「体験・参加型研修の有効性と効果的な進め方」

4.社内講師向け「教え上手になる!」研修

人材開発の専門誌「企業と人材」(7月20日号)の巻頭解説記事として、
「体験・参加型研修の有効性と効果的な進め方」を寄稿させて頂きました。
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以下は、記事の元となった原稿です。


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「体験・参加型研修の有効性と効果的な進め方」
近年、ユニークな「体験・参加型研修」を実施する企業が増えてきている。
それは何故なのか? そもそも「体験・参加型研修」とは何なのか?
自社で導入実施するとしたら留意点は何か?
これらについて本稿で探っていきたい。
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1.体験・参加型研修の定義
○体験・参加型研修とは?
まず「体験・参加型研修」とは何かについて、
「座学・講義型研修」との比較から見ていきたい。
座学・講義型研修は、いわゆるレクチャー形式の研修である。
前に立つ講師が、参加者に対してどちらかというと一方向で
情報を提供するスタイルである。
筆者は、座学・講義型研修を次のように定義している。
 座学・講義型研修 = 参加者が講師から情報を獲得する個人学習の場 
 
座学・講義型研修においては、講師が答えをもっていて、
それを参加者に提供するという前提がある。
講師が持っている情報を、参加者が獲得することが、
参加者が「学んだ」状態であると考える。
この場合、情報のやりとりは講師と参加者個々人の間が中心となる。
そのため大勢が参加する研修であろうとも、そこで起こっているのは
参加者各人の「個人学習」であると言える。
それに対して、体験・参加型研修は、ワークショップ(協同作業)
形式の研修である。
講師はファシリテーター(促進役)という位置づけで、
対話を重視した双方向のやり取りを通じて、参加者の学習を支援する。
定義は次のようになる。
 体験・参加型研修 = 参加者同士が主体的に学び合う集団学習の場 
体験・参加型研修の前提は、答えは一つではないというものである。
だからこそ、講師だけでなく参加者も自らの意見を示し、様々な考え方を共有する。
講師から教えられるというよりも、参加者同士が教えあい学びあうことで、
自分なりの答えを探求し、情報を共有していく。
そういった「集団学習」の場が、体験・参加型研修である。
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○体験・参加型研修のメリットとデメリット
次に、座学・講義型研修と体験・参加型研修のメリット(長所)と
デメリット(短所)について見ていこう。
座学・講義型研修のメリットは、多くの情報を大勢に短時間で伝える
ことができるという点と、研修運営をコントロール(管理)という点である。
その反面、どうしても一方的な情報提供になりがちで、
参加者を「聞くだけ」の受動的な姿勢にしがちである。
また、参加者によって理解度にバラツキがでるといったデメリットがある。
 体験・参加型研修のデメリットは、講義型に比べて伝えられる情報量が
減るという点がある。体験・参加型においては、参加者自身が個人で
考える時間や、話し合う時間を重視する。
そのため一つのテーマ(主題)にかかる時間が長くなる。
その結果、伝えられる量そのものは減ってしまうのである。
また、参加者が話すということで、研修運営がコントロールしづらい
という難点がある。時間配分、予期せぬ展開、混乱状態など。
体験・参加型研修のメリットは、参加者が自ら能動的に学習する
という点である。参加者自身が動き体験し、考え話し合わなければ、
研修が進まないのであるから、参加者は主体的に研修に参画せざるを得なくなる。
そのような参加者自身の研修への積極的な関わりが、参加者全体の
理解度の向上にもつながってくる。
また協同作業や話し合いを通して、参加者同士や講師に対する
新密度も高まりやすいというメリットもある。
これは、参加者同士の結束を強め、研修から現場に戻った後も
密なやり取りが発生しやすいという観点からも見過ごせない点である。
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2.体験・参加型研修増加の背景
○体験・参加型研修が増えてきている理由
企業内教育において、体験・参加型研修が増えてきている
要因には様々なものがある。
座学・講義型研修では集中力を持続できない若手社員の存在、
人材獲得策の一環としてユニークな研修の存在をアピールする必要性、
組織内のつながりが薄れてきた中で、研修を通して従業員同士の
コミュニケーションを密にしたいと考える企業側の想い、
正社員として定型業務ではなく応用力を身につけさせる必要性等。
加えて、体験・参加型研修のメリットとしてあげた「能動的な参加」は、
企業が求める「自ら考え行動する自律型人材」の育成にも合致する点であろう。
参加者を受動的にしがちな座学・講義型研修で、
参加者を能動的な自律型人材に変えるのは、難しいからだ。
また、前述したように参加者同士が親密になりやすいというのも、
企業が体験・参加型研修を実施する一つの要因であるといえる。
特に、企業への忠誠心が薄れ、若手の離職率も高まっている現在、
従業員同士が共通の経験を持てる体験・参加型研修の場は、
お互いの結びつきを強め、組織の一員としてのモチベーション(意欲)を
高める要因にもなりうる。
本稿では、体験・参加型研修のメリットの一つ「理解度を高める」
という点を企業が期待し、体験・参加型研修を導入・実施している
という観点から論を進めてみたい。
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○体験・参加型研修は、参加者の「学び」を促進する
筆者は体験・参加型研修の有効性を次のようにとらえている。
「体験・参加型研修は参加者の学びを促進する」と。
では何故、体験・参加型研修が参加者の学びを促進するのか?
3つの学習理論と筆者自身の経験則から理由を述べたい。
【M.ノールズの成人教育学】
 アメリカの成人教育研究者であるM.ノールズは
「こどもを対象とした教育」としてのPedagogy(ペダゴジー)に対して
「おとなを対象にした教育」としてのAndragogy(アンドラゴジー)を提唱した。
このアンドラゴジー(成人教育学)は、「成人の学習を援助する技術と科学」
と定義される。つまりおとなを教えるための方法論である。
ノールズの考えにおいて重要な点は2つある。ひとつは、
学習者は「自己主導的」であること。もう一つは、
教育者は「学習援助者」であるという2点だ。
ノールズは、おとなは自発的・能動的に学習に関わると考え、
そしてその学習を援助するのが教育者の役割であるとしている。
彼がペダゴジーとして整理した一般的な学校教育は「教師主導的」であり
学習者は受動的に学ぶものとして見られている。
つまり座学・講義型研修は、ペダゴジー的であると言える。
おとなは「自己主導的」つまり自ら学ぶ内容を決め、
自ら主導権を発揮し学びに関わりたい。こちら側からの強制的な学習を好まない。
つまり、参加者自身が主体的に学びあう、体験・参加型研修は、
アンドラゴジー的なのである。
【J.メジローの変容学習論】
同じく成人教育学者のジャック・メジローは
「変容的学習(Transformative Learning)」という考え方を提唱した。
メジローは、おとなにとって重要な学習とは、自らの
「ものの見方(パースペクティブ)」を問い直し変えていくことだと主張している。
成人は自分なりの「ものの見方」をもっていて、それを通して
自らの経験を解釈すると考えたのである。
メジローの考え方のポイントは、おとなの教育においては
「ものの見方」を学習者自身が「問い直し」「変えていく」ことが
重要であるという点だ。
そして、問い直し変えていく際に重要な役割をになうのが、
「グループ・クラス討議」であるという点である。
自分ひとりで、自分の「ものの見方」を変えていくのは難しい。
他人の意見を聞いてはじめて「あ、なるほど。そういう見方もあるな。」と
気づくからだ。
自らの「ものの見方」をふり返るためにも、他者との意見交換や
経験共有が必要になる。
だからこそおとなの学習において、参加者同士の討議・ディスカッションは
大切なのだ。そして、それを実践する体験・参加型研修は、
参加者自身のものの見方を問い直し変えていく際に有効なのである。
【H.ガードナーの多重知能理論】
 ハーバード大学の心理学教授ハワード・ガードナーは、
人の脳の中に複数の知能が存在すると主張している。
・空間的知能(絵画表現や空間認識などの能力)
・身体運動的知能(身体を動かしたり、ものを作る能力)
・対人的知能(他者と意思疎通を図り協調する能力)
・内省的知能(自己分析する能力)
・音楽的知能(歌やリズムに関する能力)
・言語的知能(文章を書いたり話す能力)
・論理数学的知能(数字や論理思考に関わる能力)
多重知能理論のポイントは、人それぞれ得意とする「学び方」があり、
それに合った教え方をされるとよく学ぶことができる、という点だ。
ただ、単に話を聞かせる(言語的)だけの研修ではなく、
身体を動かしてやらせてみたり(身体運動的)参加者同士で
話し合わせてみたり(対人的)個人で考えさせてみたり(内省的)
模造紙に表現させてみたり(空間的)など、様々な知能を使って
学べるように研修を組み立てるのである。
それらを実践し、参加者各人の学び方に合わせやすいのが、
体験・参加型研修なのである。
【筆者の経験則】
 筆者は、座学・講義型研修は、もともと学ぶ力がある参加者は
多くを学べるが、そうでない参加者にとっては学びづらい形式であると感じている。
よく言われる「2:6:2」で考えると、上の2割の学ぶ力のある
参加者は多くを学べるが、中間から下の層にかけては、学びが少ない。
それに対して、体験・参加型研修は、参加者自身が学べるよう
上手く構成され、参加者同士がお互いに学びあう仕組みが
内包されていると感じている。
上の2割が、中間・下の層に教える場面も多く、
中間・下の層も学びが大きい。
また参加者の「気づき」を促すという効果も見逃せない。
人の話を聞き、本を読むだけでは、本当の意味では理解できないことを、
体験・参加型研修を通して深く理解するということは多々ある。
実際にやってみて、他の人の立場にたってみて、質問に対して
考えていく中で、「あ、なるほど!」と気づくことが多い。
それが体験・参加型研修である。
 
以上、3つの学習理論と筆者の経験則から、体験・参加型研修は
参加者の学びを促進し、参加者の理解度を高める。
それゆえ企業も体験・参加型研修を導入実施している
という点について述べてきた。
次に、具体的な体験・参加型研修の企画運営方法について
「企画・組立・運営・評価」の4段階に分けてみていこう。
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3.体験・参加型研修の自社への適用
○体験・参加型研修の企画
体験・参加型研修企画の基本となる考え方は、
「参加者の問題解決」である。
参加者がどんな問題を抱えているのか、
それに対してどのような解決策を提供するのか、
それを考えるのが研修企画である。
 問題は、次のように定義される。 
  問題 = 現状 - 目標 
現状は、研修対象者の現在の状態である。
彼・彼女らの既存知識、経験、職場でおかれている状況、
携わっている仕事など。
目標は、研修対象者に望んでいる状態である。
企業として、彼・彼女らにどうなってほしいのか、
期待する知識、技術、態度など。
これらの現状と目標の「差」が「問題」であり、
その問題に対する「解決策」の一つとして体験・参加型研修を打つ
という流れになる。
つまり、最初に明確にすべきは参加者の現状と目標の差である
問題なのである。
 解決策として、何らかの研修を打つという方向性がでたならば、
次に行うべきは目的と目標の明確化である。
目的は、何のために研修を行うのかという「研修目的」であり、
目標は、研修終了時の参加者に望まれる状態「学習目標(ゴール)」である。
参加者が何のために研修に参加し(研修目的)、
研修に参加した結果何を得るのか(学習目標)。
目的は、総論として、例えば「チームの一員として必要な
コミュニケーション能力を習得する」などがある。
目標は、具体的な各論として、次のような表現が考えられる。
・チームにおけるコミュニケーションの重要性を理解する。
・自分の考えを整理して相手に伝えることができる。
・相手の意見を受け止める傾聴ができる。
学習目標は、「~を理解する」「~ができる」といった
具体的な表現が望ましい。
これらの目標が達成できたかどうかを測るのが、
研修評価と効果測定につながるからだ。
目的と目標を明確にしたうえで、体験・参加型研修を行うのか、
座学・講義型研修を行うのか、あるいはその混合で行うのかを
考えることになるだろう。
外部教育機関に委託する場合、少なくともここまでの情報
(参加者の問題、解決策の方向性、目的と目標)は詰めた上で
やり取りをして欲しい。
そうでないと、相談される外部機関側も研修内容を
詰めていくことができないからだ。
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○体験・参加型研修の組立
体験・参加型研修を組立てる最の基本は、
「イントロダクション(導入)」「ボディー(本論)」
「クロージング(結び)」からなる「三部構成」である。
それぞれのポイントについて述べていきたい。
1)イントロダクション(導入)
 体験・参加型研修の最初は、イントロダクション(導入)である。
ここで行うべきことは、2つ。緊張感の緩和と参加意欲の向上だ。
体験・参加型研修においては、参加者同士の話し合いや作業などが多い。
お互いが良く知らない同士で話しあったりするのは難しいため、
まずはお互いの緊張感を緩和する必要がある。
そこで必要になるのが、アイスブレークと呼ばれる、
参加者同士の自己紹介や簡単なゲーム等である。
次に研修に主体的・能動的に関わってもらうためにも、
参加意欲を高める必要がある。この際に必要になるのが、
「研修への参加姿勢」を理解してもらうことである。
例えば「今回は、様々な体験や話し合いを通して、ご自身の経験を整理したり、
新しい発見をするような研修にしていきたいと思っています。
ですから講師である私の話を一方的に聞くというよりも、
皆さんに参加してもらい話し合ってもらうような研修となります」といったように。
これは特に体験・参加型研修を実施する際には重要な点である。
多くの参加者は、座学・講義型研修に慣れている。
「黙って聞いておけばいいだろう」と、そういう心持ちで
参加している場合も多いからだ。
また、体験・参加型研修の場合、ゲームやアクティビティーを
行うことが多いが、「何のためにそんなことやるのか?」という
疑問をもつ参加者もいる。
それらの疑問に答え、参加意欲を高めるためにも、
参加姿勢を理解してもらうことが重要なのである。
2)ボディー(本論)
ここでは、体験・参加型研修において
「何かを体験させること」という観点に絞って話を進めたい。
体験・参加型研修において、「何を」体験させるのか? 
体験させるものには、あえて分ければ、3つの種類があると考えられる。
(1)同質体験
 
 会社を深く理解するといった目的で行われる研修で、
 参加者が体験するのが「同質体験」である。
 関西電力の昇柱訓練は、同じ企業に属する他部署の人間が
 どんな仕事をするのかを体験するものであり、
 東芝のからくり人形作りや、出光興産のスタンド体験などは、
 創業者と同じ体験をさせたいという願いがこめられている。
(2)異質体験 
 参加者のマインド(心の持ちようや態度)に何らかの影響を
 与える目的で行われる研修で、参加者が体験するのが「異質体験」である。
 人生で二度と体験しないような、自衛隊への体験入隊や、
 寺院での修行、無人島でのサバイバルなどがこれにあたるであろう。
(3)疑似体験 
 参加者の業務に何らかの形で結びつくものを、違う形で
 体験するのが「疑似体験」である。
 室内ゲームや野外フィールドゲームなどを通して、
 チームワーク、組織内でのコミュニケーション、問題解決、
 PDCAサイクルの回し方等を疑似体験するのが、これらの研修である。
 上記の「同質・異質・擬似体験」という3つは、
 厳密にはわけられないケースもある。
 これらに共通しているのは、参加者にとって
 「やったことがないことを体験している」という点である。
 そして、そのときに参加者に起こっているのは、次のようなことである。
      試行錯誤/協同作業/自己省察 
 やったことない体験なのだから、当然試行錯誤を参加者は繰り返す。
 何が問題なのか、どうしたらよいのか、問題を把握し、仮説を設定、
 検証する。
 それらを一人で行うのではなく他者と協力しながら行っていく。
 更に、自分自身を省みて、様々に考えをめぐらせる。
 そして、この自己省察および、他者との共有が、
 参加者の学びを更に深めるのである。
 これら「試行錯誤・協同作業・自己省察」ができるのが、
 体験・参加型研修の体験部分における大きな特徴なのである。
3)クロージング(結び)
体験・参加型研修が、参加者にとって深い学びに
つながるかどうかの鍵は、この最後のクロージング(結び)にある。
体験した内容を振り返り、そこから何が学べたのか、
仕事にどう活かせるのかを考えることが、体験・参加型研修を
効果的なものにするために必要なのである。
もちろん、振り返りは、クロージングの部分だけでなく、
本論の中で数回に分けて行われても良い。
大事なのは、最後には必ず振り返るという点である。
体験・参加型研修の難しさの一つでもある時間配分に失敗し、
最後の振り返りができないという事態は、研修の効果を著しく下げるものとなる。
体験した内容を振り返り、そこから何らかの学びを得ると
いう考え方につながるのが、D.コルブの経験学習論である。
【D.コルブの経験学習論】
デビッド・コルブは、「経験学習論(Experiential Learning)」
という考え方を提唱した。
彼はおとなの学習においては「経験」が重要な役割を果たすと考え、
それを「学習サイクル」という考え方で示した。
簡単に言うと「体験→内省→教訓→試行」といった流れになる。
体験した内容を振り返り、教訓を導き出し、
試しに実践してみるという流れを促進するのが「質問」である。
質問によって参加者の学習サイクルを回しやすくするのである。
質問の例としては、以下のようなものが効果的である。
・体験の途中で、どんなことを感じましたか? それはどんなときですか? なぜですか?
・体験を振り返ってみて、気づいたことは何ですか? 
・もう一度やるとしたら、どのように行いますか?
・今回の体験から、どんな教訓が導き出せると思いますか?
・今回の体験を、職場で活かすとしたら、どのように活かしますか? ・・・
経験学習のサイクルを促進し、参加者の学びを深めるのは、
ファシリテーターの上手な質問なのである。
以上のように、体験・参加型研修を組立てる際の基本は、
イントロダクション(導入)、ボディー(本論)、クロージング(結び)の
三部構成である。
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○体験・参加型研修の運営
組立てた体験・参加型研修をファシリテーターとして
運営する際のヒントを、いくつか述べたい。
体験・参加型研修においては、参加者同士の話し合いが
重要な要素になる。
そのためには、参加者同士が話し合いをしやすい雰囲気を
ファシリテーターが作る必要がある。
そこで重要なのが、前述したイントロダクションと、
そのほかに2つある。
一つは、ファシリテーターの「傾聴する姿勢」、
もう一つは「話し合わせる順番」である。
まず、ファシリテーターがどんな意見に対しても
尊重し受け入れる傾聴の姿勢を持つことで、
参加者は自分の意見を言いやすくなる。
正解は一つではないという体験・参加型研修の考え方も、
参加者の発言を勇気付けてくれる。
二つ目の話し合わせる順番は、次の通りである。
「個人作業→グループ討議→クラス共有」。
多くの参加者にとって、大勢の前でいきなり自分の意見を
言うのはためらいがある。
そのため、いきなりクラス全体に意見を求めても、意見は出づらい。
かといって、いきなりグループで話し合う形にすると、
個人の考えがまとまっていない状態で、話し合いに入るので、
話し合いが有効に働かない場合がある。
また、声が大きい参加者の発言が増える懸念もある。
そのためまずは個人で考える時間をとり、次に少人数で話し合い、
最後にクラス全体で意見を共有するという形にすると、
情報交換がスムーズに進みやすい。
体験・参加型研修のデメリットの一つに、
コントロールのしづらさがあるが、主たる理由は「参加者が喋る」
という点にある。
しかも、参加者によっては「話が長い」「自分の意見に固執する」
といった困った参加者もいる。
そういった「困った参加者への対応法」については、
誌面の関係で割愛せざるを得ない。
興味がある読者は筆者のホームページから、
無料の電子書籍を参照してもらいたい。
(ページの下に申し込みフォームあり)
 
  http://learn-well.com/
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○体験・参加型研修の評価と現場フォロー
最後は、研修実施後の評価と現場実践のフォローになる。
体験・参加型研修は、直後の参加者アンケートでは、
良い結果が出やすい。
「楽しかった」「一番印象に残った」「話し合いが有意義」など。
これらはいわば、D.カークパトリックの
「研修効果測定の4つのレベル」のうち、
レベル1「Reaction(反応・満足度)」の部分である。
レベル2「Learning(学習・理解度)」においては、
研修企画の段階で立てた学習目標が達成できたのか?
理解した内容は?できるようになったことは?等を、
テスト、アンケート、ロープレオブザーブなどを通して、評価する必要がある。
レベル3「Behavior(行動)」とレベル4「Result(結果)」に関しては、
筆者自身は測定することも大事だが、現場実践を促すことの方が
更に重要と考えている。
これについては、別の機会に述べたいが、本稿においては、
研修で学んだ内容を思い出させることが、現場実践の促進に
必要であるという点を述べるにとどめる。
その方法論の一つとして、筆者自身は参加者への
メールフォローを行っている。
研修で伝えたこと、参加者から出た意見、職場での活用法などを、
研修終了1週間後に送る。
その後は1~2ヶ月にいっぺんのペースで、
研修内容を思い出させるようなメールを送っている。
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○結び
体験・参加型研修は、参加者の学びを手助けする
様々な仕組みを内包した研修形態である。
本稿が、体験・参加型研修を実施、導入検討をしている読者にとって
少しでも参考になることを願う。
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(「企業と人材」編集部のOさん、ありがとうございました!)

投稿者:関根雅泰

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