○日本評価学会で紹介されていた「M.スクリヴエン追悼」特集(Journal of MultiDisciplinary Evaluation Vol.20, 2024)佐々木亮先生も寄稿。(5本)
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J.Clinton & J.Hattie(2024)
Revisiting and Expanding Scriven’s Fallacies about Formative and Summative Evaluation
・評価という学問領域は新しい。
・その創設メンバーが、Scriven、Tyler、Stake、Stufflebeamらである。
・L.Cronbachクロンバックと、スクリヴェンとの論争から、Formative形成的とSummative総括的評価という概念が生まれた。
・クロンバックとSuppes(1969)は、Conclusion-oriented研究と、Desicion-oriented研究を区別した。
・クロンバック(1964)は、「評価はコースの改善に用いられるべき」と考えた。
・スクリヴェン(1967)は、評価のGoalとRoleを区別した上で、「評価のゴールは、Merit、Worth、Valueに関連するもので、評価のロールは変化する」と述べた。
・スクリヴェン(1991)は、形成的評価のほうが、総括的評価より重要であるという見方に同意しなかった。
・スクリヴェン(1990)は、Bob Stakeの比喩を使い「コックが、スープの味見をするのが、形成的評価で、ゲストが、スープを味わうのが、総括的評価である」と表現した。
・しかし、形成的評価と総括的評価には、Fallacies誤謬、間違った考えがつきまとった。それらの誤謬を指摘する。
-形成的と総括的は、違うタイプの評価ではない
-形成的は、総括的よりも、インフォーマルなプロセスではない
-形成的のほうが、総括的よりも、価値があるわけではない
-形成的は、Overall ratingをしないわけではない
-評価者の義務は、事実を提示し、解釈を受け手にさせるものではない
-形成的は、向上が必要な時にだけ求められるものではない
-形成的は、必ず向上をもたらすわけではない
-形成的評価をするために、評価者は、評価対象と同じ領域での専門性を有している必要があるわけではない
-形成的テストや総括的テストというものは存在しない(これは、Bloom et al.1971の影響が強い)
Formative assessment Summative assessment
-形成的が良くて、総括的が悪いということは無い
-形成的はコメント中心で、総括的が数字中心という訳ではない
-形成的介入が良くて、総括的介入が悪いということはない
・Williamは「Assessmentという言葉を使ったのが間違いだった。人々は、テストや試験を思い浮かべる」とのちに語っている。
・Improvement向上/改善か、Statusか。DuringかAfterか。飛行中か着陸時か。これらが形成的と総括的の違い。
・形成的、総括的、Ascriptive記述的、Development発展的といった評価の役割がある
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Ryo Sasaki(2024)
Influence of Michael Scriven in Japan.
・私が西ミシガン大学 評価センターで博士課程にいた時のメンターが、スクリヴェンであった。
・2000年に、日本で、Japan Evaluation Centerが創設された。
・スクリヴェン(Scriven 1999)は、数学の公式のように、評価を定義した。Evaluation = Factual premises + Value premises
・日本でもこの公式は広く受け入れられ、評価には、「Factual findings」と「Value determination」が含まれると考えられるようになった。
・ただ、日本では「良い、悪い」を言うことで責任を負いたくないと考える評価者もいる。
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S.Donaldson(2024)
The Importance of Conceputualizing Evaluation as a Transdiscipline: Honoring Michael Scriven’s Legacy.
・統計のように、他の学問分野に、評価という必須のツールを提供した。
・例えば、教育学、公共衛生、応用心理学、社会学、政策研究、公共政策、経済学、政治学、HRM等。
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B.W.Youker(2024)
Scriven’s Goal-Free Evaluation.
・「プログラムがしようとしていることではなく、実際にプログラムがしていること」を見つけるのが、Goal-Free Evaluation。(Scriven 1991)
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E.J.Davidson(2024)
Behind That Intimidating Exterior: A Tribute to “Uncle Michael” Scriven.
・Scrivenは、1928年に生まれた。彼の母親は、オーストラリア人であった。
・彼は、18歳のM.A.Warrenと出会った。
・Scriven は、Michael Quinn Patton(MQP)を、「羊の服を着た狼」と呼んでいたが、MQPは、Scrivenのことを「狼の服を着た羊」と言っていた。
・Evaluative question:Whether it was good or ethical. 評価的質問とは、それが「良いのか」「倫理的なのか」を問う事。
○何らかの施策を評価するということは、それが、人間社会や環境にとって「良いのか」ということすら問うことになるってことなのかも。研修評価は、まだそこまで行きついていないと思う。
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