HRDジャパン2008に参加してきました。

企業内教育担当者向け

横浜で開催された「HRDジャパン2008」
(第27回能力開発総合大会)に参加してきました。
私が聴講したセッションは、
1.人材採用の取り組み(三井住友銀行/新日軽の事例)
2.メンター・チューター制度(サッポロビール/東京海上日動火災)
です。
私の理解の範囲内で、印象に残った点をお伝えします。

●三井住友銀行における新卒採用活動について
○内定者による採用パンフレットの作成
・採用パンフレットを作る際に、内定者の協力を得ている
・パンフ製作会社のプレゼンに、内定者を同席させ、
 彼らの目線から、よいパンフを選ばせる。
・大学3年生は、企業やそこで働く人が何をやっているのかを
 知りたがる。それに答えられるパンフレットでないと、彼らにささらない。
○ミスマッチ防止「オープンラウンジ」
・ミスマッチを防ぐために、職場の生の声を聞かせることを重視。
・オープンラウンジ(いつでも誰でも気軽に先輩社員と語れる場)が好評
・07年は、3月から1ヶ月間実施。08年は、2月から4月まで開催。
・07年は、5000人の学生が参加。先輩社員は、延べ300人投入。
・全社一丸となっての採用体制。(08年は、1600人。09年は、2400人予定)
○関根の独り言
・会社全体で、採用に取り組んでいる姿勢が見える。
・大規模採用だからか。とりあえず人を採らないといけない、
 ということで危機感があるから?
・銀行が大量採用をはじめると、採用市場がガラッと変わる。
●新日軽「新卒採用ミスマッチ」ゼロへの挑戦 
     ~育成視点と本音トークの実践事例~
○小さな母集団
・小さな母集団から、毎年50名ほどの新卒を採用しようとしている。
・小さな母集団の「質」にはあまりこだわっていない。
 「質」とは何か。学生の「質」が高い、低いをどう判断するのか。
・「GGC」と「CSS」を通して、学生が変わるのがよく分かる。
・「誰でも大きな可能性をもっているハズ」と信じて、採用活動を行っている。
○若手社員による協力
・3回面接を行う。二次面接と最終面接の間に、
 「GGC」(ギューギューコミュニケーション)という場を設けている。
・学生と、若手社員が、居酒屋で2時間ほど、ざっくばらんに話し合う。
・学生と同数の社員をそろえる。
・社員には特に制約を設けず、好きに話させる。
・泥臭い、男社会、きつい仕事の現場をリアルに語らせる。
・生の話を聞いて「自分には無理」と学生が思えば、
 次の面接に来なくて良いと伝えている。
 (が、実際の面接辞退は、ゼロ。)
・GGCに参加した若手社員が、学生を励ます「最終面接がんばれよ!」と。
・若手社員のモチベーションが上がるという効果がでている。
 学生に語ることで、仕事のやりがいや、会社の良さを再確認している。
・GGCを導入した年から、離職率が下がった。25%→6.8%
○内定者に対する合宿研修
・8月と10月に、2回、2泊3日の合宿研修を行っている。
・同じ釜の飯を食わせることを重視。
・社長、先輩社員とのコミュニケーションや、ビジネスマナー等を学んでいる。
・内定者同士のネットワークが強化され、入社への不安が軽減される。
・会社の「新人を育てよう」としている意思を、内定者も感じる。
○今後の課題
・地元就職志向が強い学生の離職率が高い。
 東京、大阪以外の地方での採用活動を強化する必要性。
 地方配属を嫌がる学生も多い。知らない土地で仕事をする不安。
・各職場での社員育成力を強化したい。07年度からメンター制度を導入。
・社内ローテーションの実施
○関根の独り言
・若手社員を、採用活動や内定者教育に絡ませる試みは、やはり有効。
・若手社員自身のモチベーションアップにつながる。
・「母集団は小さくても良い」「質とは何か」という問いは、新たな気づき。
2.メンター/チューター制度
こちらのセッションは、参加人数が多かったです。
やはり企業にとって、かなり関心のあるテーマのようですね。
●サッポロビールにおけるチューター制度
 ~新入社員配属後のOJTバックアップ制度~
○チューター 
・チューターとは、配属された新入社員の教育担当(メンター、ブラザーとも称する)
・入社6年目以上の上級総合職が、チューターとなる。
 そのくらいのレベルでないと、指導できないし「あこがれの先輩」になれない。
・所属長が「育成マインド」の高い先輩社員を推薦する。
・「新人育成マニュアル」を配布
・春に、eラーニングで「ビジネスコーチング」を学習。
 秋に、2日間の集合研修を実施。本当は、早めに実施したいが、
 ビールの最盛期と異動(9月)の関係で、秋に実施。
・チューターは、異動により、途中で変わることもある。
○制度
・新入社員配属後の1年4ヶ月
・新入社員、チューター、所属長が、育成の「PDSサイクル」を回す
・「年間育成計画」は、所属長がまず作成。チューターはそれを基に計画を立てる。
・「OJTレポート」により、週間と月間のチェックを行っている。
 レポートには、新人が「学んだこと・反省点・疑問点」等を記入する。
 チューターと、所属長がコメントを返す。
・このレポートは、全社員が閲覧可能。
・所属長が、チューターによる指導をよく見ていることが大事。
 そのためにも、所属長にチューター制度の重要性を理解してもらうことが必要。
○効果
・早期に若手に大きな仕事を任せられる。(早期戦力化が可能になってきている)
 それは、チューターと所属長が「レポート」により進捗管理をしてくれているから。
・チューターにとっても、自分の仕事を整理できる。
 教え方を学ぶことができる。
・所属長とチューターの絆が深まっている。
 (レポートのやりとり、職場での顔合わせ、電話、メール)
 接点が多くなる。
・かなり昔から行っている。制度化したのは、1988年。
 社内に浸透している。
・新人を教えるのを楽しみにしている部署も多い。
○関根の独り言
・やはり、新入社員育成のPDCAサイクルが大切。
 まず、プランを立てる。そこに、マネージャーを巻き込む。
 チェックの頻度を増やす。チェックによって、接点の機会を作り、
 コミュニケーションを取らざるを得ないようにする。
・チューターだけでなく、所属長がからむことがカギ。
 
 チューター任せになると、厳しい。
●新入社員・若手社員を組織全体で育成するために
 ~東京海上日動火災保険での事例~
○新入社員育成の制度
・役割付与制度(SP=チューター制度)
・人材育成会議 直属上司以外の管理職が、
 新人の育成状況について意見交換しあう
・社員のほとんどが「SP制度」を体験している。
 (自分が新人のとき、必ずSPがついている)
・40年以上前から実施されている。
 制度化されたのは、30年くらい前。
   
○SP(先輩)の役割
・公私に亘る指導
・上司の指導のもと「年間育成計画」を策定する
・年3回「新入社員記録表」を作成し、上司に提出(本社提出はなし)
・SPは全員が「SP研修」を受講する。
・自身のMBOにおいて「新人育成」という項目をいれ、
 「新人育成の到達目標」を設定する。
・指導期間(入社1年間)終了後に、
 「SPふり返りレポート」を上司に提出。
○SP研修
・「新入社員育成ガイドブック」(毎年リニューアル SP用・新人用)に基づき
 ビデオによる「SP研修」の受講(総合職向け)と
 研修担当リーダーによる「SP研修」の実施(一般職向け)
・ガイドブックは、新入社員にも渡している。
○関根の独り言
・ガイドブックを、新入社員にも渡しているのは小さな驚き
・新人育成に、SPだけでなく、直属上司やその他の管理職、研修リーダー等
 多くの人間に役割を与え、絡んでもらっている。
 複数の視点で、育成状況をチェックするようにしている。
・先輩による後輩指導は、日本の人材育成の特徴なのかも。
 それが風土になっている会社は強い。
 海外ではどうなのか。日本に特異のものなのか。
今回のHRDジャパンも非常に勉強になりました。
どうもありがとうございました!

投稿者:関根雅泰

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