2014年7月4日(金)9時~18時@東大
 「OJTに関する英語文献を皆で読む会」を開催しました。
  https://www.learn-well.com/blog/2014/06/ojt_4.html
 どんな文献を読み、どんなディスカッションがあったのか、
 さし障りのない範囲で共有します。
 
 (・要約 ‐当日出た話し )
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 9時スタート。軽くお互いの自己紹介をした後、
 私からレジュメを使って「OJT研究」の全体像について説明します。 ↓
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 「OJTに関する英語本」
  https://www.learn-well.com/blog/2014/07/ojt_5.html
 ‐「OJTが機能する条件」が、整いにくくなっている。
 ‐仕事の分解ができない。できるものは、外注される。
  職務記述書に書けるものは外注されるのでは。
  そうとも限らない。トレーニングニーズは逆に増えるかも。
  色々な仕事ができる。すばやく学べる。
  異動や転職では、こういった点が必要になる。
 ‐OJTにおいては、教える側が「意図的」であるかが重要では。
  「こういうことを学んでほしい」と、意図を最初に明確にするのと、
  後からつたえるのでは、どちらがよいのか。
  Inductive(帰納的)とDeductive(演繹的)の違いはあるかも。
 ‐参考:博報堂での新人育成
  http://www.nikkeibp.co.jp/article/hco/20140530/400212/
 ‐時期は、業種によって違うかも。
 ‐新人が、前のめりすぎ、あせりすぎの場合、単純ルーチンではない
  重要な仕事を与えないと、離職につながる可能性あり。
 ‐R社では、10月までは「新人」と呼ばれるが、
  それ以降は「1年目」と言われ、意識転換を図らせる。
 ‐最初の3カ月は「組織適応」期間、それ以降が「スキル向上」期間と
  分けているマネジャーもいる。
 ‐縦断研究は、「鉄板尺度」を使わないと難しい。
 ‐入社8カ月後にインタビュー調査をしたとき、
  「仕事ができず、あせっている」新人が多かった。
  何らかの形で「貢献している感」が重要。
  「できることをもたせる」等。
 ‐キャリア教育も、専門性、早い自立といった
  あせりを生み出す要因となっているのかも。
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 ●A study of the on-the-job training of production line operatives
   in manufacturing companies
  Riding, C.R. and Mortimer, J.(2000)
 ・製造ライン作業者に対する研修は、先輩社員によるOJTが中心であった。
 ・これらのOJTに、人事や研修の専門家はほとんど関与していなかった。
 ・詳細は、関根のレジュメで。 ↓
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 ・中原先生ツイッターhttps://twitter.com/nakaharajun/status/484866429167337472
 ‐現場はクリエイティブ。よりよくする。あえて問題を出させる。
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 ●Training, continuous improvement, and human relations:
   The U.S. TWI programs and the Japanese management style
 Robinson, A.G. and Schroeder, D.M.(1993)
 ・日本的マネジメントとしてとらえられてきたものは、
  実はTWIにそのルーツがある。
 ・L.MellenとE.McVoyが、日本におけるTWI展開のキーパーソン。
 ・TWIは、1940年6月22日のフランス陥落後に、
  米国政府がとった最初の緊急サービスであった。
 ・レンズ磨きの不足に、TWIは最初に取り組んだ。
 ・TWIの研修プログラムは、乗数効果を狙っている。
  標準手法を教えることで、教わった人が、他の人たちを教えていけるように。
 ・TWIは、3つの標準的研修プログラムを提供した。
  JIT:Job Instruction Training
  JMT:Job Methods Training 
  JRT:Job Relations Training
 ・TWIの「4-step method」
 ・TWIは、展開した各国の中でも特に日本に対して大きな影響を与えた。
 ・1949年、占領軍は、日本において訓練された監督者たちの必要性を感じていた。
 ・トヨタは、自社流のTTWI:Toyota TWIを展開した。
 ‐「Toyota KATA」と「デザイン思考」の共通性
 ‐フレームワークが優れていることが大事。
  コンテンツは現場ごと。
 ‐TWIの良さは「人は学ぶと嬉しい」「知恵を出す喜び」という思想。
 ‐道場方式。 JMT,JRTはメタ。
 ‐Mindは変えられないが、Habitは変えられる。
  (参考:トイレ掃除の経営学 )
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 ●Change in Newcomers’ supervisor support and socialization outcomes
   after organizational entry
  Jokisaari, M. and Nurmi, J.(2009)
 ・新人が認識する「上司による支援」は、入社後6~21ヶ月の間に低下していく。
  この低下が激しいほど、新人の「役割明確化」と「職務満足」が低下していく。
 ・新人は直属の上司とだけでなく、周囲のインフォーマルなつながりを作るべきで
  あり、 上司は職場メンバーに新人を紹介することでネットワーク構築を支援
  すべきである。
 ・職場における新人の「社会的統合」は、
  新人の「業務習熟」の変化に関係している。
 ・先行研究では、新しい知識やスキルの習得に2年程度を要することが論じられて
  いたり(例:Chao et al.,1994; Schein,1978)、仕事のアサインメントの変化、
  上司との葛藤といったイベントが、最初の2年間に生じやすいとの指摘がある。
  (Gundry & Rousseau,1994; Kammeyer-Mueller, Wanberg, Glomb, & Ahlberg,2005)
 ・本研究では、組織参入後、2年間までの組織社会化プロセスに着目する。
 ・「新しさの負債(liability of newness)」とは、外的要因によって形成された
  関係性は、時間とともに低下し、その傾向は新しい関係性においてより顕著
  であるとするもの(Burt,2000,2002)。
 ・「新しさの負債」研究でも、関係性の低下は、2年間程度の間に生じると
  されている(Burt, 2000)
 ・中原先生ツイッターhttps://twitter.com/nakaharajun/status/484887258982793216
 ‐役割が明確でない方が、モチベーションが上がる人と、
  明確なほうがモチベーションが上がる人がいるのでは。
 ‐「Dreyfusモデル」は、チェスやレントゲン技師といった
  領域固有な状況での熟達。それを企業人にあてはめる違和感。
  ただ、新人→一人前→専門家等、上に上がる楽しさはあるのかも。
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 ●The role of goal orientation in leadership development
  DeGeest, D. and Brown, K.G.(2011)
 ・仕事のアサインメントによる経験学習こそ、マネジメントとリーダーシップスキルの
  開発にとって重要である。
 ・本研究では、Goal orientationを、リーダーシップ発達研究に統合するような
  理論モデルを提示したい。
 ・Goal Orientationには2種類ある:Performance GO、Learning GO(Dweck,1986,1989)
  (ドゥエックの『やればできる!の研究 能力を開花させるマインドセットの力』
    https://www.learn-well.com/blog/2009/09/post_275.html)
 ・Performance GOは、のちの研究で更に2つがあることが明らかになった:
   Avoid PGO(「できない人」と見られたくない)
   Performanc prove GO(「できる人」と見られたい)
 ・GOとリーダーシップ発達の関係を、仮説として複数提示。
 ‐上司が場を与えられるか。任せきれるか。
 ‐やる気に影響を与える、やる気に蓋をするものは何か。
 ‐ビジネスマンには「メタ」が足りないのかも。
  優秀な人ほど、目の前の問題解決にいそしむ。
  ここでは何がルールか、何が支配しているのか、
  メタな視点で考えることも必要では。
 ‐メタに考える力こそ、大学教育の守備範囲では。
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 ●The relationship between individual and organizational learning:
   New evidence from managerial learning practices
  Antonacopoulou, E.P.(2006)
 ・3つの銀行でのマネジャーに関する事例研究
 ・「組織が学ぶ」のか?
  「組織記憶」(Cohen & Bacdayan, 1994等)
  組織は、脳みそは持ってないが、認知システムと記憶は持っている。
  (参考:「組織と技能~技能伝承の組織論」
       https://www.learn-well.com/blog/2012/07/post_370.html 
      「トランザクティブ・メモリー」
       https://www.learn-well.com/blog/2013/08/post_393.html )
 ・銀行では「集合研修」こそが学ぶ手段であると捉えられていた。
 ・学習の背後には、組織の政治的圧力も潜んでいる。
 ‐マクロな組織と、ミクロな個人。人事は両方に対応しないといけない。
  (人事制度を作ったり、労務対応したり)
 ‐人を信用していないから、組織を作る。
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 ●The synergies of the learning organization, visual factory management,
   and on-the-job training
  Aik, C.T.(2005)
 ・学習する組織、ビジュアル工場管理、OJTの相乗効果を検討し、
  4つの研修に対する原則を提示:
  1)科学的な研修を
  2)従業員は、活動的な学習者である
  3)従業員は、より良い仕事環境を創りたい
  4)公式と非公式な学習の場を
 ・学習する組織は、Total Quality Management総合品質管理とも関連している。
 ・ビジュアル工場管理は、5Sと関連(Tonkin, 1998)
   Sort, Set in order, Shine, Standarize, Sustain
 ・OJTは、novice-to-expert 新人から熟練者へというアプローチを使う。
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 ●Access to training and its impact on temporary workers
  Finegold, D. Keck, Levenson, A., and Buren, M.V.(2005)
 ・Blue, white, and pink-collar temps ブルーカラー、ホワイトカラー、
  ピンクカラ―(看護師等)の派遣社員の25%程度しか研修を受けていない。
 ・ブルー、ホワイトカラーにとって、OJTでのスキル向上は賃金と正の関係。
  ピンクカラ―は、コンピューターでの教育訓練と賃金が正の関係。
 ・教育とりテンションの関係:
  ピンクカラ―は正。ホワイトカラーは負(離職を促進)。ブルーカラーは関係なし。
 ‐非正規社員と正規社員が混在する職場では 「見えないコスト」が発生しているのでは。
  お互い気を遣う、遠慮する。
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 ●Structuring on-the-job training: Report of a multiple case study
  De Jong, Jan A. and Versloot, Bert(1999)
 ・7つのオランダ企業におけるOJT事例を3つのカテゴリーに分けて紹介:
  1)実際の仕事で、仕事を通じて指導
  2)個別学習
  3)実際の仕事で、その場で学習
 ・3つの次元で検討できる:
  1)学習者主導か、指導者主導か
  2)実際の仕事場か、準備的な学習か
  3)勉強のための課題か、応用するための課題か、経験させるための課題か
 ・OJTとOffJTのタイミングが重要
 ‐Preparatory Training 「現場に行く前の準備」研修 
  どんなに準備しても、現場での期待値とはギャップがある。
 ‐大人と組むことでどんどん学ぶ実習生。
  そういう子は、学べることを知っているから、色んなPJに参加する。
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 ●Training and development of human resources at work:
   Is the state of our science strong? 
  Chen, G. andKlimoski, R.J.(2007)
 ・Training and development 研修と発達の領域は、
  ある程度科学的に適切であるといえる。
 ・研修と発達の領域は、Cognitive psychology認知心理学の理論に拠っている。
 ・研究としてのベンチマーク:
  1)内的妥当性、2)外的妥当性、3)User inspired ユーザーを勇気づける
 ・教育訓練研究は、内的妥当性を満たしているが、
  構成概念(ISD、効果測定、研修転移)が散漫している。
 ‐こうした批判研究は必要。
 ‐User inspired scienceを生み出すためには。 Userは誰か?
 ‐統計は平均値サイエンス。大ゴケを防ぐ。
  (参考: 実践者を「勇気づける」研究、「ゲンナリ」させる研究!?
    http://www.nakahara-lab.net/blog/2014/07/post_2250.html )
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 ご参加下さった皆さん、ありがとうございました!
 今回も楽しかったです。またやりましょう!
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