OCB 組織市民行動
 D.オーガン、S.マッケンジー、P.ポザコフ著 2007年
 
 ○「OCB組織市民行動」研究の全体像がつかめる
 
 (・要約 ○関根の独り言)
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 ・(筆者は)日本的経営のスタイルが、OCBの重要性を認識し、かつOCBを
  妨げてしまうような業務慣行を回避することで、グローバルなビジネス
  環境の中で、業務の有効性を実現させることができたと信じていた。
 ・OCBのような貢献を喚起する従来の慣行を放棄する危険性について、
  もっと日本の研究者や管理者は考えたほうがよいのではないか。
 ○日本ではある程度、自然とOCBが起こる環境にあったのでは。
  アメリカでは、Job description 職務規定が明確な分、役割外行動を
  取る動機づけが働きにくかったのかも
  (役割への浸食と見られることもある)
 ・組織市民行動 Organizational Citizenship Behaviorの定義:
  自由裁量的で、公式的な報酬体系では直接的ないし明示的には認識されない
  ものであるが、それが集積することで組織の効率的および有効的機能を
  促進する個人的行動。
 ・通常よりストレスを感じる状況に置かれると、向社会的行動を減少させる
  傾向がある(Cohen 1980)
 ・その逆に、人間は否定的な気分にあると、誰かを助けることで、その悪い
  気分を和らげられると考えることがあり、援助の可能性が増大するという
  研究結果もある(Cialdini & Kenrick, 1976)
 ・他者が援助するのを見る場合、自分も援助をする傾向がある。
  (Macouley, 1970) つまり、慈善的行動は、模倣される。
 ・「労働者の満足」は「生産性」に影響すると言う社会的通念は、実証研究
  では立証されなかった。
  著者(Organ)は、1977年の論文(労働者の貢献をOCBとして提示)を通じて
  職務満足が職務業績に関係する重要な要因であることを、固く信じる実務家
  を、学術研究家が過度に非難すべきでないことを訴えかけたかった。
 ・上記で述べたように、OCBに関する考え方は「満足度-生産性」の論争から
  生まれたものである。
  職務満足は、より狭義の客観的タスク業績における生産性ではなく、より
  自由裁量的ないし自発的な労働者の貢献に影響する可能性がある。
 ・OCBの種類:7つ
  1)Helping 援助(他者を手助けする)
  2)Compliance 従順性(協力の精神を順守する)
  3)Sportsmanship スポーツマンシップ(例:不満や文句を言わない)
  4)Courtesy 厚意性(礼儀正しさ)
  5)Civic virtue 市民道徳(建設的な参画)
  6)Individual initiative 個人自発性
  7)Self-development 自己開発
 ・Barnard(1938)は、組織の本質を「協働体系 Co-operative system」として
  捉えて分析した初の文献。
  Barnardにとって、組織化とは「ボトムアップ型」の過程であり、多くの
  「自然発生型の組織」が存在し「全ての巨大な公式組織は、多くの小規模
  の組織から成り立っている」ものなのである。
  経営者の職能は「協働的活動の体系を維持する役割を果たす」もの。
 ・LMXとOCBの相関係数の値が、LMXと役割内行動の業績の相関係数よりも
  高いという研究結果もある(Settoonら1996)。
 ・実務家が「業績」を考えた場合、そこに含めるものの一部には、組織の真髄
  ともなる協力、コミットメント、相互依存性、「我々思考 We thinking」的
  な活動も含まれるのである。
 ・OCBは能力に制約されることがはるかに少ない。
  ほとんど誰もが何らかの援助を行える能力を備えている。
 ・OCBは「社会的交換 Social Exchange」(Blau,1964)の状況で生じる。
 ・職務満足は、社会的交換を通じて、OCBの原因となる可能性が高い。
 ・2つの要因間の関係に影響を及ぼす第三の要因として、mediator 媒介要因
  と、moderaor 干渉要因がある。
 ・OCBを行う従業員の動機づけ:
  1)従業員自身のため 
  2)他者(リーダーや同僚)のため
  3)組織自体のため
 ・従業員のPerceived Organizational Support組織支援知覚は、組織との互酬
  に関する彼らの義務感と欲求を増加させ、彼らの社会感情的ニーズを満たし
  彼らの社会的アイデンティティを確立し、さらに組織に対する職務満足と
  コミットメントを向上させることで、OCBに影響を与える可能性がある。
 ・OCBの頻度に影響するであろう要因の一つは、組織における従業員間の
  構造的、心理的、機能的な距離である。距離はOCBに負に関係する。
 ・OCBの知覚や表現に影響を影響すると予想できる2つの文化次元
  (Hofsted, 1984)には、個人主義-集団主義 Individualism-Collectivism
  と権力格差 Power Distance があると言える。
 ・管理者は、従業員の組織コミットメントの程度を知るための情報として、
  OCBを使う(Shoreら,1995)
 ・OCBが組織の効率性を高める一つの理由は、それが同僚や管理者の生産性を
  高めるからである。
  例えば、新参者が仕事のコツを覚えるのを経験豊富な従業員が自発的に
  助けることは、その新参者がより早く生産的な従業員となって、作業集団や
  作業単位の効率性を高めることに寄与する。
 ・Cross training 交差訓練とは、従業員に対して当人の専門とは異なる部門
  に出向させ、幅広い適応能力と視野を身につけさせようとするもの。
  日本企業で典型的に行われている配置転換も、このような目的に沿って
  行われる場合が少なくない。
 ・管理者が部下の昇進可能性を評価する際には、OCBがかなり重視されている
  (Shoreら,1995 他)
 ・メンタリングがそれを受けた人間のOCBを増加させる(Donaldsonら,2003)
 ○「自分も教わってきたから・・・」ということで、後輩指導を自然なもの、
  当たり前のものとして受け入れている指導員もいる。
  それは、その会社で「教える連鎖」が、上の代から続いているからだろう。
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