが注目すべきポイントになる。

・ワークショップ評価の類型

・評価を行うためには「達成することを目指した状態」を明確にする必要がある。

・まなび手が、まなぶということを、誰かに「教えられて」身につけることとしてしまうクセ、凝りから脱皮することが「アンラーン(まなびほぐし)」である。
・「教えられること」から始めない。学校を前提にしな学びを、「まなびどり」と名付ける。
・ワークショップでは「まなびどり」そのものが要求される。

===

『若年就業者の組織適応』尾形真実哉

・見田(1965)においては、質的分析方法が「おもしろいが、たしかさがない」のに対し、量的分析方法は「たしかだが、おもしろくない」分析に終わりがちになるという表現で両者を区分している。

・適応 adaptationとは、生物が環境に合うように、自らの身体や行動を変容させること、またはその状態をさす。
・組織への適応と社会化は異なる。
・組織適応の下位概念として、組織社会化、情緒的コミットメント、離職意思、仕事のやりがいを用いる。

・組織適応に最も影響を及ぼしていたのが、組織ショックと評価ショックであり、続いて仕事ショックであった。

・期待外れが、リアリティショック。期待以上(overmet expectation)がポジティブサプライズ。
・組織適応にポジティブな影響を及ぼしていたのは「対人関係ポジティブサプライズ」であった。

・入社1年目(新人)の適応課題:新人ストレス ①下っ端ストレス ②モニターストレス ③ロールモデルプレッシャー
・職場全体で新人を支えてあげようと気にすればするほど、新人にはストレスを与えているというパラドクスが生じている。
・「過剰な眼差し」ではなく「程よい眼差し」による育成システムや育成風土の構築が重要。

・入社2年目の適応課題:2年目の憂鬱 ①見えてくる ②自律性のジレンマ ③モニターストレスと下っ端ストレスからの解放
・「擦り合わせ型リアリティショック」を克服できないと、3年目の離職につながる恐れがある。

・入社2年目は、特に注意が必要。入社2年目こそ研修が必要。「2年目の憂鬱」を乗り越えさせるための充実したサポートを提供することが求められる。

・入社3年目の適応課題 ①3年目の変化:仕事に余裕、貢献意欲の醸成 ②3年目のストレス:単調感、危機感

・リアリティショックの解消には、上司と同僚からのサポートが重要であることが示された。同期に相談してもリアリティショックは解消されない。

・入社前の仕事や会社に対する事前知識は、会社への愛着や職業的、文化的社会化を促進し、離職意思を低減させる。
・上司や同僚、職場のコミュニケーション風土など、多様な適応エージェントの存在が重要であることが示された。特定の指導者を割り当てるメンター制度は、それに逆行している。
・上司は、職場デザイナーとして、職場全体でのチームサポート体制を整えるべき。

・プロアクティブ行動の全てが、組織適応に影響を及ぼしていた。
・組織に上手く適応したければ、受動的な姿勢ではなく、自ら積極的に行動をとることが有益。
・勤続年数が浅いからこそ、積極的に行動をとることを意識することが重要。

・上司が若手に、自律性や重要性の高い仕事を割り当て、発展的フィードバックを行うことで、若手のプロアクティブ行動が促進される。

・研修 Off-JTは、仕事に関する知識やスキルを習得させる効果よりも、組織への愛着を高めさせたり、離職意思を低減したりする効果が高いことが実証されている(尾形2017)。

・分析結果による全体像

・適応課題に合わせたサポートを提供する。
・予期的社会化、上司、同僚が、適応に重要。
・どのような仕事に携わらせるかが重要。

・上司を育成し、上司を「育成上手」にすることで、あとは現場でのOJTに任せる。それが、9割の効果を生み出す。

・若年ホワイトカラーを定着させ、成長させるためには、上司を育てる。

・どのようになれば、組織社会化が達成されたことになるのか。
・新人と環境との相互作用を濃密に記述する以外に方法はない。

○2年目社員にこそケアが必要!育成上手な上司を育てる事で、若手の適応を促す!

===

投稿者:関根雅泰

コメントフォーム

ページトップに戻る