最近よんだ「組織社会化」論文

論文

最近よんだ「組織社会化」論文です。
(・引用/要約 ○関根の独り言)

===
●Support, Undermining, and Newcomer Socialization:
Fitting in During the First 90 Days
・J.Kammeyer-Mueller, C.Wanberg, A.Rubenstein, and Z.Song
・2013年 Academy of Management Journal
・同僚と上司による新人の支援は、最初の90日間で減少していく。
 初期の支援と嫌悪が、90日後の成果に強い影響を及ぼしていた。
 新人の能動的行動は、支援と成果の媒介変数となっており、
 上司の嫌悪は、高い離職率と関係していた。
・これまでの組織社会化研究では「組織」と「新人」に焦点が当てられてきた。
 「Supervisors上司」や「Co-workers同僚」は、新人が能動性を発揮し
 情報を探索する際の「情報源」としてしか捉えられていない。
 しかし「Insiders内部者」は、適応を支援したり、あるいは逆に適応を
 難しくする存在ともなる。
 また「Time時間」も組織社会化において解決されていない問題である。
・本研究で着目するのは、
 1)上司のみならず同僚の支援
 2)新人の適応を妨げる上司や同僚の「Destructive behaviors破壊的行動」
 3)「Hedonic tone快楽調?(ポジティブな雰囲気、幸福感等)」と
   「Proactive behaviors能動的行動(職場に適応しようとする)」
   (↑雰囲気や感情に着目する)
・Social support 社会的支援
 Social undermining 特定個人に対する怒り、嫌悪、批判
・3ヶ月間の縦断的調査を実施 264名が14回の調査に参加。10の仮説を検証。
・「社会的支援」と「社会的嫌悪」が、新人の「快楽調」と「能動的行動」
 にどのように関係し、またそれらが組織社会化の結果変数にどのような
 影響を及ぼすのかを検証。
・新人の能動性は、最初の社会的環境が肯定的で、かつ社会的支援が
 継続して得られるときに発揮されやすい。
○新人個人の性格として「能動的」であるかというよりも、
 能動性を発揮しやすい環境であるかが大事、ということかな。
 
・最初に何が起こるか、第一印象は新人にとって非常に重要。
 第一印象で、新人はその職場全体の社会的環境を判断する。
・新人は社会的支援を継続的に必要とする。
・従来の研究は、上司の影響に焦点をあててきたが、本研究により
 同僚の支援や嫌悪が新人に影響を及ぼしていることが明らかになった。
・新人の最初の1週間がその後の適応に大きな影響を及ぼしている。
・最初の3カ月間の新人適応を調査した結果、初期の上司と同僚による支援の
 程度が、新人のポジティブな雰囲気と能動性を高め、支援の変化はそれら
 2つに影響を及ぼすことが明らかになった。
===
●Developing Trust with Peers and Leaders: Impacts on Organizational
Identification and Performance during Entry
・J.M.Schaubroeck, A.C.Peng, and S.T.Hannah
・2013年 Academy of Management Journal
・本稿では「Trust in coworkers 同僚による信頼」が、新人のパフォーマンスや
 組織との心理的つながりを作る際に果たす役割に焦点をあてる。
・2つの信頼
 1)Cognition-based trust 認知的信頼?:他者の能力、任せられる、頼れる
 2)Affect-based trust 情緒的信頼?:感情的つながり
・成功した社会化は、Social identity社会的同一化と、
 Social exchange社会的交換の過程とみることもできる。
・組織参入研究では、同僚と上司を、新人のinstrumental   
 social社会的支援の源とみてきた。
 本稿では、同僚と上司との信頼がいかに発生するかを検証する。
・アメリカ軍の新人兵士を対象に14週間の縦断的調査(T1,T2,T3)を実施。
・同僚と上司の「認知的信頼」が「情緒的信頼」に影響を与えている。
・まず新人が同僚と上司を評価する。これが認知的信頼を規定する。
 認知的信頼が高ければ、新人は同僚や上司と密な交換関係を築き、
 それが高い情緒的信頼に反映される。
・新人と内部者は、まず認知的信頼を築き、相互依存的タスクをこなしていく。
 一定期間続けていく内に、だんだんと情緒的信頼を築いていく。
○言われてみれば当たり前だけど、大事なこと。
 「能力に対する信頼」から始まり、共に仕事をしているうちに
 「感情的つながり」にいたる、というのは、確かにありそう。
 ドラマでありそうなのは、お互いに力は認めているけど、仲良くはない
 ライバルが、段々と信頼関係を築いていくような感じかな。
===
●組織社会化と組織的同一化の弁別妥当性
・神戸大学 林祥平 ・2013年 経営行動科学
・組織社会化(Organizational Socialization)は、個人が組織の成員性を
 獲得し、組織にコミットすることを一つの終着点とする研究領域。
 
 組織的同一化(Organizational Identification)は、組織と個人の心理的
 距離を縮めることを終着点とし、その結果帰属意識を高めることが可能に
 なる研究領域。
・両概念は、従業員の帰属意識に影響力をもつ点で共通する。
・社会化は学際的な概念であり、これまで主に心理学、社会学、文化人類学で
 論じられてきた。
 組織社会化と社会化の定義に共通して言えるのは、2つ。
 1)個人が成長していくプロセス
 2)個人が社会的性格を獲得
・本稿では組織的同一化を、対象との“認知的かつ情緒的な繋がり”と考える。
・最終的に個人が組織に適応することで、社会化は“成功”したとみなされる。
 適応の代理変数として、組織コミットメント、離職意思、職務満足、役割適応
 が使われる。
 だが、これらは本来二次的な成果であり、組織社会化の結果、直接的に発生
 する一次的成果は「学習・包括性・同化」である(Chao et al.1994 他)
・Jones(1986)によると、個人は脱個人化せずに主体性を維持することが重要。
 つまり個人が組織に適応するということは、社会化の段階を経て、組織の 
 成員性を獲得し、なおかつ主体性を保っている状態。
○改めて、この指摘は大事。
 新人は「組織に染まる」けど「個性を失う」わけではなく、
 「染まっているかもしれないけど、自分はきちんともっている」状態が
 適応と言えるのかも。
・本稿では、理論的に組織社会化と組織的同一化が弁別可能かを検討した上で
 その弁別妥当性の経験的分析(質問紙調査)を試みた。
 分析結果から、適合度の高いモデルでは、常に両概念間に有意な相関が
 見られたため、両概念の弁別を経験的に示すことはできなかった。
○つまり「組織社会化」と「組織的同一化」に違いはなく、
 同じようなことを言っているということ?
・個人は社会化することで、自己アイデンティティを形成し、結果として
 個人が組織に同一化する一因になるとするなら、両概念の因果関係の検討
 は今後明らかにすべき課題である。
===
●若年就業者の組織適応エージェントに関する実証研究
  ~職種による比較分析~
・甲南大学 尾形真実哉 ・2012年 経営行動科学
・「組織適応」を、組織社会化(職業的、文化的)、組織コミットメント、
 離職意思の3つの概念でとらえる。
・若年就業者の適応を促進する役割を果たすのが「適応エージェント」。
 これらを考察するのに有益なのが「社会化エージェント」に関する研究。
・「適応エージェント」の種類
 1)ピア(メンタリング:知人、同僚、親友)
 2)上司(垂直的交換関係、LMX)
 3)同僚(TMX、職場)
 4)グループ要因(職場のコミュニケーション風土)
 5)予期的社会化
・職種が異なる二つの母集団を比較:ホワイトカラーと看護師
・双方とも、組織参入前の予期的社会化が重要であるということがわかった。
・双方において「人的サポート(上司・同僚)」が組織社会化に影響を与えて
 いなかった。
 組織社会化を促進するエージェントについては、人的サポートよりも若年
 就業者自身の観察学習や経験からの学習、情報探索行動などの主体的行動
 (プロアクティブ行動)が重要になってくると考えられる。
○これは面白い結果。ただ、より詳しくホワイトカラーを見ていくと
 「上司サポート」は「情緒的コミットメント」「離職意思の低減」に影響。
 「同僚サポート」は「文化的社会化」に正の影響。
 「同期サポート」は、影響なし。
 
 細かく見れば、影響が無いわけではない。
 つまり「人的サポート」は、無駄ではない。
 (せっかく新人に関わっても意味がないということだったらちょっと悲しい)
・コミュニケーション風土は、ホワイトカラーの組織適応に影響がなかったが
 看護師の組織適応には影響を及ぼしていた。
 より高度な職種に携わる職場のほうが、職場のコミュニケーション風土が
 重要であるということがわかった。
・若年就業者の組織適応を促進させるためには、サポートのコンテンツと、
 サポートのタイミングを意識しながら、必要な時に必要なサポートを提供する
 ジャストインタイムのサポート提供が必要になってくる。
○これはそうだろうけど、「タイミング」は難しそう。
===
●人材育成研究における身体の意義
  ~新人の組織社会化を例として~
・人事コンサルタント 伊藤精男 ・2013年 人材育成研究
・人的資源管理論や組織行動論における議論では、大部分が操作的な説明
 変数を中心とするものであり「反省的な」認知を暗黙の前提とした上で 
 新人側からの認知尺度を元に測定したデータから結論を導出するものが多い。
・「非反省的な」身体性の観点から組織社会化を
 とらえようとする研究は皆無。
・「身体という準拠枠」は、重要な研究視点を提供する。
・組織の中で繰り返し「身」(市川1984)をもって経験することが
 「身」のうちに沈殿し習慣化していくとき、すなわち行動の様式が惰性化し、
 無意識のうちに我々の身体的次元にまで浸透するときこそ、
 真に社会化が達成されると言いえるのである。
・組織になじんでいく身体の形成こそが
 組織社会化のプロセスであるとも言い得る。
・モース(1976)は「型(ハビトゥス)の社会性」を指摘。
 身体の使い方は文化によって規定されている。
 ハビトゥスは、威光模倣によって受け継がれ再生産される。
・固有の身体技法(型)を習得することが、特定の組織の人となること。
・型を体現している他者を無意識のうちに身体レベルで「なぞる(野村1983)」
 経験の蓄積が不可欠。
・新人は日常的に組織という場で暮らす中で、組織固有の身体技法(型)を
 獲得することを通じて、その組織人「らしさ(尼崎1990)」(身にしみこんだ
 心身経験の図式としての「型」)を習得するという観点から、
 組織社会化を考察する可能性。
・ルーティンを実施することによって非反省的に身体技法を習得し、結果として
 その背景にある組織における価値を受容し「組織人らしさ」を獲得していく。
・「非反省的な」身体性の変容は、当事者にも自覚され得ない程の微妙な移り
 行きの中で行われ、組織の中で日々のルーティンに巻き込まれて生きる中で
 結果的に達成されていく。
・「組織に適応する身体」が形成されたことによる組織社会化の達成。
○面白い! 
 確かに今までの組織社会化研究は、
 新人の「頭の中」を見ようとしてきたのかも。
 新人が組織のルールや人間関係等を「理解」すれば、
 組織社会化が達成されたと考える。
 でも実際は「頭ではよくわからないけど、なんとなくなじんできた」とか
 「会社での生活に身体が慣れてきた」みたいなことは、確かにあると思う。
 ただ研究として「当事者も自覚しえないほどの変化」を、
 第三者がとらえて形にするのは難しそう。
 人類学者のエスノグラフィーみたいに、長期間入り込んで、
 新人の行動を観察するとかなら見えてくるのかな。
===

投稿者:関根雅泰

コメントフォーム

CAPTCHA


ページトップに戻る