「企業研修の先にある未来」 4月27日 @ 東大

1.新入社員の育成に関して

●「企業研修の先にある未来」 4月27日 @ 東大
「企業内人材育成入門」を編著された
東京大学の中原淳准教授主催のフォーラム
「企業研修の先にある未来」に参加してきました。
かなり奥深く、幅広いお話でしたので、あくまでも
私の理解の範囲内で、どんな内容だったのかをお伝えします。


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1.中原淳先生のお話
 「研修の先にある未来」
○企業研修の先にあるのは?
 ⇒ Workplace Learning 「現場中心」の人材育成
○育成担当者は、現場に介入すべきである。
○知識習得の三段階
 トレーニング(Well Defined Knowledge)
   ↓
 シミュレーション
   ↓
 経験学習・協調学習(Ill Defined Knowledge)
○研修は、良定義知識(Well Defined Knowledge)の伝達に向いている。
 とは言っても、↓
○一斉講義型の研修内容を、半年後に思い出せる人
 ・研修のあらすじ 2%
 ・研修で出たキーワード 29%
 70%の人は、研修内容を忘れてしまう。
○人の能力開発は、
 現場経験:研修 = 7:3 
 の割合である。
○つまり、企業研修には、
 30%の効力があると考えられる。
 
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2.荒木淳子助教授のお話
 「企業研修だけではできないこと
   
  〓学習環境デザインとキャリアの視点から〓」
○企業研修とは・・・
 ・短期間で行われる体系的な知識の伝達
 ・研修講師や育成担当者により、ある学習目標に沿って行われる
 ・フォーマルに行われる
○最近、企業の人材育成には、下記領域が増えてきている
 ・現場(ライン)で行われる育成
 ・インフォーマルな学習
 
○研修の枠を超えた、新しい知識創造の場づくりが求められている
 (例:実践コミュニティ、クロスファンクショナルチーム、ワークショップ)
○OJTは、自然発生的なものではない。
 新人を放り込めば、寄ってたかって皆が育ててくれるというものではない。
○企業の人材育成において、従来の企業研修では取り扱われてこなかった
 問題領域(知識創造・OJTの再創造・社員のキャリアの問題)が広がっている。
○学習を支援するには、学習が引き起こされる学習環境を
 デザインすることが重要である。
 例:
 新人営業マンは、企業研修だけでなく、職場に配属され、
 色々な道具を使いこなし、上司と顧客を訪ね、顧客に説明し、
 先輩・同僚に聞いたり、会議で報告したりしながら学ぶ。
 企業研修も、個々の研修のデザインだけでなく、
 
 それらを職場にどうつなげるか、
 
 インフォーマルな学習にどうつなげるかを考えざるを得ないのでは?
○今後、企業研修が取り得る2つの道:
 変わる ⇒ 現場、インフォーマルな学習の領域に踏み込み、
       現場と共に問題解決にあたる、プロセスコンサルテーションへ
 変わらない ⇒ 個々のフォーマルな研修のデザインに専門性を発揮していく
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3.産業能率大学教授 長岡健先生のお話
○「現場への介入」に関する議論の行く末を、
 1970〓80年代の「Operations Research」の論争とのアナロジーで考える。
○なぜなら、ORとID(Instructional Design)は、似ているから。
 分析的(要素還元的)で、Goal-Seeking(合目的的)な、システム思考の点。
○ORの軌跡をたどれば、今後のID、企業研修の行く末も
 判断することができるかもしれない。
○1970年代半〓80年代半に、「正統的なOR:意思決定の科学」に
 関する批判が起こった。「ORは役に立たない!」と。
○ORへの批判に対して、「正統派:ハード派」は、次の道を選んだ。
 
 ・ORが使える問題状況を探すようになった
 ・「特定技法の専門家」として棲み分けを行うようになった
 ・“ささいな問題”への“厳密な回答”の提供という地位を得るようになった
○ORへの批判に対して、批判した当の「改革派:ソフト派」は、次の道を選んだ。
 ・ORという手法よりも、直面する問題状況の性質を深く探求するようになった。
 ・領域を限定した。
  例:経営戦略における意思決定の研究というよりも、経営戦略の研究。
 ・「意思決定」という活動ドメインを廃棄した。
○ORのたどった軌跡を参考に、「人材育成」への示唆を探れるのでは?
 ・企業研修で「できること」に積極的に注力する
 ・領域を限定しない「人材育成」は、空虚なのでは?
  (「意思決定」というORのドメインが空虚であったように)
 ・「人材育成」という活動ドメインは、消滅するのでは?
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私自身は、三氏の話を聞きながら、
次のような疑問が浮かんできました。
・企業研修 = 一斉講義 と捉えているのか?
・企業研修で、できることは何か? できないことは何か?
 企業研修を、弊社で行っているような
 「参加型」「集団学習」と捉えるならば
 できること:「情報共有」「経験整理」「意見交換」
       「視野拡大」「知恵獲得」などが考えられる。
 できないことは?
・企業内教育担当者は、IDを用いて個々の研修デザインに専門性を発揮している
 という前提だが、そこまでのレベルに達していない会社も多いのでは?
 例:昨年やった研修内容の踏襲、著名な講師への依頼
・IDが、実際に使われているのか?
 外部講師に依頼する場合、ほぼ丸投げの現況では、
 教育担当者自身が、主体的にIDを用いて、
 その研修内容をデザインしているケースは少ないのでは?
 (IDの理解度不足、講師に対する遠慮、
  まだ専門家ではないという自信のなさなどから)
・現場に踏み込んで、プロセスコンサルテーションをしている
 教育担当者もいるのでは?
 現場に介入できないとすれば、何故なのか?
  ⇒ 現場への遠慮、マンパワー不足、時間不足など?
・企業研修が取り得る二つの道は、
 フォーマルな研修のデザインをやるか、
 インフォーマルな学習の領域に踏み込んでいくか、
 本当に二者択一なのか? 両方やっている人もいるのでは?
 他の道は無いのか?
・現場から教育担当になったばかりだと、教育の専門家にはなかなかなれない。
 (個人の経験則の範囲内で、教育を企画してしまう。)
 教育の専門家になるためには、ある程度の時間と経験が必要。
 しかし、教育担当者として、教育の専門家になればなるほど、
 現場から離れていく。
 そんなジレンマがあるのでは?
といった疑問を考えていたのですが、そのあと、何人かの方から
同じようなコメントが出されていました。
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4.コメント
1)産業能率大学 古賀氏
・言葉の定義の問題 「研修」とは? 英語にも訳しづらい
・まだ、研修に「科学」が入り込んでいないのでは?
・IDは、浸透していないのでは?
2)JMAM 張氏
・「たかが研修、されど研修」
・研修とは、集合学習。Eラーニング/通信教育は、個人学習。
・対話、双発性が、研修の可能性。
・Blendingで、30%の可能性を増やしていく。
 研修+Eラーニング & OffJT+職場学習。
・IDは、科学ではなく「技術」である。
 QCを科学ではなく「技術」として浸透させてきたように。
・教育担当者のお客は、経営者と現場である。
 教育担当者には、経営革新を「人づくり」を通して推進する
 イノベーターとしての役割が求められるのでは?
3)JMAM 柴田氏
・知識創造、CFT、プロセスコンサルテーション
 言葉はすばらしいが、実際にそこまでできる会社があるのか?
 現場は忙しく、自分の仕事で手一杯。
 情報共有や、他プロジェクトに関われるのか?
 プロセスコンサルテーションを依頼できるだけのお金が出せるのか?
4)熊本大学 助教授 北村氏
・自身が元企業内教育担当。
 企業でIDを導入していたという理由から、熊本大に呼ばれた。
・IDを使っている企業は少ない、キャリア開発を行っている企業も少ない。
・人事は現場を知らない。
・人事が現場に行くと「見張りに来た」と思われる。
・自社の研修が完璧だと考えている担当者はほとんどいない
・研修企画を常に試行錯誤する際に役立つかもしれないのが、IDである。
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各氏のコメントを受けて、参加者からも意見や質問が出てきました。
・日産のCFTでは、プロジェクトチームのメンバーの意欲は高かった。
・40代前半の課長クラスに、6階級飛びの仕事を任せてもらえたから。
・現場仕事:CFT=6:4 だった。(日産のCFT企画担当の方)
・研修においては、投資効率が大切。投資効率が高い研修は、経営者教育。
 (研修会社?の方)
・「できることは小さい」「志は高く、足元を一歩一歩」
 (中原先生の先輩、リクルートマネジメントソリューションズの方)
・IDにも、使えるところ、使えないところがある。
 (東京大学博士課程の方)
最後に、中原先生の「Wrap Up」(まとめ)のコメントがありました。
・人材育成に対する経営者や社会的ニーズは高まっている。
・企業内教育においては、ディスコミュニケーションが目立つ。
(教育担当者間、教育担当者と経営者、教育担当者と現場、教育担当者と参加者など)
・「人を育てる科学」は、必要だし、役立つし、重要である。
・3割の小さな問題を解決するプロフェッションを目指せる
・7割の問題を解決するプロセスコンサルティングも目指せる
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金曜日の6時から始まり、9時に終った今回のフォーラム。
非常に勉強になりました。
東大キャンパスを出て、本郷三丁目駅までの帰り道、
内容をふり返りながら、歩きました。
反面、自分の勉強不足さが身にしみて
ちょっと落ち込みながら、歩きました。
「自分は、まだまだだな・・・。」

投稿者:関根雅泰

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