【木曜日22-51】Self-employment 文献(3)

木曜日

【木曜日22-51】Self-employment 文献(3)

○自営業者に関する論文

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Blanchflower,D.G.,Oswald,A.& Stutzer,A.(2001)

Latent Entrepreneurship Across Nations.

Forthcoming in the European Economic Review.

・Latent entrepreneurship潜在的起業家の数と割合を調査。

・Entrepreneurial spirit起業精神は、国によって違うと言われてきた。例えば、アメリカは高く、東ヨーロッパは低いと。

・本研究では、Self-employmentに注目する。なぜなら、それは最も単純な形態のEntrepreneurial activity 起業活動だからだ。

・23か国、約25,000人のデータを使用。1997年と1998年には、対面でのインタビューも行った。

・産業国家では、9/10の労働者が、従業員である。
 農業国家では、自営業者の割合が高い。
・多くの国では、10%~15%が、自営業者である。

・ポーランド、ポルトガル、アメリカが、潜在的起業家の割合のトップ3であり、ロシア、デンマーク、ノルウェーが、ボトム3である。

・ポルトガル、アメリカ、スイスは、低い失業率の国である。潜在的起業家の割合は上位である。それに対して、オランダと日本も、失業率が低い。潜在的起業家の割合は、中間から下位である。

○失業率の高さは、潜在的起業家の割合を説明しないということ?

・高い教育を受けた人ほど、自営業者になってない。
・男性は、自営業者である確率が、女性に比べて高い。
・年齢が上がるほど、自営業である確率が高い。

・若い人ほど、潜在的起業家(自営業となることを好んでいる)である。
・実際に、自営業者になっているのは、年長者である。
・若い人は、潜在的起業家でありながら、実際に起業をするのは、年を取ってからである。

・であるならば、まだ開拓されていない潜在的な起業家がいると言える。

・若い人が起業したいと考えながら出来てないとするならば、Capital資本不足がその一因であろう。
・彼らに対して、資本を得やすくすることが、起業家の数を増やすことにつながるだろう。

○比企起業大学では「小さく始めて、大きくせずに、長く続ける」ことを重視している。だから、資本が必要な業界や事業は、そもそも選ばないことを勧めている。弱者は、金をあまり使わずに、頭と体をフルに使って儲けられる所から始めるべきと考えている。

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Zoltan Acs,Z.(2006)

How Is Entrepreneurship Good for Economic Growth?

Tagore LLC innovations / winter 2006.

・経済成長に、どのように起業は貢献しているのか?

・著者は、Global Entrepreneurship Monitor(GEM)の責任者を務めていた。
・GEMでは、「Necessity entrepreneurship 必要性にかられた起業」と「Opportunity entrepreneurship 機会を見つけての起業」を区別する。

・Op起業は、経済成長にポジティブな影響を及ぼすが、Nc起業は、ネガティブな影響をもたらす。
・Op起業とNc起業の割合こそが、経済成長を測る指標になるだろう。

・GEMは、1999年に10か国で始まり、2005年には39か国が参加している。
・日本は、とても低いレベルでのOp起業と低い成長状態である。

・日本は起業活動が最も低いレベルであり、アメリカが最も高いレベルにある。

・高いレベルのNc起業国は、起業活動も低いレベルにある。
・収入レベルと、Op起業とNc起業の割合には、正の関係がある。
・Op起業の高い国は、収入レベルも高い。

・起業を「Self-employment自営業」と定義すると、それは経済成長をもたらしていない。
・Op起業を増やし、Nc起業(自営業)が減ることで、経済成長が促される。

○Self-Employment=Necessity entrepreneurship と見るのは、大きなデータとしては確かにそうなんだろう。けど、もう少し細かく見ていくと、Opportunityを見つけて、あるいはそれがあるのではないかと考えて、SEになった人たち(Op起業)もいる。Op起業だからといって、必ずしも、成長(拡大)や雇用増を目指してない人達もいる。そこに光をあてたいな。

・国の収入が少ない時は、SEが職の機会と市場創造につながる。
・人が雇用されるようになってくると、スタートアップの数は減る。
・経済が成長していくと、個人が事業を始める資本を持てるようになってくる。

・国の経済成長段階によって取るべき施策は変わってくる。

・歴史的に、Entrepreneurshipには、2つの意味を持つ。
 1)事業を所有し管理する:Occupational
 2)経済機会を獲得する:Behavioral

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Poh Kam Wong, Yuen Ping Ho, & Erkko Autio
(2005)

Entrepreneurship, Innovation and Economic Growth: Evidence from GEM data

Small Business Economics (2005) 24: 335–350

・job creation 研究として、Davidsson et al.(1995)があり、新しい小企業が、地域経済に重要な役割を果たしていることを明らかにしている。

○この文献、5,000円で購入。

・Schumpeter効果:新しい企業が、雇用を増やす(Picot et al.1998)
・Refugee効果:失業が、自営業を増やす(Evans & Leighton,1989; Reynolds et al.1994)

・GEM 2002.37か国のデータを分析。
・経済成長:一人当たりの5年間のGDP成長率を指標に。

・イノベーションは、GDP成長に正の関係を持っていた。
・全TEA(Total Entrepreneurial Activity)の高さは、高いGDP成長率に関係していなかった。
・4つのTEAの内、High Potential TEAのみが、経済成長に影響をもたらしていた。

・本研究の主要な発見は、High Potential TEAのみが、経済成長を産み出す起業活動であることを明らかにした点だ。

・High Potential TEAである「Gazelleガゼル企業」(Birch et al.,1997)こそが、経済成長に寄与していると言える。

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C. Mirjam van Praag Æ Peter H. Versloot(2007)

What is the value of entrepreneurship? A review of recent research.

Small Bus Econ (2007) 29:351–382

○近年(1995~2007)の実証研究57本(87の研究)をレビュー。

・Entrepreneurial firms:100名未満、設立7年未満
 Incumbent firms:100名以上、設立7年以上

・Entrepreneurs:Self-employed 自営業者、Owner-manager オーナー・マネジャー
Employees

・100名が、小と大企業を分ける境。

・雇用、イノベーション、生産性と成長、効用への起業の影響を分析。

・Hamilton(2000)Kawaguchi(2002)は、起業家の収入(中央値)は、賃金労働者よりも低いことを明らかにした。
・Rosen & Willen (2002)は、教育レベルによって、賃金労働者よりも、起業家の方が高い収入(中央値)であったことを明らかにした。
・Holtz-Eakin et al.(2000)は、自営業者は、賃金労働者よりも、高い収入成長となっていることを明らかにした。

・起業は、社会的移動には有効で、Super income earner 超収入獲得者になる可能性を秘めている。

・収入の不平等と不確実性は、起業家の方が高い。
・起業家の収入は、GNP、失業率の影響を受けやすい。

・Blanchflower & Oswald(1998)の記念碑的な論文「What makes an entrepreneur?」により、起業家は、Life satisfactionが高いことが示された。

○これも読もう!


・Benz & Frey(2003)は、起業家はより面白い仕事と自律により、仕事に満足していることを明らかにした。

・起業家の収入は中央値では低いが、仕事や人生に満足しているという結果だった。

・起業家の会社は、地域の既存企業に、Spillover effects 波及効果を持つ可能性がある(Scott 2006)

○この論文、読んでみよう! Scott,A.J.(2006) ENTREPRENEURSHIP, INNOVATION AND INDUSTRIAL DEVELOPMENT:GEOGRAPHY AND THE CREATIVE FIELD REVISITED.

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投稿者:関根雅泰

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