プレFDに参加して~大学授業と企業研修

企業内教育担当者向け

2013年2月22日(金)14時~17時30分 @ 東大
「未来の大学教員を育てる~プレFDの挑戦」に、参加してきました。
http://www.todaifd.com/event/
日本のリーディング・ユニバーシティーである東大と京大で
大学院生の「教育力」を高めて、各大学に送り出す。
既存大学教員ではなく、これから大学教員を目指す若い院生に、
学部生を教えさせ、授業デザインやふり返り検討会を行うことで、
「教育力」を高めていく。
そのような取り組みの紹介でした。
参加しながら、「企業研修」と「大学授業」の違いや
共通点を考えさせられました。
(あくまで私の主観ですので、間違った理解も多いと思います。
 また、ここでは企業側が予算を準備し実施する研修と比較しています。)

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●相違点
「大学授業」と「企業研修」の違いとして、パッと思いつく所で
いくつかあげると・・・
1.目的 vs 手段
大学授業は、学習が目的であるのに対して、
企業研修の場合、学習は手段である。
仕事で成果を出すために必要な知識、技術を修得するのが、
企業研修の基本的考え方。
大学授業は、内容・コンテンツを理解させることが目的。
その内容・コンテンツが、どのように活用されるかは、
学習者個人に委ねられている。
つまり、企業研修においては「仕事でこう役立つから、○○を学ぶ」のであり、
大学授業では「 ~ だから、○○を学ぶ」の「~」の部分が、
学習者個人に任せられているという感じかも。
そのためにも、企業研修の場合、伝えられる内容・コンテンツが、
現場でどう役立つのか、そのつながりをきちんと示す必要がある。
コンテンツ・内容ありきというより、現場での活用場面が大事。
(このあたりのことは「パフォーマンス コンサルティング」の
 考え方が参考になる。
 「パフォーマンス・コンサルティング」
  https://www.learn-well.com/blog/2009/06/post_249.html
  https://www.learn-well.com/blog/2009/08/post_250.html
2.評価あり vs 評価なし
大学授業においては、
学生に対して「優良可」「ABC」といった評価が教員からされるが、
企業研修においては、受講者が評価されることは少ない。
(ロープレやアセスメント研修は別として)
授業で、内容・コンテンツをいかに理解したか、
授業に、積極的に参加したかは、大学授業では重要だけれども、
企業研修ではそれほど重視されていないかも。
もちろん、研修受講者の参加姿勢や理解度は重要であったとしても、
極論すれば「仕事に役立たない研修に熱心に参加し、理解度を高めても・・・」
といった感じ。
つまり、「仕事に役立つ研修」を企画側が用意できたのかという方が
より重要であり、評価は受講者側から、企画者、運営者側に対して
行われることが多い。
(最近は大学授業でも、学生による教員評価はあるようですが)
K.Patrickの「効果測定の4段階」におけるLevel2の「Learning」も、
受講者が理解しやすいよう、研修設計者が作ったかどうかという面のほうが、
重視されていると感じる。
「カークパトリックの4つのレベルの実践」@ASTD 2007
 https://www.learn-well.com/blog/2007/06/post_31.html
3.長期間 vs 短期間
学生の評価にも関連するが、大学授業は長期間、高頻度であるのに
対して、企業研修は、短期間、低頻度であると言える。
大学授業は、3~4か月、15回 X 90分 
企業研修は、1~2日間 数年に1回参加する機会があればいいほど。
(幹部研修は除く)
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以上、ぱっと思いつく限り「大学授業」と「企業研修」の違いをあげてみました。
先生方のお話しの中で、
「大学院に入るような人は、1mあがることが楽しい人。
 1m登りたい人が、大学院に入ってくる。
 学部生は、1mあがる意欲が低かったり、
 1mの登り方が分からない人。
 だからこそ、学部生の教育においては、
 1cmずつ100段を用意してあげる必要がある。」
「大学院生や教員は、学部生の“わからない”“興味が無い”
 という気持ちが分からない。」
 といった言葉がありました。
「なるほどなー」と思いました。
・教える立場の人は、学ぶ人の「分からない・興味もない」という
  気持ちを忘れてしまう。
・1mあがるために、1cmずつ100段準備してあげる
ただ、後者については、企業教育(集合研修だけでなく、
現場OJTも視野に入れて考えてみると)では、
次のような意見もあるかもしれません。
「1m 自力で登ってくる奴だけ 生き残ればいい」
「1cmで100段 用意してやるなんて、過保護だ」
新人や若手に対する手厚い教育に違和感を覚えるマネジャーや
年長者の方々といった感じでしょうか。
もうひとつ、大学授業では、その先生が「1mあがるために必要であった100段」は
「再現可能性」が高そうですが、
企業で、例えば、その上司が「1mあがるために必要だった100段」は、
・たまたま出会ったその時の上司、先輩
・そのとき、与えられていた仕事
・市場などの外部環境
といった「再現可能性」が低い偶発的な要素が強そうです。
つまり、企業教育において、1mあがるために必要な100段を示すのは、
なかなか難しいのかもしれません。(もちろん示そうとする努力は必要ですが)
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次に、「大学授業」と「企業研修」の共通点として・・・
●共通点
1.集合形態を重視
文科省顧問の方は
・Classroom teaching は無くならない(質を高める必要はある)
・人間同士の心の触れ合いの重要性
を訴えていました。
2.ネットとの関係を模索
その反面、インターネット上での授業内容の無料公開など、
教室形態以外を模索している様子を感じました。
(東大のMOOC http://pc.nikkeibp.co.jp/article/news/20130222/1080950/ )
このあたりは、企業研修が抱える課題と重なるのかもと思いました。
3.もつもの→もたざるもの
大学授業でも、企業研修でも、基本的前提は
知識、技術、経験を「もつ」者(教員、講師)が、
それらを「もたない」者(学生、受講者)に伝えること
と言えそうです。
いくら「導管モデルから対話モデルへ」とは言っても、
そこにはやはり「もつもの→もたざるもの」という前提があるような気がします。
教える側がある程度の正解(1mあがるための100段)をもっていて、
それを直接的に伝えるか、間接的に気づかせることで、学ぶ側に、
その正解を獲得させていく。
大学授業であれば「内容・コンテンツ」をどう伝えていくかが
ありきかもしれませんが、
そもそもその「内容・コンテンツ」が本当に学生に必要なのか
という視点が、今後ますます大事になってくるような気がします。
同じことは、企業研修にも言えて、上司、先輩、研修講師等も
何が正解か分からない、どう変わっていくかもわからない、
そのような状況で「おそらくこれは役立つはず」と信じて、伝えている。
教える側も答えが分からない。
教える側と学ぶ側が、答えややり方を一緒になって模索していく、
作り上げていくような「教育?」が、
今後ますます必要になってくるのかもしれません。
(Engestromの「拡張学習」的な?
 https://www.learn-well.com/blog/2011/05/post_341.html 
 学習目標や理想像の相互構築?
 https://www.learn-well.com/blog/2011/11/post_222.html )
その時に、外部の研修講師として何ができるのか、考えていきたいです。
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貴重な機会を与えて下さった大学の皆さん、ありがとうございました。

投稿者:関根雅泰

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