最近、読んだ林業関連の本や資料。
(・印象に残った点の抜粋 ○関根の独り言)
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『ウッドファースト! 建築に木を使い、日本の山を生かす』上田篤(編)2016
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●ウッドファーストを進めよう
・地方衰退の根本には、山の荒廃がある。
・山を活性化する突破口は、山の最大の資源である
木材の生産とその販路の拡張。
・木の柱=神様
・木の持つ暖かさなどといった人間身体に与える利点を考えると、人が住む住宅や
マンション、老人ホーム、病院病棟、さらには長時間にわたって居続ける託児所、
学校建築などには、木材や木質材料がとり入れられるべき。
・人々が木に抱く「火事に弱い、地震で倒れる、津波で流される、朽ち果てていく」
という意識を変えることが重要。
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●日本の山・木・建築はどうあるべきか
・新国立競技場 A案:木の緑壁 B案:木の列柱 A案が採用された。
・木はこれまで使い過ぎて問題になっていたのに、今や一転して
余っているので、どんどん使おうよ、と簡単に言い切っていいのか?
・かつては大切に使わないと足りなくなると心配していたはずの木材が
今は余っているというこのギャップを突き詰めていくべき。
・近代建築で木が嫌われた一番の理由は、木は一本一本違うということ。
・コンクリートは耐用年数が短い。50年ほど。
・幼い子供たちに木に触れさせるところに、ウッドファーストの
スタートラインがあるのではないかと。
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●日本人と木の家
・木は燃えやすいが、燃え尽きない。
・予測できない心地よさが木目にある。木目の「いい加減さ」と
自然の「ゆらぎ」は、人々の心をリフレッシュさせる効果があるからだ。
・静岡大学の実験で、木、鉄、コンクリートの箱で飼育されたマウスから
産まれた子マウスの23日後生存率は、木箱で85.1%、鉄箱で41.0%、
コンクリート箱は、6.9%であったという。
・日本の森林では、年間一億㎥が備蓄されている。しかし、2012年の
木材需要が7000万㎥あるにもかかわらず、1300万㎥しか
国産材が使用されていない。
この差分が日本の山を荒廃させる最大の原因である。
・木の特徴:
1)背が高い 2)幹がかたくて頑丈 3)木は食べられない
4)個体生命が長い 5)主生命として長寿 これらが「柱信仰」に。
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●木の家の良さ
・生きている樹木は、フィトンチッドと呼ばれる樹木固有の揮発性有機化合物
(VOC)を放出している。いわゆるテルペン類等と呼ばれる精油成分である。
これら樹木の精油成分は、抗ウイルス作用、利尿作用、殺菌作用、抗炎症作用、
抗アレルギー作用、免疫力向上などの薬効があることが知られている。
・しかし伐採された木材が、樹木と同様にVOCを放出すると共に、大気汚染物質
を吸収、吸着することはあまり認識されていない。
木造建築物の内部では、二酸化炭素、オゾン等が外気よりも、70~90%
減少することが、1250年前に建設された東大寺正倉院のヒノキ材校倉の
内部でも観察されることが最近の研究で知られている。
・木材には優れた断熱、保温性能があることも良く知られている。
・いま、わが国の森林は大変荒廃している。国土を保全し、水を浄化し、
生物多様性を保持するなど環境を守る森林の機能が十分に発揮できない
危機的な状態にある。
この理由は、スギ、ヒノキ、カラマツなど、戦後植栽した1000万ヘクタール
以上に及ぶ人工造林が利用できる大きさに育ってきたにも関わらず、十分
活用されていないためである。
・コンサルタントや森林組合が協業して、森林経営と施業、さらに木材加工を
実施しているケース(岡山県西粟倉村)
・山から原木丸太を下し、代価を山に還す経済システムの構築が林業再生に
とって不可欠。
・人の健康には「空気の質」が大事。
特に、室内空気の質 Indoor Air Quality が重要。
・木材、特にスギ材には優れた空気浄化機能があり、木材の内装仕上げによって
施主や利用者から「よく眠れるようになった」「喘息が軽快した」「アトピーの
かゆみがなくなった」「風邪をひきにくくなった」という声が聞かれる。
・現在広く普及している105㎜、120㎜を基本とした材。
・都市の森林「都市木造」 地産都消
・都市に多くの木造建築を建て、街中に二酸化炭素を固定化する
「都市(まち)に森をつくる」運動を展開中。(株シェルター 木村氏)
・山を豊かにするとは、山を支える人々、つまり木材産業の上流で働く
人々に還元される富を増やすことでもある。
そのためには、零細企業でも取り組むことができ、その収益の大半が
人件費に充てられるような技術が必要なはず。
・「ハイコンセプト・ローテック」身の回りの技術による付加価値化。
・林業から建築に至る連携の欠如と利益相反が、木材界の最大の問題。
川上や川中のあり方に配慮することなく、木造建築が設計されているのが実態。
まず建築が山に歩み寄ってもよいのではないだろうか(網野禎昭教授)
・非住宅建物(特に超高層オフィスビル)の床の構造体に木質材料の使用を進める
・日曜大工で山を救えるか。まず端材の販路として役立つ。
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●適材適所の「木の建築」
・日本型近代主義の思考構造が、木材の利用を排除する方向に働く。
近代主義と木の親和性の悪さ。
・近代主義が排除しようと努めてきた「剰余性」は想定外の事態に対する
担保(能力)ということもできる。
・木造建築と建築の木質化
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・森や林業のことが多くの国民にあまり知られていない、まだ色々な誤解がある。
(例:割り箸は間伐材を使って活かされているにも関わらず勿体ないという意見)
・「木は使われることで、山は育つ」
・日本の美の特質は、抽象にある。形を簡素化した、形から外れぬ抽象。
・日本人は木に単なる素材以上のものを見出していたのではないか。
・団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」
・都市でも森林の恩恵について身近に考えていくためには、
木に触れる機会を作ることが重要である。
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●山を生かし、里を生かす
・日本の今の森林は最も充実している。
・ニホンジカの生息数の増加は、林業に新たな負担を与えるようになっている。
・林業は労働災害がとても多い。100人の職場があれば、
年2名の死亡事故が発生。
・木材価格の下落は、林業の活動を一気に低下させて、林家の森林への関心は
どんどん低下していった。
・林業という産業は、想像力が大事。将来の姿を、今の森林から、その時に行う
作業から想像することがとても大事。 (速水林業 速水氏)
・林業家は、価格が高い製材用の需要動向に一番の関心がある。
・立木価格すなわち山林所有者の所得が、ここ30年で約10分の一に低下している
という現実がある。
・スギ、ヒノキの国産無垢材の一番の顧客は、中小ビルダーと大工、工務店。
中小工務店の方が、国産無垢材製品を使いこなしやすい。
・山林所有者の伐採の意思決定がなければ、原料供給はなされない
(山長林業 榎本氏)
・林業経営の収支構造
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・A材の需要拡大とそれに伴う再生産投資を可能とする適正価格の形成が、
日本の森林を再生するための最大の懸案事項。
・木の良さを知ってもらうために、保育所、幼稚園、学校施設、図書館等の
木質化や机、本棚などの備品への国内産無垢材の活用は、教育効果も含めて
特に力をいれるべき。
・原木で輸出するのではなく製材品として。
・LEAF(LEarning about Forest)自然体験教育を通じて「将来の木材消費者」
に木に親しみをもってもらう。(マルカ林業 海瀬氏)
・焦りか諦めか、昨今の林業界と木材産業は、短絡的というか刹那主義的に。
・日本林業の根本療法として「自伐型林業」
限られた森林を離れず、自ら持続的に経営、管理、施業しながら、
持続的に収入を得ていく自立、自営の林業である。
・日本一の大山林所有者は国有林である。
・現行林業(委託・請負型林業)は問題点が多すぎる。
多数の山主の山林を集約し、森林組合等が請け負う。所有と経営の分離。
・林業の経営体は、山林所有者である。(中嶋氏)
・1㎥あたり、100ドル(1万円)が国際相場。
・木や森への無関心。これこそが戦後日本人の大きな特徴では。
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●「木」からの地方創生
・ニュータウンの建て替え時期。
・地域開発で一番大切なことは、地域の人々の誇りを掘り起こすこと。
・山の問題というのは、山で暮らす人たち、山を支える人たちを、
どう食わしていくかという人の問題。
○「山の問題=人の問題」は、そうなんだろうな。
特に「山主さん」が、山を持ち続ける意思をもってくれるかが大事なように思う。
そこに、俺たちができることは少ないかもしれないけど、できることをしていこう。
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『日経グローカル 2016年12月5日 No.305』
・現在の年間成長量は、約1億㎥と推定されている。
資源小国の日本にあって貴重な循環資源だが、上手に生かしきれず
むしろ輸入材への依存を続けるなど「宝の持ち腐れ状態」となっているのが
現在の日本の林業、木材産業の実情だ。
・毎年の森林蓄積の成長分(約1億㎥)だけで年間の木材需要をすべて賄え
おつりまでくる計算だが、実際には成長量の4分の1しか伐採、活用していない。
・人工林の面積は、2012年3月末で1029ha(約10.3万キロ㎡)に達し、
森林面積全体の約41%を占めている。
・森林の年齢(林齢)は、5年をひとくくりにした「齢級」を単位としている。
木材として本格的に利用可能となるのは、おおむね10齢級(46~50年生)以上の
高齢級。その10齢級以上の人工林が2012年3月末で人口面積全体の約51%と
半数を超え、活用の適齢期を迎えている。
・「後は伐採されるのを待つばかり」という成熟林がひしめいているにも関わらず
輸入材が引き続き幅を利かせている現状が、日本の林業、木材産業の危機的な
状況を物語っている。
・「川下」と呼ばれる木材の「販売・消費・利用」の分野で国産材の需要を拡大し
需給関係や森林経営の収支を好転させる必要がある。
・「川上」と呼ばれる原木の「伐採・育成」分野の採算性を好転させると共に、
「川中」と呼ばれる木材の「製造・加工・流通」分野を強化・効率化させる。
・山形県南陽市 世界最大の木造ホール
木が持っている温度、湿度の調節機能のおかげで、冷暖房や加湿、除湿の
費用が少なくてすみ、年間の光熱費は現在、約1600万円で、当初計画の
4000万円を大幅に下回っている。
「木造はイニシャルコスト(建設費)は割高でも、ランニングコスト(維持管理費)
は抑えられ、トータルでは低コストになる」
・埼玉県ときがわ町 町長主導で独自の木質化方式を推進
「ときがわ方式」と呼ばれる「耐震補強・大規模改修」と「内装木質化」を
組み合わせた独自の公共建築物の改修手法。
鉄筋コンクリートで、冬場に湿度を30%に保つのは難しい。30%をきると
喉が乾燥し風邪やインフルエンザにかかりやすくなる。
木で30%以下になることはほとんどなく、実際、木造、木質にすると風邪や
インフルエンザにかかる児童、生徒が少なくなるという。
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『木材利用システム研究 vol.1 2015』
http://woodforum.jp/journal.html#vol1
・「森林・林業再生プラン」2020年が目標年。
国産材の需要を、4~5000万㎥/年に増加し、木材自給率を50%以上とする。
・戦後70年の木材需給の動向
1)戦後復興期(1945~1954)
2)高度成長期(1955~1973)
3)中位成長期(1974~1991)
4)低成長期(1992~2011)
・国内新規需要と海外マーケットの開拓により、木材自給率100%を目指すべき。
(東京大学 井上雅文 准教授)
・森林組合や原木市場等のこれまで川上と川中をつなぐ働きをしてきた
事業体が、透明性をもって事業拡大していくことも重要。
・都市部で木材をできるだけ長期間使用することは、
都市部に新たな森を作るのと同じ。
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『地球温暖化対策が牽引する木材利用促進』
井上雅文 東京大学 准教授へのインタビュー記事
http://www2.panasonic.biz/es/solution/interview/vol10inoue/
・自給率が低下した理由は、戦後の復興に伴う都市計画における建築資材の
調達と、戦中戦後に荒廃した森林の再生と保全に対する措置として実施された
戦後の木材利用抑制政策が原因。
・現在は、若い木が少ない。森林も少子高齢化。
・未来の子供たちのために、今植えることが大切。
植える場所を確保するためにも、今成長した日本の木を使わなければならない。
・地球温暖化を緩和するには「個体の炭素」を増やして「気体の炭素」を
減らすことが重要。
・木材は、燃えたり、腐ったりするまでの間は、樹木が固定した炭素を
固定し続けている。木造住宅や木材製品は、「炭素の保管庫」としての
働きがある。
・非住宅建築のほとんどは鉄筋コンクリートや鉄骨造。それらの建物が60年の耐用
年数を経て、建て替え期を迎えようとしている。
・木材は、約100ドル/㎥の国際流通商品。地産外商を目指すべき。
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『森林・林業学習館』 http://www.shinrin-ringyou.com/
・木材は炭素の貯蔵庫、木造住宅は都市の森林
・身の回りに木製品が増えるほど、大気中の二酸化炭素を減らすことになり、
温暖化防止に役立つ。
・木材は「炭素の貯蔵庫」「炭素の缶詰」などと言われている。
・木造住宅などを解体し、それを燃やしたときには、二酸化炭素を放出するが
もともと大気中に存在していた二酸化炭素なので、長期的に見れば、
大気中の二酸化炭素の増減はない。この考え方は「カーボンニュートラル」
といわれる。
・炭素を減らすこと=二酸化炭素を減らすこと=地球温暖化防止
これが「低炭素社会」というキーワードの由来。
・木材の重さがわかれば、その木材が固定している炭素の重さがわかる(約50%)
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○山の問題はでかい。
時の流れが長い、関わる人が多い、自然が相手、等、難しいことが多い。
しかも、高齢林を、今、伐採すべきだから、タイムリミットもある(あと10年?)
TCができること、まずは・・・
-小さくとも、売り先を増やすこと
-木、森、山に関心をもつ人を増やすこと かな。
外から関わり始めた俺たちだからこそ、できることをしていこう。
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●「林業」本(1) https://www.learn-well.com/blog/2016/01/post_457.html
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