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2010年03月01日

「最近、OJTが機能しないのはなぜか?」を読んで

東大 中原先生のブログ

「最近、OJT(On the job training)が機能しないのはなぜか?」

は、非常に考えさせられる内容です。

http://www.nakahara-lab.net/blog/2010/02/ojtxtute.html


自分の頭の中を整理するためにも、私自身の考えを

1.時間軸  2.「OJT」  3.ポストモダン型能力

という3つの観点で、書いておきたいと思います。

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1.時間軸


 1)研究者 − 長期的

今回、私も東大大学院の研究室に関わらせて頂くようになり、少しずつ
見えてきたのが、研究者の方々の時間軸の長さです。

少なくとも10年以上先を考えながら研究をされている方々が多いように
感じます。長期的なスパンで物事を見、考えているように感じています。


 2)教育担当者 − 中期的

それに対して、企業の教育担当の方々は、異動の関係がある為、どうしても
時間軸は中期的になる傾向があるように思えます。

あくまで私の感覚ですが、3〜5年くらいでしょうか。

異動した最初の1年は今までのやり方を踏襲し、様子を見る。
2年目以降に自分の色を出し、3年目に改善する。

異動が無ければ、4年目以降も考えて行く、といった感じでしょうか。

(もちろん、長期に人材育成に携わる教育担当の方が多いことも承知しています)


 3)現場 − 短期的

企業の教育担当者が向き合っている現場の方々は、こと「教育」という観点
では短期的に考える傾向が強いように感じます。

教育で学ぶ内容には「即効性」を求め、「今困っていること」に対する
「すぐに役立つ解決策」を要求する現場の方々は多いように感じます。

そのような現場に対して、サービスを提供する立場の教育担当者の方々は
やはり現場のニーズに合ったものの提供を第一に考えることになるでしょう。

企業の「教育担当者」という立場であれば、実行しやすい施策はやはり
「教育・研修」になるかと思います。

戦略、制度、採用、異動、配置などは、その重要性が分かっていても
なかなか手が出しづらい分野になるでしょう。

弊社がお手伝いしている範囲で「新入社員に対するOJT指導員」の方々が、
「困っていること」は何かというと

・業務との両立
・新人との接し方

という2つに多くの場合、集約されます。

そのためOJT指導員の方々に対する研修では、
その2点の解消を主眼に行っています。


中原先生のおっしゃるように、もしかすると「無限遡及的な教育的介入」に
なってしまっているのかもしれませんが、

現場が「今困っていること」を解消する一つの手段としての研修は、
教育担当の方々が提供できるものの一つとして十分有効だと思います。

(逆に、何も手を出さないという選択肢もあるわけですが)


今できることをやりながら、長期的になすべきことを考える。
そのうえで機会を見つけ少しずつ長期的にすべきことへの打ち手をうつ。


それが、私の想いです。


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2.「OJT」

中原先生のおっしゃる通り、「OJT」というのは非常に便利な言葉です。


ただ、弊社では「OJT」を「新卒社員の成長支援」という範囲に
絞ってとらえています。

一つの共同体(学校)から、別の共同体(企業)に参加する新卒社員の
「組織社会化」を支援する活動という位置づけです。

ですから「OJT」という名称そのものは、正直なんでも良く、
乱暴に言ってしまえば「新卒社員が育ってくれればよい」という考え方です。


では「新卒社員が育つ」とはどういう状態なのでしょうか?

「組織社会化」では「文化的側面」と「技能的側面」とに分けて考えています。
(高橋1993)

「文化的(社会化)」は、社会人としてのマナーや組織の規範、ルールなどを知り、
組織の一員として周囲から認められることと言えます。

いわば「組織になじむ」ことです。

「技能的(社会化)」は、仕事を進めるために必要な知識、技術を習得することを
さします。いわば「仕事を覚える」というものです。


「新卒社員が育つ」とは、この2つの社会化がなされることと考えられます。

そして、この社会化を支援する活動を、私は「OJT」と捉えています。


ざっくりとした言い方をすれば「先輩社員が後輩社員に色々教えること」です。

この「色々」の中には「いろいろ」含まれていまして(笑)

・仕事のやり方そのもの
・社内の人間関係
・言葉遣いや立ち居振る舞い
・暗黙のルール など 

色々あります。

その「教え方」も色々あって

・他の人のやっているところを観察させる
・あれこれと説明する
・本人にやらせてみる
・関連する書籍を読ませる

などがあるでしょう。


私自身は、新卒社員が「OJT」を通して学ぶ際の「資源(リソース)」には
大きく3つあると考えています。

・仕事(経験そのもの)
・他者(周囲の方々とのかかわり)
・文字(本やウェブ情報など)


「OJTをデザイン(設計)する」となると、

・新卒にどんな仕事をやらせるか、どんな経験を積ませるか
 (ここが難しい。いいタイミングでいい仕事がない状況の方が多いから)

・どんな人々との関わり、出会いを作っていくか
 (こちらが意図したように進まないことも多いが)

・どんな情報を、自主勉強として本人に読ませるか
 (これも本人のやる気次第という面もある)


こういったことを考える一助として、OJT指導員に

「人脈マップ(新卒が教えてもらえる可能性のある相手)」
「育成プラン(大まかな計画)」

を考えてもらうこともできるでしょう。


(もちろん、これは個々の指導員に対する働きかけであり、
 デザインと言っても組織的なもの、制度的なものとは言えないのですが)


ただ、こうやって「OJT」を「先輩が後輩に色々教える」という風に考えた時に、

難しくなるのが、「ポストモダン型能力」の育成の部分です。


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3.ポストモダン型能力


ポストモダン型能力について、私の理解はまだ浅いです。

ただ、本田由紀先生の「多元化する能力と日本社会」に従って考えてみると・・・
(本田2005 p22)

==============================

「近代(モダン)型能力」

基礎学力
標準性
知識量、知的操作の速度
共通尺度で比較可能
順応性
協調性、同質性

==============================

「ポスト近代(モダン)型能力」

生きる力
多様性、新奇性
意欲、創造性
個別性、個性
能動性
ネットワーク形成力、交渉力

==============================

ポストモダン型能力として挙げられているものは、
「他人に教えることができるものなのか」という疑念がわきます。

本人の資質、小さな時から育ってきた環境が大きな影響を与えそうに見えます。


先輩が後輩の「ポストモダン型能力」を育成できるのか。

今までは、先輩が培ってきた知識、技術を同じように使えればよかったのが、
これからは、それだけでは足りなくなってきているのかもしれません。


先輩社員自身も「ポストモダン型能力」が身についている人もいれば、
身についていない人もいるでしょう。


もしかすると、ポストモダン型能力は、職場の中だけでは身に着かないかも
しれません。つまり「OJT」では身につけさせることができないかもしれません。

本人が本を読んだり(自主学習)社外の勉強会に参加したり(越境学習)と、
本人の「意欲」(それこそポストモダン型能力)が大事になってくるでしょう。

あるいは、本人が今までの仕事をしっかりやった上で、
どんどん新しいことに挑戦しその結果をふり返ること(経験学習)で、
ポストモダン型能力が身についていくのかもしれません。

ただ、これも「意欲」「能動性」といったポストモダン型能力を
発揮した結果と言えるかもしれません。

つまり、ポストモダン型能力は、持っていない人が身につけるのは難しく、
既に持っている人が、それを磨くには適している能力なのかもしれません。

またポストモダン型能力は、モダン型能力を既に持っている人が、
それを土台にして身につけていくという考え方もあります。


どちらにしても、社内での「OJT」で、
できることは限られているのかもしれません。


ただ、今後入ってくる新卒社員に「ポストモダン型能力」が
求められるのは確かでしょう。

正解がない、変化が激しい、何が起こるか分からない
不確実性が高い世の中に、今後ますますなっていくでしょう。


そういったポストモダン型能力を、新卒社員に身につける
(というより磨きをかける?)ために、

・職場でできることは、何なのでしょうか?

・導入研修時にできることは?

・内定者教育時にできることは?

・採用時にできることは? 

・就職活動時にできることは?

・大学時代にできることは?

・小中高?

・早期教育?

・地域?

・家庭?

・夫婦?

・遺伝?


新卒社員の成長支援について考えることは、
日本の教育全般について考えることにつながってくるのかもしれません。

そしてそここそが、弊社が新卒社員の成長支援に
こだわる理由なのかもしれません。


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中原先生、色々と考えさせられる記事をありがとうございました。