「ウェブ社会をどう生きるか」

お薦めの本

「ウェブ社会をどう生きるか」
  西垣通
 

○立ち止まって「ちょっと待てよ」と考える大事さを教えてくれる。
 東洋人からみた西洋人。

(・引用/要約 ○関根の独り言)
●まえがき
・IT革命とは、中央集権的な近代社会から、
 分権的なウェブ社会へと移行すること
・IT革命後の社会では、一般ユーザーが主役となる。
・米国からのウェブ2.0を手放しで礼賛しない。
●そもそも情報は伝わらない
・ウェブ2.0によって、インターネットは
 真の双方向メディアへの第一歩を踏み出したととらえてよい。
・大げさに騒ぎ立てる人もいるが、立ち止まり考えてみる必要がある。
○こうやって、世間に流されず「ちょっと待てよ」と
 立ち止まって考えられるのが、こういう研究者の方々のすごいところだよな。
 情報、メディアリテラシーがあるということかな。
 俺には、まだまだないなー。
・果たしてウェブ2.0関連企業の検索結果を信頼することは、
 従来のマスメディアを信頼することと本質的にどう異なるのか?
○これは言われてみればそうだよなー。グーグルがどうやって
 検索結果を出しているのか、本当のところはわからない。
 意図的にやっていることだって十分考えられる。
 グーグルのトップページに検索されなくても、
 重要な情報はあるかもしれない。
 あるいは、情報発信者側が「グーグル様」に選んでいただこうと、
 グーグルに好まれる情報内容やだし方をすることもある。現に今そうだ。
 グーグルが、神のような存在になる?
・基本的なアイデアというものは、ある量のまとまった情報に
 ふれることで次第に熟成され、やがて自分の内奥からわきだしてくるもの。
○こういう言葉は勇気がわいてくるよなー。
 この8月はまとまった時間をとって、本を読んでいるが、
 これが後の血肉になり、わき出るもととなることを願いたい。
・自分で悩みながら大きな疑問に取り組み、
 そこから重量感のある言葉を紡ぎだしたような構想力のあるレポートは少ない。
○こういうのが書けるようになりたいなー。
 自分の身体からわき出てくる、頭の奥底から絞りでてくるような文章。
・人間の心は、情報という実体を「入力」されるのではなく、
 刺激を受けて「変容」するだけなのです。
○この辺は「学習」をどうとらえるか(獲得、変化)とも
 関連してくるのかも。
・量子力学では、観察者という存在があらためて問われるようになった。
 不確定性原理。
・情報とは、生物が世界と関係することで出現するものであり、
 生物が生きる上で「意味のあるパターン」ということ。
 情報とは生物にとって意味のあるもの、すなわち「生命情報」となる。
○生物がいなければ、情報は存在しないといってよい?
・「そもそも情報は伝わらない」情報は小包のように
 伝達されるものではない。
・生命情報は変化する。
 機械情報は変化しない。
・ウェブ社会では、この機械情報があふれかえることにより、
 日々変化する人間の思考が柔軟性を失い固定されてしまう。
・人間は変わるのに、情報は変わらない。
・情報や知識を小包のような実体として蓄積、検索できるものと
 とらえる旧来の思考が、ウェブ礼賛論でも貫かれている。
●いまウェブで何がおきているか
・本来の放送と通信の融合が達成されれば、全国に散在する
 一般視聴者が、相互に映像を含む多様な情報を発信し交換しあう
 ことになると期待される。
・日本は世界一のネットインフラ大国になったといってもよい。
・多種多様の関連商品をまとめあげ、総合的なサービスを
 提供する企業が成功する。
・ウェブ2.0の最大の特徴は「ユーザー参加型であること」
・ウェブ閲覧ソフトの上で、多様なアプリケーションサービスを
 提供しようとする。
○今のクラウドコンピューティングにつながる?
・ポータルサイト経由ではなく、
 キーワード入力から検索することが一般に浸透
○この本が書かれたのは、2007年春。
 2009年夏の現在において、キーワード入力は一般化している。
・アドセンスは、ブログを書いているユーザーにとっては
 ちょっとしたアルバイトになる。
○俺は、ブログでアドセンスはやらない。
 だいたい読者としてもブログ記事を読んで、広告をクリックしては見にいかない。
 あるいはクリックして広告を見にいかれたら、自分のブログから
 でていってしまうということ。
 それなら自分のブログをしっかり読んでほしい。
・Gメールを使ってメールを送受信していると、
 広告が文面に張り付いてくる。
○こわいよなー。グーグルが何でも俺たちの行動を見ている。
 Big Brotherみたいな感じになっていくのかな。
・無料サービスは、善意のボランティアというよりも、
 広範な一般ユーザーから巧みに情報を入手するための仕組み
・ライフログをグーグルのデータベースの一部とするならば、
 自分の過去がまるごとビジネスに利用されることを覚悟しないといけない。
○俺らが便利さを追い求めていると、
 いつかそこから逃げ出せなくなる、支配される。
・ウェブ2.0の本質とは何か?それは、IT業界の中の権力闘争に
 ほかならない。マイクロソフト、インテル vs グーグル、アマゾン
○こうやって考えるのはおもしろいなー。
・グーグルで検索した時に現れるのは、概して有名人のブログなど
 アクセス数の多いサイト。一方大多数のサイトは、情報の大海に
 飲み込まれてしまい、浮かび上がるのは容易ではない。
 これを平等主義といえるのか?
○これに関連した問題が、東大大学院2008年の過去問ででていたな。
・検索のメカニズムの精査もせずに、強大な権限を手放しで
 米国の一企業にゆだねるならば、いったいこれを民主主義といえるのか。
・ウェブ集合知を主張するあまり、急速に知の堕落が生じつつ
 あるのではないか。量産される膨大な知識断片の海の中で、
 真に大切な情報が呑み込まれ忘れられてしまうのでは。
・人々の意見交換からすぐれた知的活動が生まれるよう、
 学問の場では厳正な手続きが重んじられる。
 アカデミックな学会における論文査読(blind refereeing)はその典型。
○これがあるから、先行研究が信頼されるものとして、
 次の人たちの引用に使われていくんだろうな。
 いわゆる「ビジネス書」「ノウハウ業」「研修業界」「情報起業」と
 いった分野だと、こういう厳正な手続きはないよな。
 皆勝手に「これがノウハウ」といった形で提示している。俺もそのうちの一人。
 だからこそアカデミックな世界でもまれたい、鍛えられたいと考えている。
 それをビジネスの世界にも持ち込みたい。
●英語の情報がグローバルに動く
・グーグルのページランクの考え方は
 「正のフィードバックのかかるシステム」であり、
 そこでは「強者はますます強くなり、弱者はますます弱くなる」という性質。
○これはあるよなー。
・西洋人はなぜ人工知能(AI)を作りたがるのか。
 それは「一神教の呪縛」から。
 コンピューターは宇宙の森羅万象を論理的に秩序づける機械。
 正しい真理(知識)を論理的、機械的に組み合わせて、人々の問いに
 答えるというのは、一神教の伝統に則った正しい行為。
○こういう見方はおもしろいなー。
 ただ、西洋人は、人型のロボットには抵抗感を示すよなー。神へのおそれ?
・米国は、「ウェブ空間というフロンティア」を開拓し、
 支配して富を得ようとしている。
・フランスのジャヌネは、Google and the Myth of Universal Knowledgeで、
 2つの問題を指摘。
○この人の文章が、小論文問題ででていた。
・英語は事実上の国際共通語ではあるが、これを母語として話す人口は、
 3億5千万ぐらいで、なんとか通じる人口をあわせても10数億ぐらい。
・ウェブの中で英語以外に流通するかもしれない国際共通語、
 その一つは「漢字」である。母語人口では中国語は、10億以上で
 圧倒的1位。アジアでは漢字は通じる。
●生きる意味を検索できるか
・ウェブから情報を検索し、それをもとに知の秩序を自動形成していく
 という発想は基本的に「情報小包論」に基づいている。
・シャノンの情報理論は、機械情報のこと。
 我々が通常情報と呼ぶのは、社会情報のこと。
 しかし、社会情報の「伝達」をシャノンのモデルを使って
 議論することが流行した。
・オートポイエーシス理論は、機械と生物を分かつ考え方としてもっとも有力。
 生物はオートポイエティックシステムであり、それは、
 自分で自分を作ることと、閉鎖していることからなる。
・心もオートポイエティックシステムである。
 心が閉鎖系である以上、情報が小包のように送信者から受信者に
 送り届けられるということはあり得ない。
 情報という刺激を受け取ると、それを自分なりに都合よく解釈して
 自分を変えていくというだけ。
・情報学的には客観的世界は存在しない。
・多元的世界を主張したユクスキュルは、観察者の位置に気づいた。
○このあたりで書いてあることは、正直よくわからない。
 生物、観察者 
 量子力学でも観察者の存在がでてきていたよな。
・あらゆる情報や知識を網羅的、一元的に集め、それを体系化して
 コンピューターにより検索できるようにするといった一神教的な野心は
 捨てた方が賢い。
・真のアイデアを練るには、情報は少ない方がいい
・知恵というのは、数人から数十人くらいの間での対話から生まれやすい。
 メゾレベルコミュニケーション。
●ウェブ社会で格差をなくすには
・東西文化の相違は、教育方法の違いにも現れる。
 渡部信一は「しみ込み型」「教え込み型」とする。
 「しみ込み型」は、日本の伝統芸道における「わざ」の習得過程で
 用いられるもの。学習環境とお手本を重視する。場の中で模倣しながら学んでいく。
 「教え込み型」は、言語化された明示的な知識体系を前提とし、
 細かい要素に分解した知識を学習者の頭脳に計画的に注入していく。
○「しみ込み型」は、時間がかかる。けど、だからこそ学習効果が
 高いともいえる。身になる。
 スピードを求めるビジネスの世界では「教え込み型」が好まれる。
 実際、OJT研修で伝えているのは、どちらかといえば、こちらのやり方。
 TWI、JIのように、作業を要素に分解し、それを示していく。
 ただ、しみこみ型の良さをもっと活かしたやり方もできるのでは。
 西洋的なOJT指導方法に反発を覚える日本的職人さんたちは、
 この「しみこみ型」をよくわかっているのでは。
・新入社員が職場に入った当初は、職場の様々なルールや非明示的な慣習が
 いちいち面倒な制約となって活動を拘束され、不自由に感じる。
 この制約を制約としてあまり意識しなくなることが「学習」である。
・地域SNSは、住民の帰属意識を高め、郷土愛をはぐくむ。
・自分たちの人間関係情報は、自分たちで所有し管理しようという
 地域SNSの発想は、グーグルの無料サービスを利用する代わりに、
 すべての情報をグーグルに提供するというグローバリズムに対抗する
 ローかリズムの好例。
○いろいろ考えさせられるなー。幅広い。

投稿者:関根雅泰

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