「学習科学とテクノロジ」

お薦めの本

「学習科学とテクノロジ」
  三宅ほなみ・白水始著

○協調学習をテクノロジで支援する様々な実践例が紹介されている。
協調学習の意義や可能性を分かりやすく解説してくれる本。

(・引用/要約 ○関根の独り言)
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●学習科学
・学習科学とは、人が得意だといえるほどまでに、うまく学んだ過程を分析し、
 そうなるまでの学習を引き起こそうとする研究分野である。
・学習がうまくいった時の特徴には、2つの観点が現れる。
 1)知識構成観 ~知識は自分で作り上げていくもの
 2)協調的な学習観 ~知識は他人とのやりとりの中で獲得され、
磨きあげられていくもの
・違った経験を積み重ねながら、それらの中で共通して、利用可能な部分を
 抽象化し、似たような他の課題にも使える知識を作り上げる。
 このより適用範囲の広い知識は「スキーマ(Schema)」と呼ばれる。
・知識の一部を外に引き出していつでも参照可能にするやり方を
 「外化(Externalization)」という。
○こうやってブログに書籍から得た知識を書くことも外化の一つだな。
 ブログだから、後から検索、参照もしやすい。
 確か中原先生が以前おっしゃっていた「ブログを検索容易な第2の脳」に
 するという感じかな。
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●協調学習
・学習は社会的な活動である。
・ヴィゴッキーは、知的な能力は他人との関わりあいの中から
 発達すると考えた。
 子供が何かできるようになる過程では、大人や仲間と一緒に
 やることに意味がある。
・文化人類学者J.レイブ女史と研究者E.ウェンガーは、職場での学びについて
 の研究を「正統的周辺参加(Legitimate peripheral participation)」
 という考え方で提唱した。
 この考え方では「学習=社会的な実践共同体への参加の度合いを
 増すこと」であるととらえる。
・学習を社会的共同体への参加と見なすなら、動機付けや転移も
 社会的に支えられて起こる可能性がある。
・協調過程が学習に有利に働くのは、それぞれ少しずつ違う考え方や
 見方から生み出された解のバリエーションが出やすく、共有されやすく
 さらに吟味もされやすいといった条件が揃った時なのだと考えられる。
 そして、テクノロジがここでも威力を発揮する。
○多様な意見やものの見方が共有され、
 吟味される環境が、協調学習を効果的に行うために必要。
 参加者主体の集合研修なら、多様な意見の共有はなしやすい。
 ただ、その吟味がきちんとできているか。
 特に自分がファシリテーターをやった場合。
 ブログ等も、協調学習を推進するテクノロジとして使えるか。
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●協調学習の実践例
・CSILE
 (Computer Supported Intentional Learning Environment)
 書くことによって学習者一人一人が意識的に自分の知識を
 深化させる過程を支援するシステム
1.Knowledge Forum
・その一つとして、掲示板をつかった Knoweldge Forum 
 というシステムがある
 学習者自身が自分で問題を見つけて、自分で知識を作って
 いけるところが、KFの特徴。
 KFというプロジェクトは「生徒が書き込める学習用データベース」
 という学習支援ツールを使って、教育や学習のイメージそのものを、
 知識伝達から知識再編成へと変えていこうとしているともいえる。
2.The Jasper Project
・マイクロワールド(ふつうの日常生活の場面)を利用した
  The Jasper Project(JP)
 学校で学んだことが、社会で役立つとは限らない。
 これは、学校教育の成果が、学校外に転移しにくいという問題。
 その原因として、学校でとく問題は、解き方を覚えていれば
 とけるので簡単。日常生活でであう問題は、解き方がわからない、
 という違いがある。
・KFとJPが、従来の教育研究と違うのは、
 プロジェクトリーダーたちが現場で教壇に積極的にたっていること。
○これは、企業内研修でもできるかも。
 よりよい学習方法を提示し、かつ自分自身が研修を行うことで実践していく。
・実践と研究を一緒にする。
 教室で子供がどう学ぶのかを研究したいなら教室に行く。
○職場でどう学びが起こっているのかを研究したいのなら、
 職場に行く。これは俺が今後やりたいことだな。
・学習科学の先駆者 A.ブラウン女史は、教え方に様々な工夫をした。
 「ジグソー方式」「相互学習法(Reciprocal Teaching)」
 ジグソー方式は、一つの文章を3人に区切って、
 一人が1/3ずつ担当。あとで、自分が読んだ内容を他人に
 教えて文章全体をりかいしようとする
 相互学習法は、読解能力についてのメタ認知を、
 他人の力(質問してもらってなど)を借りて身につけさせる法。
○中原先生の組織学習システム論IIでやっているやり方に近いのかも。
 俺自身は、本の読解は、自分一人でやりたいと思うが、
 他人と一緒にやると、自分だけでは気づけない点もあるんだろうな。
3.WISEプロジェクト
・子供を本物の科学者の論争にふれさせる 
 SCOPEフォーラムという事例
○これは大事だよな。大人の世界で実際に起こっていること、
 そのとばくちを子供たちに感じさせる。
 しかも、大人が本気で向き合っているところを。
・WISEプロジェクトの特徴として、生徒が手にする教材は、
 教室を越えたパートナーシップに支えられていることがあげられる。 
 教室で学ぶことが、大人が外で真剣に議論していることとつながってくる。
○この「つながり」(学んだことと、これから出ていく、
 そして今も関わっている社会とのつながり)が、
 学ぶ意欲(動機付け)という点で大事なんだろうな。
・テクノロジにより、互いの考えが外化されているからこそ、
 協調学習がやりやすくなっている。
○これは、ブログで自分の考えや活動を外化していると、そのブログを
 読んだ人との仕事はしやすい、という点と似ているのかも。
 仕事やプロジェクトを、お互いが学びあい、
 成長する場と考えるなら、協調学習ともいえる。
 お互いの考え方がわかっている人とは、確かに仕事が進めやすい。
 これは同じ起業家で情報発信している人が一様に言うこと。
4.LBDプロジェクト
・LBD(Learning By Design)プロジェクトでは、
 生徒が繰り返し確かめた法則を「経験則」として積極的に公開させる。
 また、同じタイプの活動を何度も繰り返すのであれば、
 いっそ「名前」をつけて儀式にする
例)Messing about, Gallery walk,poster session
○これは、企業内研修でも使えそう。
 参加者が行う活動に、名前を付ける。
5.LeTUS
 (Learning Technologyin Urban Schools)プロジェクト
・生徒一人一人が「不完全な仮説」を自分で作り、それに
 答えながら学ぶ形式、つまり「発問型学習」である。
 地域社会の諸現象について問いをたてることで、
 生徒の学びを直接地域の利益に結びつける。
○これは、GEのCSR活動で、地域学校の生徒とGEの従業員が
 共同で、町の問題解決を行うプロジェクトにつながるかも。
 自分の地域でもできないか。子供たちの柔軟な発想を、
 地域の問題解決に生かす。大人はその仲介役を果たす。
・生徒自身の発問を中心に学びを構成する
 そのために始まりとなる「駆動質問(Driving Questions)」が必要。
 
 生徒の探求活動を駆動し続けるのがよい駆動質問。
 よい駆動質問は「答えが出せる」「関心を喚起持続させる」
 「生活や現実世界に根付いている」「答える価値がある」
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●今後の課題
・上記プロジェクトの目標は「学習者コミュニティー」の形成といえる
・各プロジェクトでは、短期的なクラス内で達成すべき目標と、
 長期的な「学習態度」の形成という目標が両方ふくまれている
・CSCL(Computer Supported Collaborative Learning)では
 協調学習をテクノロジで支援しようとする研究者が集まる研究分野である
・J.ペレグリーノは、「評価の三角形」という考え方を提唱している。
 評価といってもやっていることは、学生の「認知」活動についての
 データを集めて「観察」し、それを「解釈」するという認知的な
 作業にすぎないということである。
・自分で協調的な学習カリキュラムを一つ作ってみる。
 すべてを一人で学習する必要はない。
 協調的な学習に対して、テクノロジが支援できることは、
 参加者の考えやアイデアの「外化」「共有」「吟味」を
 容易にすることである。
○自分で協調学習カリキュラムを作る。これは魅力的。
 俺なら、まずは自分が学ぶ何かを、
 協調的に行うことを考えてみたい。
 誰と:企業内教育担当者、外部講師
 何を:研修の今後など(考える価値があるテーマを)
 どのように:集合する場とブログ、MLを使って
 これは、今参加している勉強会や、
 自分が持っているMLを使えば、できるかも。
 ただ、このときに「継続していく」学習者コミュニティーに
 できるかが鍵だろうな。
 もう一つは、自分が講師として運営する研修を、
 協調学習のスタイルでできないか
 特に、現場活動での「外化」「共有」「吟味」をテクノロジで支援する。
 そのときに、参加者にとって、自分の考えやアイデア、
 現場活動における工夫や苦労を、文章として「外化」する手間を、
 どう納得してもらうかが壁になるかも。
 文章を書き、自分の頭の中を外化することは、
 確かに学習効果を高める。ただ、その分、手間がかかる。
 そこも考えないとな。

投稿者:関根雅泰

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