『Reengineering Corporate Training』

お薦めの本

『Reengineering Corporate Training』

○転移促進における学習者個人の役割に着目した本。
 「転移魂」という言葉が、個人的に好き。

(・要約 ○関根の独り言)
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Introduction
・Transfer of Learning 学習転移は、すべてのTraining programs
 研修プログラムのゴールである。
・学習転移は難しくない。Hard workは必要だが。
・どのように学習転移を、研修プログラムの中で起こしていくか。
・Training志向から、Learning志向へのシフトが必要。
・学習転移は、Thorndike(1901)による認知心理学の古典的研究まで
 遡れる。
・ビジネスにおける学習転移を取り扱った書籍2冊:
 『Transfer of Training』
 『Training and Transfer of Learning』
 この2冊は、研修転移を起こすための組織的支援システムについて
 書かれている。
・本書は、学習転移を可能にするための個人のメンタルプロセスに
 焦点をあてる。
○面白そうだね~。確かにこういう本はなかったかも。
 「市場に出てないから、自分で書いた」ってかっこいいね。

1. Why Corporate Transfer of Learning Isn’t Only Nice but
Absolutely Nessesary:The Documented Failure of HRD
Training Programs
・学校教育も、学習転移に失敗してきた。
・HRD研修の有効性を実証した研究は少ない。
・Core skills 核となる汎用性のあるスキルというアプローチは、
 魅力的だが、適切ではない。
・チームワークについて教えてきた筆者であっても、
 上手くチームワークができてない。
・多くの研修プログラムが肯定的な成果を宣伝し「ミラクルメソッド」
 を喧伝する。例えば、加速、総合的、超学習法といったもの。
・しかしそれらの学習方法の効果は実証されてない。
・ビジネスゲーム研修での行動と、実際のビジネスを成功に導く行動
 には、負またはゼロの関係性しかない。
・我々は「我々が良いと思うからする」ということをすべきではない。
・Negative transfer 否定的転移?という現象もある。
 不十分な知識での極端な一般化のこと。
・学習は、学習転移の一形態である。

2. What Transfer of Learning Is and Why It Both Does and
Doesn’t Occur
・「研修転移」と違い「学習転移」は、単に研修室で学んだことを、
 職場に適用することのみをささない。
 学習転移には、アナロジー(類推・類似)メタファー(隠喩・比喩)
 メンタルモデル、一般的な学習?の使用が含まれる。
 学習転移は、指導テクニックではなく、考え方なのである。
・学習転移により、世界を馴染みのあるものにする。
 似ている点を探すのである。
・すべてのことは、まったく同じようには起こらない。
・転移の肝は、等価である。=サインでつなぐのだ。
・The levels of Transfer として、6つのレベルがある。
 レベル1、2は、単なる学習。
 レベル3は、学習の適用。
 レベル4は、近い転移。
 レベル5、6が、遠い転移。
○ 学習→適用 が転移なのではなく、
  A = A’ を見つけることが転移ということ?

3. The Importance of Corporate Transfer of Learning and
How to Fix the Lack of Transfer in HRD Training Programs
・Sengeをはじめとする学習する組織の文献に足りないのは、
 6th discipline としての転移である。
・似ている点を理解することが、肯定的な転移につながる。
・Transfer of Training と Transfer of Learning は違う。
・学習は、研修に比べより生産的で、創造的である。
・学生のほうが、ビジネスパーソンより転移が難しい。
 ビジネスパーソンの場合、研修を受けるときに、仕事という
 学んだことをすぐに適用できる環境がある。
○言われてみれば確かにそう。
 学生さんが学校で学ぶことは、いつ役立つか分からないし、
 どこで適用できるか分からないものもある。
 企業内研修の場合、基本的に学んだことを活かせる場は、
 すぐ近くにある。

4. Intellectual Capital:Learning Organizations and the
Transfer of Knowledge
・転移は、Intellectual capital 知的資本を必要とする。
・知的資本には2種類:Human and structural capital
・転移には、大きな知識基盤を必要とする。
○ある程度、その個人が知識を持っていないと、転移はできないと
 いうこと? 何かと何かを見て「似ている」と感じるには、
 それだけの知識がないと、気づけないということかな。

5. Teaming with Corporate Transfer: Perosnal Development and
the Small Group as Team and Microworld
・ほとんどの仕事は、チームで行われる。
・集団で働くのは難しく、フラストレーションがたまるものだ。
・アメリカの文化は、集団として機能するような社会化には
 失敗している。個人主義の極端な例が我々である。
 アメリカ人は、チームメンバーとしてどうあればよいのか知らない。
・お互いが何を考え、感じているかを理解しようとすることは難しい。
・家族のメタファーを用いて、チームを理解する。
○アメリカ人はチームで働くのが苦手なんだ。
 だから「チームとして機能する」みたいな本が売れるのかな。

6. Product Development, Technological, and Defense Conversion:
Illustrating the Economics of Analogical Transfer
・Conversion 転化とは、ビジネスのために新しい使い方を発見する
 ことである。
 NASAや軍事技術の転用などがその例である。
・Analogical transfer 類推的転移 他の人が見えないものを見る。
・発明、発見には2つの考え方がある:
 1)個人の天才によるもの
 2)その時のその場(文化的状況)によるもの
・Transfer function 転移機能として4つ:
 1)Conversion 転化
 2)Invention 発明
 3)Innovation 革新
 4)Product development 製品開発

7. The Transfer Spirit:
Contexts and Cultures of Transfer of Leaning
・学術、HRD文献、双方に書かれていないのが
 「Transfer spirit 転移魂(転移しようとする意気込み?)」
 学習者の態度が転移に果たす役割
・これまで無視されがちであった転移を促進する4つの要素:
 1)Knowledge base 知識基盤
 2)Transfer spirit 転移魂
 3)Culture of transfer 転移文化
 4)Strategy 戦略
○転移させようとする学習者自身の態度が大事。
 あるいはそうしたくなるような支援(職場、講師)も必要かも。
・H.Gardnerは、マインドはいくつかのかたまりに分けられると
 考えているが、筆者は同意しない。
・学習はそれが起こる場や環境から様々なヒントを得て行われる。

8. Knowledge, Expertise, Practice, and Transfer of Learning:
The Usefulness of Useless Knowledge
・知識基盤が、学習転移には絶対的に必要。
・2種類の専門家:
 1)Routine expertise 
 2)Adaptive expertise 
 適応的専門家は、類推的思考を用いる。
・Declarative knowledge 宣言的知識が、転移には重要。
・The Usefulness of Useless Knowledge
 使えそうもない知識が、のちに役立つ。他分野への転移。

9. Mental Models: Transfer Thinking and Leveraged Learning
・ほとんどの思考は、類似点による推論であるといえる。
○この著者は「Analogy 類推」に焦点を当てているよう。

10. Systems Thinking: How to Recognize Generic Structures,
System Archetypes, and Transfer of Mental Models
・P.Sengeの「5th discipline」で欠けているのは、Transfer thinking
 である。
・我々は、何かのパターンやつながりを見ることを学習する。
・何かを、何か違ったものとして見る。
・Transfer thinkerとなるためには、数学者は詩人から学ぶべき。

11. Intuition and Decision Making: Transfer of Learning and
the Unconscious
・意思決定における無意識の直観
・直観は使えるのか?答えはYesでもありNoでもある。
・フロイドは、Unconsciousと表現したが、最近はNonconsciousという
 用語が使われる。

12. The Transfer Consultant: How to Beging Implementing Transfer
and Save Your Training Dollar
・Transfer consultantとして、他研修コンサルタントを支援する。
・社内講師は重要だが、ほとんどの組織において外部コンサルタントを
 必要とする。
・学習のインストラクションと、転移のインストラクションは違う。
・リサーチをすることは、しないことよりもコストがかからない。
・小数の若い研究者と定期的な接点を持ったほうが良い。
○「転移を支援するコンサルタント」っていう人は、
 確かにほとんどいないかも。
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投稿者:関根雅泰

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