「日本教育工学会 論文誌」

東大大学院

最近の「日本教育工学会 論文誌」で興味をひかれた論文の一部を
今後のために、ブログに記録しておきます。

(・引用/要約 ○関根の独り言)
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◎日本教育工学会 論文誌 第33巻 増刊号 2009 
●教師が協調学習場面で「足場はずし」を行う際の観点
   坂本篤朗ほか 85-88
・教師が学習者のどのような要因に着目して足場はずし(Fading)を行うのか
 明らかにすることを目的とした。
・支援者が支援から手を引いていく過程やそれを試みるタイミングに関する
 十分な研究は行われていない。
・足場はずしの類型化 
 A)必要性解消による足場はずし
 B)教育的意図による足場はずし
 C)制約および優先順位による足場はずし
・これまで足場はずしは、課題の達成状況のみに焦点があてられていた。
 しかし教師は児童の学習状況だけでなく、児童自身の可能性や教師の効率的な
 ふるまい方を総合的に考慮して足場はずしを行っているものと考えられる。
○新入社員に対するOJT指導員が、手とり足とり教える状態から、
 少しずつ独り立ちさせていく過程を「足場はずし」で表現できるかな。
 (「最初から放置して、足場そのものもかけていない」という
  ことが無いという前提で)
 「必要性解消」「教育的意図」が理想的だけど、どちらかというと
 「制約・優先順位」がニュアンス的に近いのかも。
 -自分の仕事が忙しくなって、面倒が見られなくなってきた
 -新人も大分自分でできるようになってきたので(それに甘えて?)
  放っておくことが増えた
 -新人からの質問、相談が減ったので(それに甘えて?)
  「もう分かっているんだろう」ということで、放っておくことが増えた。
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◎日本教育工学会 研究報告集 09年12月19日
  FDの組織化、大学の組織改革/一般
●ファカルティ・ディベロッパーのID的基礎とは何か
   鈴木克明 
・FD担当者は、高等教育機関におけるインストラクショナルデザイナーで
 あるとみなすことができないだろうか。
・学習意欲を高める方策。IDでは「効果、効率、魅力」の3つの目標の最後、
 「魅力」に関わる研究成果としてARCSモデルがある。
 学習意欲の問題を
  Attention 注意 おもしろそうだな
  Relevance 関連性 やりがいがありそうだな
  Confidence 自信 やればできそうだな
  Satisfaction 満足感 やってよかったな
 の4要素に区分し、問題の所在を明確にしてから対応策を考えるという枠組み。
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●研究室コミュニティ論の構築に向けて:研修室に関する参加、移動、創発のモデル
   辻高明
・研究室での学習について議論するための共通の言語、フレームワークといった
 概念装置が求められる。
・実践コミュニティと学習の関係を説明する理論として
 1)正統的周辺参加論 
 2)共変移
 3)ノットワーキング
 の3つを取り上げ、それらから研究室における学習モデルとして
 参加、移動、創発の3つのモデルを提起する。
・正統的周辺参加モデルは、新入生の研究室への適応過程を説明するのに
 有効なモデル。
・共変移の概念を研究室での学習活動に適用したモデルを「移動のモデル」と呼ぶ。
 研究室間、あるいは研究室と他の世界の間を移動、越境する学生が、それらの
 境界で生じるコンフリクトを乗り越え、知識やアイデンティティを増殖、拡張
 する現象を説明するのに有効。
・ノットワーキングは、学生たちが研究室内外を問わず、目的やニーズに応じて
 臨機応変に結びつき、また結び直しあう創発的な活動をするのに有効。
○俺の立場だと、今まさに「参加」しようとしていて、
 別の世界(仕事:企業内研修)と研究室の間を行きつ戻りつしている。
 今後必要になるのが、自らノットワーキングをしていく姿勢や
 新参者として共同体にまずは受け入れてもらうこと、なのかも。
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●大学と社会をつなぐ体験学習の教育的効果
   酒井浩二
・多様な社会で通用する汎用的能力の育成が教育目標の大きな柱になる。
 この能力を高める教育方法の一つとして、体験学習(Experiential Learning)
 が有効と考える。
・体験学習の学習形態例
 -インターンシップ
 -サービスラーニング
 -PBL
 -宿泊研修
・体験学習を大学教育の中で提供する場合、デューイ(2004)や吉田(2008)の
 指摘のように、学習の内容や方法だけでなく、体験や現場の質を高める必要がある。
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◎日本教育工学会 論文誌 第33巻 No3 2010年1月
  特集:協調学習とネットワークコミュニティ
●知識創造実践のための「知識構築共同体」学習環境
    マリーン・スカーダマリアほか
・共同体の視点が導入される以前は、主に個々の学習者の内的表象の変化を
 学習ととらえる考え方が主流であった。
 SFARD(1998)は、こうした認識論を「獲得メタファ acquisiton metaphor」
 と呼んだ。
・状況的認知や分散認知を支持する研究社の認識論では(SFARDはそれを
 「参加メタファ participation metaphor」と呼んでいる)、学習を社会文化的
 に有意味な実践に参加する活動と捉える。
・相互教授法による文章読解活動は、ジグソー学習法(ARONSON 1978)という
 グループ学習の設計と融合して、学習共同体の根幹をなしている。
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●初任教師メンタリング支援システムFRICAの開発
  脇本健弘ほか 
・メンタリングにおける問題点。メンターの能力により、メンタリングの成果が
 左右されるという指摘がある(Kennedy 1991, Evertson and Smithey 2000)。
・メンタリングは、心理的支援やキャリア的支援などの支援を含む
 (Kram 2003)
・システムの有効性に関して、信頼性を高めるために、被験者間多重ベースライン
 を用いた単一事例実験を行う方法。これは別々の時期に異なる複数の被験者に 
 処遇を行う実験(南風原ほか 2001)
○中原ゼミの先輩、脇本さんの論文
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●幼児のNarrative Skill習得を促す
 親の語りの引き出しかたの向上を支援するシステムの開発
   佐藤朝美 
・幼児の語りの詳細を引き出す言葉がけをする親とそうでない親がいる
○ヒエー。これは怖いなー。うちはどうかな。
・過去の出来事を子供から詳細に引き出すことができる Elaborative mothers と
 単純の質問のくり返ししか行わない Repetitive mothers というスタイルがある
 ことを、Fivush(2007)が明らかにした。
・より詳細な内容を引き出そうとする母親の試みが、より詳細な内容を物語る
 言語的な技能を子供に学ばせていくことを示唆している。
○親もそうかもしれないけど、4歳の次女を見ていると、長女(6歳)と
 遊んだり、口喧嘩したりしながら、言葉が増えている気がする。
 (今もちょうど口げんか中。うるさい。)
 そうはいっても親の引き出しが大事なんだろうなー。父親の役割はどうなのかな。
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●大学院生の研究プロジェクトへの十全的参加の軌跡
    岸磨貴子ほか
・研究論文を書き、研究者になることだけが、大学院進学の目的ではない。
・院生の意識と従来の大学院教育の体質とのズレについて、これまでのような
 徒弟的な形態で教育を行うことには限界があると、曽余田(2001)は指摘。
・職場におけるOJTをそのまま大学院教育に持ち込むことは難しい。
・OJTは、他者と協同した現場での学習という特徴がある。
・従来の学習に関する説明では、教師により知識が伝達され、それが頭の中に
 蓄積されることを学習とみなしてきた。
 レイブとウェンガー(1993)は、知識が個人の中に蓄積されることを学習と
 捉える見方に異議を唱え、実践共同体に参加する過程そのものが、学習である
 とする社会、文化的な視点から状況的学習論を提案した。
・十全的に参加するようになった院生は、リーダーとして必要なノウハウを習得
 していた。それを可能にした行為の一つが「複数のプロジェクトへの参加」で
 あった。
○今まさに、大学院に参加しようとしている自分にとって、参考になる内容。
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●社会人メンターを導入した中学校でのキャリア教育の実践と評価
    尾澤重知ほか
・学習やコミュニケーションにおいて「質問」という行為は重要な役割を担って
 おり、対象に対する理解の度合いや関心の内容を示す指標と考えられる。
・FAQが典型であるように、よく聞かれる質問の検討は、今後のキャリア教育
 プログラム開発の重要な基礎資料になると考えられる。
・メンターとのやりとりに関して「メンターへの質問を考えるのは楽しかった」や
 「メンターからの回答を読むのは楽しかった」という調査項目に対し、
 6~7割が肯定的に回答した。
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●協調学習のプロセスと個人の貢献を測定する試み
   大島純ほか
・協調学習を分析するための理論的な枠組みとして
 「分散知(distributed intelligence)」と「分散認知(distributed cognition)」
 の概念(Salomon 1993)が有効であると考えた。
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●協調学習研究における理論的関心と分析方法の整合性:
  階層的データを扱う統計的分析手法の整理
    北村智
○09年10月に受けた「階層的データ研究会」で読んだ論文。
   https://www.learn-well.com/blog/2009/10/post_289.html
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投稿者:関根雅泰

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