【木曜日22-49】Self-employment 文献(1)

木曜日

【木曜日22-49】Self-employment 文献(1)

○「Self-employment(自営業者)」に関する英語論文。

===

Blanchflower,D.G.& Oswald,A.J.(1992)

Entrepeneurship, Happiness and Supernormal Returns: Evidence from Britain and The US.

NBER Working Paper #4228.

・Evans & Jovanovic (1989)らが示したのは、Family assets家族の資産が多いほど、Self-employment 自営業にあるということ。

・自営業者は、Job satisfaction職務満足が、Employee従業員より高かった。

・経済学者は(心理学的な)満足度といったデータを使わないことが多い。

・自営業者は、従業員より、高いレベルでのWell-being幸福を保っていると言える。

===

Hamilton,B.H.(2000)

Does Entrepreneurship Pay? An Empirical Analysis of the Returns to Self-Employment.

Journal of Political Economy, 2000, vol. 108, no.3.p604-631.

・3つのモデル
 1)Investment and agency model(例:Lazear 1981)
 2)Matching and learning model(例:Jovanovic 1982)
 3)Superstar models(Rosen 1981)

・Business owners自営業者は、Paid employees従業員より、長く仕事経験を積み、高い教育を受け、結婚している白人である。

・自営業者へのリターンは、給料よりも安い。

・学歴が無い entrepreneur 起業家は、Wage workers賃金労働者よりも、低い稼ぎになっている。
・黒人の自営業者の稼ぎは少ない。

・起業家になると、従業員でいた時よりも、35%、稼ぎが減る。
・起業家が、賃金労働者に戻ると、高い稼ぎを得るようになる。

・起業家は、金銭的リターンを犠牲にし、nonpecuniary benefits 非金銭的利益(例:Being my onwn boss-independence 自分のボスになる、独立)を得ていると言えるのかもしれない。

===

Parasuraman,S.& Simmers,C.A.(2001)

Type of employment, work-family conflict and well-being: a comparative study.

Journal of Organizational Behavior. 22. p551-568.

・本研究では、2種類の雇用について検討する
 1)Organizational employment 組織雇用
 2)Self-employment 自己雇用

・本研究の概念モデル

・自営のビジネスオーナーは、より高いfreedom 自由度、autonomy 自律性、自己実現機会をもつと言われている(Eden 1975他)
・彼らは、組織雇用者より、長時間労働をしている(Hornaday & Aboud 1987)。

・アメリカで共働き夫婦からデータを取得。386のデータの内、287(140が男性、147が女性)が組織雇用、99(53が男性、46が女性)が自己雇用であった。

・結果、自営業者は、高い自律性、より柔軟なスケジュール、仕事への高い関与が、組織雇用者に比べて見られた。
・しかし、自営業者は、高いFamily role pressure家庭役割重圧、低いFamily satisfaction家庭満足という状態であった。

・男性は、自営も組織雇用者も、女性よりも、少ない家庭役割を担っていた。
・仕事への時間コミットが、Work-family conflict仕事家庭葛藤の主要な先行要因であった。

・自営は、仕事と家庭のバランスを取る手段としてよりも、負担になっていた。

・自営は、職務満足は高いが、家庭満足が低い。
・組織雇用者は、仕事役割に対する感情的関与が、自営に比べて低い。

・女性は、仕事家庭葛藤が、男性に比べて少ない。女性はより家庭に関与し、より時間を取っていた。

・自営には、費用と利益の両方がある。

○確かに、独立すると、仕事が楽しいし、稼ぐためにも、長時間労働になりがち(例えば、ランチェスター竹田先生だと、1日10時間以上、年間3200時間の長時間労働を推奨される)。

 だからこそ、自分がいくら稼ぐ必要があるのか(=分度)をはっきりさせた上で、家族との時間を、意識的に取っていく必要があるんだろうな~。

 「分度を稼いで、余剰を推譲(二宮尊徳)」 
 「近き者よろこべば、遠き者きたらん(論語)」 ←身近な家族を大切に。

===

Tobias J. Moskowitz,T.J.& Vissing-Jørgensen,A.(2002)

THE RETURNS TO ENTREPRENEURIAL INVESTMENT: A PRIVATE EQUITY PREMIUM PUZZLE?

NBER Working Paper No.8876. p1-53.

・民間企業が、最初の10年を生き残る率は、34%である。
・起業における Equity return 自己資本のリターンも、低い。

・起業家の多くは、製造業(21.4%)サービス業(30%)小売業(21.8%)である。
・多くの起業家が、自身にSalary給与を払ってない。

・起業家は、自己資本を一つの民間企業にのみ投資しているため、そのリスクは高い。

・61.5%の企業が、最初の5年間で無くなっている。
・10年生き残る率は、34.4%である。
・設立10年~19年の企業が、2年間生き残る率は、73.9%であり、10年生き残る率は、48.8%である。

○10年生き残る34%に入れれば、その後20年間生き残る50%内に入れる。2005年設立の弊社は、18年目。もうすぐ20年。「小さく始めて、大きくせずに、長く続ける」をモットーに、生き残ろう。

・「Why do people become entrepreneurs?」何故人は起業家になるのか?

・poor risk-return trade-off of existing entrepreneurs 起業家に存在する貧相なリスク・リターンの二律背反性。

・5つの理由
 1)リスクに耐えられる
 2)他の金銭的利益と費用(例:節税)
 3)非金銭的利益(例:柔軟性、自律性)
 4)Preference for skewness 歪みへの嗜好?
 5)楽観主義とリスクの見過ごし

・楽観的な希望を持っている起業家候補には、教育が必要。政府系金融機関による小規模ビジネスローンの提供ではなく。

○そうだよな~。中途半端にお金を持たせても、起業初心者だと、結局、生活費に使われて、投資に使われない。それよりも「事業経営」(始めるのは簡単だけど、続けるのは大変)について、きちんと学んでもらい、自らの力で「顧客づくり・商品づくり・現金のこし」できるよう教育支援を行っていた方が良いと思う。そう思っているからこそ、比企起業大学・大学院を運営している。

===

投稿者:関根雅泰

コメントフォーム

ページトップに戻る