●「経験からの学習」 5月9日 @ 東大
 東京大学 中原淳准教授主催のフォーラム
 「プロフェッショナルはどのようにして一人前(熟達者)になるのか?」
 に参加してきました。
 
 今回は、北海道の小樽商科大学で
 「経験からの学習」を著された松尾睦准教授の講演が中心でした。
 事前に本を読んでいたので、
 「この先生の話を聞いてみたい!」と思って参加しました。
 フォーラムの内容を、私の理解の範囲内でお伝えします。
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 1.中原先生のイントロダクション
 ・成人の能力開発の70%は、「経験」を通して行われる
 ・残り30%が、研修等の「Formal Learning」である。
 ・一人前になるのが難しい時代。
  「OJTという名の放置プレイ」が行われている。
 ・何が人を「一人前」にさせるのか? それが本日のテーマ。
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 2.松尾先生の講演
 1)熟達
 ・熟達者になるには、最低10年は必要(「10年ルール」)
 ・熟達者になるためには、2つの学習方法がある
  (1)段階的学習 ←「よく考えられた練習」による
  (2)非段階的学習 ←日本の伝統芸能など 
 2)経験学習
 ・経験から学べる人は、次のようなKolbのサイクルが回せる人。
  (1)自信、楽観的、好奇心旺盛 → (2)挑戦、リスクテイキング
   → (3)難易度の高い課題 → (4)フィードバック、批判にオープン
    → (5)教訓(学び) → (1)自信、楽観的、好奇心旺盛
 ・「経験→内省→(前向きな)教訓→活用」のサイクル
 ・人は挑戦的な課題から学ぶ
 3)様々な業種での熟達プロセス
 ・「どういう経験で力がついたと思いますか?」という質問
 ・マネージャーが集団管理スキルの熟達者になるには、段階的学習が有効
  (例:部下の数を少しずつ増やす)
 ・コンサルタントが分析概念スキルの熟達者になるには、非段階的学習が有効
  (例:修羅場体験をさせる)
 ・中期(30歳前後)における経験がカギ
 ・他者(先輩・上司)よりも、自分の職務を通して学んでいる
 ・目標達成の信念は「短期的な業績」に結びつく。
  顧客志向の信念は「長期的な学習」に結びつく。
 ・自己と他者への関心のバランスが成長のカギ。
 4)実践への応用:経験学習のマネジメント
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 「経験学習を促すために、どんな工夫をしていますか?」
 松尾教授のこの質問をきっかけに、様々なアイデアが
 私の中にも浮かんできました。
 ・本人が、経験から学べるよう支援する
 ・そのために、先輩、上司は「(成長を促しそうな)経験」をする機会を与える
  例)難易度の高い仕事、挑戦的な課題、ストレッチ目標、一人でやらせる
 ・そして、相手がその「経験」に逃げずに挑戦するよう手助けすること。
 ・本人の成長を支援するために、他者ができることは
  成長しそうな「経験」をさせることと、
  その経験から「教訓(学び)」を導き出せるよう「ふり返り」をさせること。
 ・「ふり返り」の手段として有効なのが、
  本人に何かを書かせること
  質問して考えさせること。
 ・まずは、教える側が自分の経験を整理し
  「どういう経験を通して、自分の力がついたのか?」をふり返る必要がある。
 ・その経験が、そのまま相手に通じるとは限らないが、
  相手の成長を促す「経験」としての参考にはなる。
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 3.中原先生のラップアップ(まとめ)
 ・個人のキャラ+外的要因(組織)=経験の質
 ・経験の質+経験学習能力=知識・スキル
 ・個人のキャラはどうしようもない。
  コントロールできるのは、外的要因と学習能力。
 ・職種によってどんな経験が必要かは違ってくる。
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 今回も非常に勉強になりました。
 東大でのフォーラムには、今後も定期的に参加しようと思っています。
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